甲状腺とバセドウ病・橋本病
甲状腺は小さな器官ですが、私たちが体を動かすためのエネルギーを作り出す甲状腺ホルモンを産生する大切な器官。異常をきたすとどのような症状が現れるのでしょうか。関連する病気とともに解説します。
Thyroid


甲状腺とは

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甲状腺は、首の前側・のどぼとけのすぐ下にある臓器。縦4cm、厚さ1cm、約15gの小さな臓器です。蝶のような形をしており、気管支の周りを包むように存在しています。
通常、甲状腺は柔らかいため、外側からさわっても存在はなかなかわかりません。しかし甲状腺に異常をきたすと、さわってわかるほどに腫れることも。首を見ただけで腫れているのが分かることもあります。

甲状腺の働きについて

甲状腺はヨウ素を材料に甲状腺ホルモンをつくり、血液中に分泌する働きがあります。

甲状腺ホルモンにはさまざまな働きがありますが、主に新陳代謝を活発にし、体の成長を促す役割を担っています。活動に必要なエネルギーを生み出し、快適な生活を送るために欠かせないホルモンなのです。

この甲状腺ホルモンは、多すぎても少なすぎても体調を悪化させる可能性があります。分泌量のバランスが非常に重要です。

Graves' disease


バセドウ病とは

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰につくられてしまう病気。甲状腺機能亢進症の代表的な疾患です。自己免疫疾患の一種であり、免疫が自分の体を攻撃することで甲状腺ホルモンの過剰産生を引き起こし、新陳代謝が過剰になりすぎてしまいます。
有病率は報告によって異なりますが、人口1000人あたり0.2~3.2人とされており、20~30代の比較的若い女性に多く見られます。

Thyroid

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バセドウ病の症状

胸の動悸・体重減少・手指の震え・下痢・ほてり・多汗などが、典型的な症状。女性では月経不順もよくみられます。
外見では甲状腺の腫れが目立ち、重症化すると眼球が突出することも。男性には周期性四肢麻痺と呼ばれる症状も見られることがあります。

Thyroid

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バセドウ病の治療

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バセドウ病の治療法としては、薬物療法・放射性ヨウ素内用療法・甲状腺摘出術の3つがあります。
薬物療法
多くの場合、薬物療法から治療がスタートになります。抗甲状腺薬で、甲状腺ホルモンの値を下げることを目指します。副作用の可能性や再発率の高さに留意しながら、治療を進めていくことになります。
放射性ヨウ素内用療法
抗甲状腺薬の効果が思わしくない場合に、検討する治療法のひとつです。安全で効果的ですが、甲状腺ホルモンが低下する可能性やバセドウ病眼症の悪化のリスクがあります。また、特定の医療機関でのみ実施が可能です。
甲状腺摘出術

確実な治療効果が得られますが、手術に伴うリスクや入院が必要です。
当クリニックではバセドウ病の薬物療法に対応しております。放射性ヨウ素内用療法や手術の必要性がある患者さまには、提携している専門病院へご紹介しています。

Chronic Thyroiditis


橋本病(慢性甲状腺炎)とは

橋本病は甲状腺ホルモンが不足し、新陳代謝が低下してしまう病気。慢性甲状腺炎とも呼ばれ、甲状腺機能低下症のひとつです。
患者数は比較的多く、成人女性の10%、成人男性の2.5%とされています。特に20〜30代の女性に多い疾患です。

Thyroiditis

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橋本病の原因と症状

橋本病の主な症状
無気力感

全身の
むくみ

強い寒気
体重増加
疲れやすい
声のかすれ

橋本病は自己免疫疾患のひとつ。免疫が異常をきたして自分の体を攻撃してしまうことが原因で甲状腺に慢性的な炎症を引き起こし、甲状腺ホルモンの不足を招きます。
全身の代謝が低下することで、無気力感・疲れやすさ・全身のむくみ・強い寒気・、体重増加、声のかすれ、便秘などの症状が現れます。治療には通常、甲状腺機能低下症に対する補充療法が行われます。

Thyroiditis

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橋本病での妊娠に関する注意点

甲状腺自己抗体が陽性の場合やTSH(甲状腺ホルモン)が2.5μU/ml以上の潜在性甲状腺機能低下症では、妊娠や流産などのリスクが高まる可能性があります。そのため、妊娠を希望される方はチラーヂンの内服によるリスクの軽減が必要です
当クリニックでは甲状腺疾患に対応した治療を行っています。場合によっては、専門の提携病院へのご紹介も可能です。お気軽にご相談ください。