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メトホルミンの糖尿病治療のポイント、副作用について徹底解説!!大事な5つのポイント

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんはメトホルミン(メトグルコ®️)という糖尿病のお薬をご存知でしょうか。もしかしたら内服されている糖尿病患者様もいるかもしれません。メトホルミンはDPP-4阻害薬SGLT2阻害薬と並んで日本で最もポピュラーな糖尿病薬ですが内服方法にコツがあり、注意点が多い薬剤でもあります。今回はそんなメトホルミンについて糖尿病内科医の立場からまとめてみたいと思います。このブログを読んでメトホルミンに対する理解が深まれば幸いです

1 : 始めに

メトホルミンは、肝臓で糖が新しく作られるのを防いだり、筋肉や脂肪に糖を取り込むよう促すことで血糖値を下げる効果があります。1日2~3錠の少量から開始し、徐々に量を増やしていくことが可能です。最大で1日9錠まで増量することができ、量に応じて効果が強まることが知られています。1錠10円程度と非常に安価であり、コストパフォーマンスの良い薬としても知られています。

2 : 2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム

最近、日本糖尿病学会より「2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」が刊行されました。下図を見ると、肥満・非肥満によって薬物選択の優先順位が少し異なることがわかります。「ビグアナイド薬」と記載されているものがメトホルミンにあたります。

肥満を合併し、インスリン(血糖値を下げるホルモン)が潤沢に出ているが、それがうまく効いていない「インスリン抵抗性」が想定される患者さんでは優先順位第1位、肥満のないインスリンを自前で作る力がもともと体質的に弱い「インスリン分泌不全」が想定される患者さんでも優先順位は第2位となっています。

肥満を合併しており、インスリンを自前で作る力が体質的に弱い方もいらっしゃるため、必ずしも「肥満=インスリン抵抗性のみ」と断言はできませんが、いずれにせよ体重に関係なく優先順位の高い薬であることがわかります。この表は日本人2型糖尿病患者さんの治療方針決定において非常に重要な表であるため、今後も折に触れて参照する機会があると思います。特に経済的な側面からメトホルミンはコストパフォーマンスに優れた薬剤です。

2型糖尿病の薬物治療のアルゴリズムについての図解

3 : 服用に際しての注意点

メトホルミンは糖尿病治療において極めてポピュラーな薬であり、多くの方が安全に服用しています。しかし、服用に際してはいくつかの留意点があります。

胃腸症状

まず、おなかがゆるくなる、腹痛などの胃腸症状が時折見られます。これについては、当初は「あれ?」と感じる方が多いですが、日常生活に支障をきたすほどでない場合、少し我慢して飲んでいるとそのうち体が慣れてくることが多いです。

乳酸アシドーシス

メトホルミンには、まれに重篤な乳酸アシドーシスなどの副作用を起こすリスクがあります。乳酸アシドーシスは、血中乳酸値が上昇し、著しい代謝性アシドーシスをきたし、血液が酸性になった状態です。症状としては腹痛、嘔吐、早い呼吸、全身倦怠、意識障害などがあります。メトホルミンは、乳酸アシドーシスを起こしやすい患者には投与しないことになっています。日本糖尿病学会は「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」を公表し、メトホルミンを使用する際には注意が必要と呼びかけています。メトホルミンを服用している患者は、以下のことに注意し、異常があらわれた場合は速やかに医師に相談することが重要です。

  • 過度のアルコール摂取を避ける。
  • 発熱、下痢、嘔吐、食事摂取の不良などにより脱水状態になっている恐れがある場合には、一旦服用を中止し、医師に相談する。
  • 乳酸アシドーシスの初期症状があらわれた場合には、すぐに受診する。

造影剤の使用時

「造影剤」と呼ばれる内臓や血管の様子をくっきりと映し出すことができる薬剤を注射してCTや心臓の検査をすることがありますが、この造影剤の使用により一時的に腎臓の機能が低下することがあります。ですので、造影剤使用の際に、メトホルミンの内服を中止してくださいと言われるケースがあるかもしれません。病院によって決まりが違いますが、当院では造影剤検査の前後2日間と検査当日、合わせて5日間の休薬をお願いしています。

シックデイ

また、「シックデイ」と呼ばれる食事が摂れないほど体調が悪いときは、上述の「乳酸アシドーシス」の発症リスクが上昇するため、休薬が望ましいです。食事が摂れないなら薬どころではないと思いますが、真面目な患者さんですと「せめて薬だけでも欠かしてはいけない」と思われる方もいらっしゃるため、内服開始の際に説明するようにしています。少し鼻水が出る、のどが痛い、微熱がある程度で食事は問題なく摂れる場合は無理に休薬する必要はありません。

シックデイのリスクとしては、脱水や内臓機能の低下などがあります。そのため、75歳以上のご高齢の患者さんはシックデイリスクが若い患者さんより高いため、メトホルミンは慎重投与になります。75歳を超えたら今まで飲んでいたものを中止しないとダメというわけではありませんが、私は75歳以上の方に新規でメトホルミンを開始することには慎重になってます。

4 : メトホルミンに多面的な作用が

広く使われている糖尿病治療薬であるメトホルミンには、多面的な作用があることが近年分かってきました。。メトホルミンはかつて乳酸アシドーシスなどの副作用の懸念から使用が控えられていましたが、英国のUKPDS研究により、2型糖尿病患者での血糖コントロール改善と心筋梗塞リスクの減少が示され、その有用性と安全性が再評価されました。日本人でも血糖改善と心血管イベント抑制の効果が確認されています。さらに、DPP-4阻害薬との併用によりHbA1cの低下が見られ、がんリスクの低減や腸内フローラの改善にも寄与することが報告されています。また、メトホルミンは便中に糖を排泄し、GLP-1の分泌を促進する作用も持っています。これらの多面的な作用により、メトホルミンは2型糖尿病治療において重要な役割を果たしています。

まとめ

メトホルミンは、血糖値を下げる効果がある薬で、2型糖尿病と診断された方が最初に処方される治療薬の1つです。心筋梗塞などの合併症リスクを抑えることや、体内でがん予防の働きをする酵素や細胞を活性化し、がんのリスクを低下させることなど、血糖値を下げる以外にもさまざまな効果があると推測されており、今でも研究が進んでいます。また、腸内環境に良い影響を与えるといわれ、便を通して体内の糖を排出して体重の減少を促す効果もあります。

メトホルミンは2型糖尿病に有効であり、服用方法や注意点を守りながら正しく使用することで、多くの患者さんにとって効果的な治療薬となります。医師と相談しながら、自分に合った服薬量を取り入れ、糖尿病の治療を進めていきましょう。

メトホルミンは、幅広い効果が期待できる一方で、服用に際しては注意点も多くあります。特に腎機能が低下している方や、特定の検査や体調不良時には服用を中止することが重要です。定期的に医師の診察を受け、適切な指導のもとで服用を続けることが、効果的な糖尿病管理の治療の要となります。

 

今回はこの辺で。また次のブログでお会いしましょう

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