札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。日本人の約3人に1人が該当する「肥満」。しかしその中には、医学的な対応が必要な「肥満症」も含まれています。この記事では、肥満と肥満症の違い、分類、診断、治療のポイント、さらには命に関わる病気が隠れている「二次性肥満」についても、内科医の視点からわかりやすく解説します。このブログを読んで肥満と肥満症の違い、そして対処法について理解が深まれば幸いです。
肥満とは?
肥満とは、体内に脂肪組織が過剰に蓄積した状態を指します。主に皮下に脂肪がたまる「皮下脂肪型肥満(洋ナシ型)」と、内臓の周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満(リンゴ型)」に分類されます。特に内臓脂肪型肥満は、糖尿病や高血圧、脂質異常症など多くの生活習慣病と関わりがあります。
肥満症とは?
単に体重が多いだけではなく、肥満が原因で健康障害を引き起こす、あるいはそのリスクが高いと医学的に判断された状態を「肥満症」と呼びます。日本肥満学会の定義によれば、BMI25以上で、以下の11の健康障害のいずれかがある場合に肥満症と診断されます。
【肥満症と診断される健康障害】
- 耐糖能障害(2型糖尿病など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患
- 脳梗塞・TIA
- 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
- 月経異常・不妊
- 睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
- 変形性関節症
- 肥満関連腎臓病
肥満の原因と分類
原発性肥満
もっとも多く、過食・運動不足・不規則な生活習慣などが原因です。約98%以上の肥満がこれに該当します。
二次性肥満
病気が背景にある特殊なタイプで、約1〜2%と稀ですが見逃してはいけません。以下のような病気が原因です。
- 内分泌性肥満(例:クッシング症候群、甲状腺機能低下症)
- 視床下部性肥満(例:脳腫瘍後遺症など)
- 遺伝性肥満(例:Prader-Willi症候群など)
- 薬剤性肥満(例:ステロイド、抗うつ薬)
診断の流れ
まずはBMI(体格指数)の計算から始まります。 BMI=体重(kg) ÷ [身長(m)]² 日本ではBMI25以上を肥満と判定し、標準体重はBMI22が目安です。
さらに、既往歴、内服歴、体重増加の速度や食習慣の変化、随伴症状の有無を確認します。必要に応じて血液検査やホルモン検査、画像検査(MRIやCT)なども行います。
治療の基本は生活習慣の見直し
1. 食事療法
摂取カロリーの調整が基本。1kgの減量には約7,000kcalのマイナスバランスが必要です。「腹八分目」「よく噛む」「20分以上かけて食べる」ことを意識しましょう。
2. 運動療法
有酸素運動(ウォーキングなど)を中心に、筋トレも有用です。特に内臓脂肪の減少に効果があります。
3. 行動療法
体重測定、歩数記録、食事記録などの自己モニタリングで意識づけを図ります。
4. 薬物療法・外科的治療
高度肥満(BMI35以上)や合併症がある場合には、GLP-1受容体作動薬、マンジャロなどの薬物療法や胃内バルーン留置術が検討されます。
受診のタイミング
- 食事量が変わらないのに急激に体重が増加した
- 低体温・疲れやすさ・むくみなどの症状がある
- 健診で肝機能・腎機能・血糖異常を指摘された
これらに該当する場合は、早めに内科または内分泌科の受診をおすすめします。
まとめ
肥満は見た目だけでなく、命に関わる疾患の引き金になることもあります。特に肥満症や二次性肥満の場合は、専門的な診断と治療が必要です。なかなか体重が減らない、体調に不安がある方は、ぜひ医療機関を受診して、根本的な原因を一緒に探っていきましょう。
当院では糖尿病患者様を対象に栄養指導や薬物治療による肥満外来をおこなっております。
ご希望の方はぜひご来院ください。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉