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家族性高コレステロール血症(FH)の診断基準と治療について徹底解説!!大事な5つのポイント!!

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんは家族性高コレステロール血症という病気をご存知でしょうか。この病気は約300人に1人という非常に多く見られる病気であり、動脈硬化から心疾患などの重症な疾患を起こしやすい病気です。今回はそんな家族性高コレステロール血症について糖尿病内科医の目線からまとめてみました。このブログを読んでこの疾患の理解を深めていただければ幸いです。

1 : 初めに

家族性高コレステロール血症(FH)は、遺伝性の脂質代謝異常症であり、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が血液中で異常に高くなる病気です。これは、LDLコレステロールが通常よりも多く血液中に存在し、動脈壁に蓄積されやすくなるため、若い頃から動脈硬化が進行しやすい状態を引き起こします。動脈硬化が進行すると、血管が狭くなったり詰まったりするリスクが増加し、特に心臓の冠動脈に影響を与え、狭心症や心筋梗塞といった重篤な心血管疾患を引き起こすことがあります。

FHは、比較的高頻度の遺伝性疾患であり、一般人口の約300人に1人の割合で見られます。さらに重症型のホモ接合体は、約36万~100万人に1人の頻度で発症し、指定難病に分類されることがあります。大部分のFH患者は、若い頃からLDLコレステロール値が高いこと以外には特に自覚症状がなく、無症状のまま動脈硬化が進行することが多いです。しかし、一部の患者では、皮膚や腱にコレステロールが沈着した黄色っぽい隆起(皮膚黄色腫)が手の甲、膝、肘、瞼などに見られることがあります。

LDLコレステロールは、肝臓で処理されることで血液中の濃度が調整されますが、FH患者の場合、肝臓での処理能力が低下しているため、血中LDLコレステロールの濃度が上昇し、動脈壁に蓄積して動脈硬化が進行します。これにより、男性では20代から、女性では30代から心筋梗塞のリスクが高まります。特に重症の場合、幼少期に心筋梗塞を発症することもあります。

FHは遺伝性疾患であるため、親、兄弟、叔父、叔母、祖父母、子供など血縁者にも同様に高コレステロール血症や心血管疾患が見られることが特徴です。

2 : 家族性高コレステロール血症(FH)の診断について

FHの早期診断は、動脈硬化を予防し、重篤な合併症を避けるために非常に重要です。診断には以下の方法が用いられます:

LDLコレステロールの測定

FHの診断には、まず血液検査でLDLコレステロール値を測定します。未治療時のLDLコレステロール値が180mg/dL以上の場合、FHを疑うことができます。

家系内調査

家族歴を調査し、血縁者に高コレステロール血症や心筋梗塞、狭心症を発症した人がいるかどうかを確認します。これにより、遺伝性の要因を把握することができます。

アキレス腱の厚さのチェック

アキレス腱の厚さをチェックすることも有効です。アキレス腱が肥厚している場合、FHの可能性が高まります。超音波検査やX線検査を用いてアキレス腱の厚さを測定します。

遺伝学的検査

遺伝学的検査も2022年度より医療保険の適用となりました。この検査により、FHの原因となる遺伝子変異を特定することができます。ただし、検査が可能な医療機関は限られています。

3 : 家族性高コレステロール血症(FH)の治療について

FHと診断された場合、LDLコレステロール値を十分に低下させるための治療が必要です。治療には以下の方法があります:

食事療法と生活習慣の改善

コレステロールや動物性脂肪の少ない食事に変更し、適度な運動を取り入れることが重要です。禁煙も必須です。しかし、FH患者では生活習慣の改善だけではLDLコレステロール値を十分に下げることが難しいため、薬物療法が併用されることが多いです。

薬物療法

スタチン系薬剤が第一選択となります。スタチンに加えて、エゼチミブ、レジン、プロブコールなどの他の薬剤も併用することがあります。特に重症の場合、エボロクマブなどの強力な皮下注射製剤も使用されます。

LDLアフェレーシス

最重症例に対しては、LDLアフェレシスと呼ばれる治療法が有効です。これは、血液を体外循環させてLDLを吸着除去する方法です。定期的に血液検査を行い、LDLコレステロール値が適切な範囲にあるか、副作用がないかをチェックすることが重要です。

4 : 家族性高コレステロール血症(FH)の遺伝子検査とは?

FHの遺伝子検査は、2022年度より医療保険で検査可能となりました。通常の採血検査で行い、解析には1か月程度を要します。検査が実施できる施設は限られているため、主治医に相談することが推奨されます。

5 : 家族性高コレステロール血症(FH)は指定難病ですか?

一般的なFH(ヘテロ接合体)は指定難病ではありませんが、重症であるホモ接合体性FHは指定難病に指定されています。詳細については、厚生労働科学研究費補助金難治性疾患政策研究事業の原発性脂質異常症調査研究班のウェブサイトを参照し、担当医に確認することが推奨されます

まとめ

家族性高コレステロール血症(FH)は、遺伝性の脂質代謝異常症で、LDLコレステロールが異常に高く、動脈硬化が進行しやすくなります。一般人口の約300人に1人の頻度で見られ、特に重症型のホモ接合体は指定難病に分類されます。診断にはLDLコレステロール測定、家系内調査、アキレス腱の厚さチェック、遺伝学的検査が有効です。治療は食事療法、生活習慣の改善、薬物療法(スタチン系薬剤など)、重症例にはLDLアフェレシスが行われます。2022年度から遺伝子検査も保険適用となっています。

 

今回はこの辺で。

また次のブログでお会いしましょう。

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