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肥満治療の新たな展望: ウゴービの登場

札幌駅、大通り駅近くの小野百合内科クリニックです。今回は30年ぶりに出てきた肥満治療の薬、ウゴービについて解説していこうと思います。現在は出荷制限や処方制限もあり当院では処方できない薬なのですが、このブログを読んで皆様がウゴービに対する理解を深めていただければ幸いです。

始めに

日本における肥満症治療は、長らく新しい医薬品の承認が遅れがちであり、肥満に対する偏見も根強いという課題がありました。しかし、2024年2月22日には、肥満治療の分野において30年ぶりの大きな進展がありました。GLP-1受容体作動薬である「ウゴービ」が発売されたのです。これは、日本における肥満治療の新たな希望とも言える重要な出来事です。

ウゴービの特徴と効果

ウゴービは、安全性と有効性が高いと評価される、肥満治療薬の中でも特に注目されている新薬です。これまでの肥満症治療薬と比較して、ウゴービは約12.4%の体重減少効果を示し、さらに約20%の心血管系イベントのリスクを低下させる可能性があることが報告されています。

しかし、ウゴービの使用は、BMIが35 kg/m^2以上の高度肥満症患者や、BMIが27 kg/m^2以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上有する患者に限られています。また、ウゴービ治療は、食事療法や運動療法を6ヶ月以上実施しても効果が得られない場合に限り、一部の医療機関でのみ受けられることになっています。

※肥満に関する健康障害※
1. 耐糖能障害 (2型糖尿病・耐糖能異常など)
2. 脂質異常症
3. 高血圧
4. 高尿酸血症・痛風
5. 冠動脈疾患
6. 脳梗塞・一過性脳虚血発作
7. 非アルコール性脂肪性肝疾患
8. 月経異常・女性不妊
9. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
10. 運動器疾患 (変形性関節症:膝・股関節・手指関、変形性脊椎症)
11. 肥満関連腎臓病

当院での肥満症治療

当院では、ウゴービによる治療を行うことはできませんが、肥満症の患者様に対しては、まず二次性肥満の有無を検査し、その後は食事療法運動療法を中心に生活習慣の改善を推奨しています。BMIに応じた摂取カロリーの制限や、継続可能な運動療法の導入を通じて、患者様の肥満症改善を目指しています。それでも減量が難しい場合、患者様と相談の上、ウゴービの処方可能な施設への紹介をしていく予定です。

肥満症治療の未来

ウゴービの登場は、内科的治療における肥満症対策の新たな序章と言えるでしょう。さらに、アメリカでは既に次世代の肥満治療薬であるゼップバウンドが承認されレタトルチドについても優れた効果が期待されています。(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37366315)これらの薬剤が日本でも将来的に使用可能となれば、肥満症治療の選択肢はさらに広がることでしょう。

最後に

ウゴービの保険適用開始は、肥満症に対する医療の進展を示す重要な転機となりました。しかし、現行は指定病院での処方が限られ、当院含めクリニックでは処方できないのが現状であり治療へのアクセスが限られている現状です。今後より多くの患者様が適切な治療を受けられるよう、今後制度の改善や施設要件の緩和が望まれます。肥満症治療は、薬剤だけに頼るのではなく、生活習慣の改善が基本であり、患者様一人ひとりに合わせた包括的なアプローチが重要です。ウゴービの登場は、これからの肥満症治療に新たな希望をもたらすと共に、治療のあり方についても考えさせられる機会を提供しています。

今回はこの辺で、また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック