札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。糖尿病治療といえば、毎日の薬や注射、血糖測定…やることが多くて大変ですよね。そんな中、今注目されているのが週に1回の注射だけで、血糖も体重も改善できる可能性がある新しい治療薬「IcoSema(アイコセマ)」です。そんな新薬であるアイコセマについてひと足先にまとめてみました。日本で発売されるのはまだ先になりそうですが、参考になればし幸いです
目次
「IcoSema」って何?
「IcoSema」は、2つの薬の“いいとこ取り”をした、1本で2役の注射薬です。
-
インスリン・イコデク(週1回の長時間作用型インスリン)
-
セマグルチド(GLP-1受容体作動薬。インスリン分泌を促し、食欲を抑え、体重も減りやすくなる)
この2つを1本にまとめて、週に1回だけ皮下注射するだけ。毎日の注射が必要なインスリン治療とは違い、患者さんの負担を大きく軽減できると期待されています。
従来のインスリン治療と比べてどう?
2024年に発表された大規模な国際共同試験「COMBINE 3」では、以下のような効果が示されました。
項目 | IcoSema(週1回) | 従来のインスリン治療(1日複数回) |
---|---|---|
HbA1cの低下 | 平均 -1.47% | 平均 -1.40%(ほぼ同等) |
体重変化 | -3.6kg(減量) | +3.2kg(増加) |
低血糖の頻度 | 年間 0.26回/人 | 年間 2.18回/人 |
つまり、「血糖コントロールは同等」「体重は減りやすい」「低血糖は少ない」と三拍子そろった結果が得られています。
さらに驚きの効果も:COMBINE 1・2試験の結果から
他の試験結果では、週1回のインスリン単剤治療やGLP-1単剤と比べても、IcoSemaはさらに優れたHbA1cの改善を示しています。
-
IcoSema vs インスリン・イコデク単独(COMBINE 1)
-
HbA1cの改善量:-1.55% vs -0.89%
-
低血糖の頻度:大幅に少ない(年0.14回 vs 0.63回)
-
-
IcoSema vs セマグルチド単独(COMBINE 2)
-
HbA1c改善:IcoSemaが優位(-1.35% vs -0.90%)
-
体重変化:セマグルチドの方が減量効果は大(+0.84kg vs -3.7kg)
-
つまり、「IcoSema」は血糖コントロールではどの比較対象よりも優れており、体重減少や低血糖リスクの点でもバランスが良いといえます。
副作用や注意点は?
もっとも多い副作用は、**胃腸症状(吐き気や下痢など)**で、これはGLP-1受容体作動薬によるものと同様です。多くは軽度から中等度で、治療継続が可能な範囲でした。
また、「IcoSema」はまだ日本では承認されておらず、現在開発中です。
IcoSemaがもたらす未来
糖尿病治療は「毎日がんばること」の積み重ねです。しかし、IcoSemaのような週1回投与で、しかも血糖と体重が改善しやすく、低血糖リスクも少ない薬が登場すれば、生活の質(QOL)は格段に向上します。
とくに、
-
毎日の注射や薬の服用が負担な方
-
インスリン導入に不安を感じている方
-
体重も気になっている方
には、大きな福音となるかもしれません。
まとめ:週1回注射で「血糖」「体重」「安心」を得られるかも
IcoSemaはまだ日本では承認されていない治療薬ですが、今後の展開次第では、糖尿病治療の新たな選択肢になる可能性があります。
これからインスリン治療を始める方や、治療に不安がある方は、ぜひ医師に相談してみてください。今後、日本での承認・導入が進めば、治療の形が変わるかもしれません。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉