札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。これまで日本では、1型糖尿病は症状が明らかになって初めて診断・治療が始まることが一般的でした。しかし近年、海外の研究により1型糖尿病は発症前からゆっくりと進行することが分かり、膵臓を攻撃する自己免疫反応が長期間にわたって進む病気であるという理解が広がっています。こうした背景を踏まえ、日本でも発症前の段階に焦点を当てた臨床研究であるPREP-T1Dがスタートしました。1型糖尿病患者の第一度近親者を対象に、自己抗体や血糖を調整する力を調べる日本初の研究であり、将来的な発症予防や重症化の阻止につながる可能性を秘めています。
1型糖尿病のステージング
1型糖尿病では、膵臓のβ細胞が自己免疫によって攻撃されることで発症しますが、その経過は段階的に進行します。欧米では次のように三つのステージに分類されています。
ステージ1 自己抗体が二つ以上陽性で血糖値は正常
ステージ2 自己抗体が陽性で血糖値の異常が始まる段階
ステージ3 β細胞量が大きく低下し症状が出現する発症段階
日本ではこれまでステージ3になってから専門医を受診するケースが多く、早期診断が難しい状況でした。ところが、ステージ1やステージ2の段階を把握することができれば、発症前から経過を理解し、精神面の準備を整えるだけでなく、症状が出る前の早い段階で診断に結びつける可能性が高まります。結果として重症化のリスクを抑えることが期待されます。

PREP-T1Dが目指すもの
PREP-T1Dは、1型糖尿病患者の第一度近親者であり、まだ発症していない人を対象に、膵島関連自己抗体の有無や血糖調整能を評価することで、日本におけるステージ1およびステージ2の有病率を明らかにすることを目的としています。
研究代表医師である富山大学附属病院の中條大輔教授は、この研究を日本における発症抑制や重症化阻止の新しい治療法を開発するための基盤となる重要な取り組みだと述べています。欧米では発症前段階に介入する治療が動き始めており、日本でも同じ方向へ進むための大きな一歩になると期待されています。
対象となるのは患者本人ではなく家族
PREP-T1Dの大きな特徴は研究対象が患者本人ではなく第一度近親者である点です。対象となるのは両親、兄弟姉妹、子どもであり、本人が糖尿病を発症していないことが条件です。
自己抗体の測定や血糖調整能の評価を通じて、将来的な発症リスクを把握できれば、家族が早期から備えるための重要な手がかりになります。また、研究結果は将来的な予防薬や新規治療の開発につながる可能性があり、社会全体の医療水準向上にも結びつくと考えられます。
研究参加の条件と注意点
研究に参加できるのは次の条件を満たす場合です。
家族に1型糖尿病患者がいること
本人が糖尿病ではないこと
年齢が49歳以下であること
未成年の場合は保護者の同意が必要です。第一度近親者の定義は法律上の第一親等とは異なり、1型糖尿病患者から見た両親、兄弟姉妹、子どもが対象となります。
日本の1型糖尿病医療を前進させる取り組み
1型糖尿病は発症が急激で、特に小児や若年層では生活が一変することも少なくありません。その一方で、発症前段階を科学的に捉える取り組みが進めば、病気に対してより早く備えることが可能になります。
PREP-T1Dは、日本の1型糖尿病医療を次の段階へ進めるための貴重な研究であり、発症予防を現実的なものに近づける大きな一歩です。興味のある方は研究窓口の情報を確認し、研究参加を検討してみてください。発症前の段階に目を向けることは、多くの家族に安心をもたらし、将来の医療を大きく変える可能性を持っています。
いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう。
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