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【医師が監修】HDLコレステロールは高いといいの??基準値やその原因について徹底解説

札幌駅近く大通駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんはHDLコレステロールという項目を健康診断で見たことがあるでしょうか。健康診断の結果を見て、その値が高かったり低かったりして不安になる方も多いと思います。HDLコレステロールは単なる“数字”ではなく、血管壁に付着した余分な脂質を肝臓へ回収してくれる“血管清掃チームの主力メンバー”であり、適正なレベルを保つことが心筋梗塞や脳卒中をはじめとする動脈硬化性疾患の抑止力になります。今回はそんなHDLコレステロールについて内科医の目線から徹底解説します。このブログを読んでより詳しくなれたら幸いです。


HDLコレステロールの役割――“逆流輸送”という守護システム

HDL(High Density Lipoprotein)は、高比重リポタンパクという小さな粒子にコレステロールを載せて全身を循環させる輸送屋であり、その最大の使命は動脈壁にへばりついたLDL(悪玉)コレステロールを“吸い込み”、肝臓まで届けて胆汁酸として排出させる「逆流輸送(Reverse Cholesterol Transport)」です。この流れがスムーズなほど血管内は常に掃除され、血液の通り道は柔らかく広々と保たれるため、結果として動脈硬化・心血管イベントの発生率が下がると明確に証明されています。抗動脈硬化粒子としてのHDL 角田史敬先生 | 川村内科診療所様


基準値と数値が語るサイン

一般の成人でHDLコレステロールが40 mg/dL未満の場合は「低HDL-C血症」と診断されます。逆に60 mg/dL以上であれば、清掃能力が十分に機能している状態と考えられますが、100 mg/dLを超える極端な高値は遺伝性の脂質代謝異常(CETP欠損症や家族性高アルファリポタンパク血症)を疑う指標になるため、放置せず医師による詳細な血液分画検査や頸動脈エコーで動脈硬化の有無を確認する必要があります。なお女性はエストロゲンの影響で男性より自然に10 mg/dLほど高く、少量の飲酒でもHDL値がやや上昇する傾向がある点を覚えておきましょう。

HDL値(mg/dL) 状態イメージ 取るべきアクション
60以上 清掃チームがフル稼働中 維持・経過観察
40〜59 良好だが応援は必要 軽い運動・バランス食
40未満 人手不足でゴミ蓄積 生活習慣の総点検+検査


「高すぎる」HDLが示す病態

HDLが著明に高いと一見“良いことづくめ”に思えますが、CETP欠損症ではHDL130〜250 mg/dLという桁違いの高値を呈しながら、粒子サイズが大きく逆流輸送がかえって滞ることで動脈硬化リスクが上がる可能性が報告されています。同様に家族性高アルファリポタンパク血症では無症状で経過するものの、心血管イベントがゼロになるわけではありません。つまり、「HDLは高いほど良い」という単純図式は真実ではなく、高値例ではその“質”と“背景病態”を精査する姿勢が肝要です。


「低すぎる」HDLの二大要因とは

  1. 遺伝性低HDL-C血症
     家族性低HDL-C血症、タンジール病、魚眼病など稀な疾患では、20 mg/dL台の極端な低値を示し、早発性動脈硬化のリスクが跳ね上がるため、専門施設での遺伝子診断とLDLコレステロールの積極的コントロールが必須です。

  2. 生活習慣起因の続発性低HDL-C血症
     喫煙、過度のアルコール、肥満運動不足、2型糖尿病、慢性腎不全など“現代病”の温床が重なるとHDL合成が落ち込み、中性脂肪が急増してHDLが引きずり下ろされます。ここで鍵となるのが不飽和脂肪酸の積極摂取・有酸素運動・禁煙という王道の三本柱です。


今日からできるHDL改善術

  • 良質な油を選ぶ習慣を日常に組み込む:青魚のDHA/EPAやオリーブオイルに多いオレイン酸がLDLのみを減らしHDLを維持・増加させる一方で、飽和脂肪酸(脂身・バター)やトランス脂肪酸(マーガリン・ショートニング)は極力避ける。

  • 週900 kcalを目安に有酸素運動を続ける:1回30分のやや息が弾むウォーキングや軽いジョギングを週3回以上行うと、中性脂肪が減りHDLが顕著に上昇することが多くの臨床研究で確認されています。

  • 禁煙は“段階的”にでも必ずゴールを目指す:タバコのニコチンはHDLを減らしLDLを酸化させる二重の悪影響を及ぼすため、ニコチンガムや貼付剤を利用しながら本数ゼロを目指す。

  • 飲酒は適量を守る:少量のアルコール(日本酒1合、ワイン2杯程度)でHDLがやや上がる例もあるが、飲み過ぎは中性脂肪増加と肝障害を招き逆作用に転じる。


まとめ――数字の裏側に潜む“リスク”を見逃さない

HDLコレステロールはただの血液データではなく、動脈硬化という“サイレントキラー”を映し出す鏡です。40 mg/dL未満なら生活習慣の総点検を、100 mg/dL超なら遺伝性疾患の精査を、そして40〜60 mg/dLの方は現状維持・さらなる向上を目指す――この三段階の考え方を覚えておきましょう。当院では脂質以上症を含めた生活習慣病の治療や管理栄養士による栄養指導を行なっております。ぜひご来院ください。

今回はこの辺で、また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

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