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【医師監修】手足のしびれは糖尿病が原因かも??初期症状から徹底解説!!

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです、今回は、多くの方が一度は経験する「手足のしびれ」について掘り下げていきたいと思います。特に「糖尿病によるしびれ」は、三大合併症の一つである“糖尿病神経障害”の可能性もあり、気付かないうちに進行してしまうことがあります。そこで、「しびれ」全般の基本知識から、糖尿病との関係、受診の目安や日常生活での注意点までを糖尿病内科医の目線からわかりやすくまとめました。ぜひ最後までご覧いただき、ご自身やご家族の健康管理にお役立てください。

はじめに:「しびれ」には緊急性の高いパターンもある

まず、「しびれ」という言葉は、日常的に使われている一方、人によって感じ方が異なる曖昧な言葉でもあります。「手足がジンジン」「ピリピリ」「熱を帯びているように感じる」「痛みを感じにくくなる」「動かしづらくなる」など、症状は多彩です。

こうしたしびれの中でも、以下の2つが同時に当てはまる場合は緊急性が高く、ただちに医療機関を受診する必要があります。

  1. はっきりと「○時ごろから」「○日前から」とわかるほど、“急に” しびれが出てきた
  2. しびれた手足(特に片側)が自分で動かせない状態になっている

もしこのパターンに該当するなら、脳卒中(脳梗塞・脳出血)や急性の神経圧迫・血流障害など、重篤な疾患の可能性があります。ためらわずに119番通報するか、救急外来を探して急いで受診してください。携帯電話で救急車を呼びます - 救急医療のベクターアート素材や画像を多数ご用意 - 救急医療, ベクター画像, 電話を使う - iStock

しびれが緊急性の低い場合、何が原因として考えられる?

上記の緊急サインに当てはまらなければ、いったん落ち着いて情報収集し、受診のタイミングを判断できます。しびれをもたらす一般的な原因としては、次のようなものが挙げられます。

  1. 神経の圧迫
    • 例:手根管症候群(手首付近の「手根管」というトンネルで神経が圧迫される)、腰椎や頸椎のヘルニアによる神経圧迫など
  2. 血流障害
    • 例:正座による血流低下、寒冷環境での血管収縮、末梢動脈疾患など
  3. 神経伝達などの代謝異常
    • 例:ビタミン欠乏、毒性物質・薬剤の影響、糖尿病による代謝異常など
  4. その他の炎症や感染症など
    • 例:帯状疱疹などのウイルス感染による末梢神経障害

しびれというのは、実はこうした複数の要因が絡み合って起こることもあります。まずはしびれの出方、症状が出始めた時期やきっかけ、痛みや熱感の有無などを振り返り、整理することが大切です。カンファレンスについて | 昭和大学医学部内科学講座腎臓内科学部門

糖尿病性神経障害とは?――血糖コントロールの不良が招く“手足のしびれ”

近年、患者数が増え続けている糖尿病。この病気は、血糖値が高い状態が長引くと「神経障害」「網膜症」「腎症」という三大合併症をはじめ、さまざまな不調をもたらします。その中でも、もっとも多く、しかも早期から現れるとされるのが「糖尿病性神経障害」です。

なぜ高血糖が神経を傷つけるのか?

  • 血管が傷む
    高血糖状態が続くと、血管の内壁がダメージを受けて硬く厚くなり、末梢の血管が詰まりやすくなります。神経に十分な栄養や酸素が届かなくなるため、神経が徐々に障害されます。
  • 代謝異常の影響
    血糖値の異常が神経細胞の代謝プロセスに悪影響を及ぼし、異常物質の蓄積や炎症を引き起こします。これも神経を傷つける大きな要因の一つです。

どんな症状が出るのか?

  • ジンジン、ピリピリ、ビリビリ
    「電気が走るような痛み」「熱を帯びているような感じ」など、人によって表現は異なります。
  • 手袋靴下型”パターン
    糖尿病性神経障害では、長い神経繊維がダメージを受けやすく、まず足先や指先など末端から症状が強く出始める傾向があります。左右対称に症状が出やすいのも特徴です。
  • 感覚の低下や麻痺
    しびれの段階を過ぎると、むしろ痛みを感じにくくなり、ケガや感染症を見落としてしまうこともあります。

糖尿病性神経障害かどうかを見極めるポイント

実は、「〇〇という検査の数値が△△以上なら糖尿病性神経障害」といった明確な基準はありません。したがって、問診や身体診察、必要に応じた血液検査や画像検査で、ほかの病気を除外しながら総合的に診断していきます。

こんなケースは要注意

  • 発症時期が徐々に
    圧迫や脳血管の異常によるしびれは、急に出現することが多いです。糖尿病性神経障害は「数ヶ月前くらいから、だんだんしびれてきた」といった、ゆるやかな経過が多いのが特徴。
  • 左右対称に足先が先行
    片側だけにしびれが出る場合や、手の方が強く症状が出る場合は、頸椎症や手根管症候群など別の疾患を疑います。糖尿病性神経障害では、足(特に足先)→手へと症状が及ぶことが多いです。
  • 感覚異常がメイン
    糖尿病による神経障害では「ジンジン、ピリピリした痛み」など感覚麻痺や感覚過敏がメイン。逆に「力が入らない」「うまく動かせない」など運動麻痺が前面に出る場合は、神経根の圧迫などが考えられます。

診察や検査の具体例

  • アキレス腱反射テスト(ハンマー)
    障害があると反射が鈍くなることが多いです。
  • 振動覚の検査(音叉)
    足先に音叉を当てて、振動を感じられるか確認します。加齢でも低下しやすいので総合的な判断が必要です。
  • モノフィラメント検査
    特殊な細い糸を足裏などに当て、触覚が正常かどうかを調べます。
  • MRI・CT
    脳や脊髄に異常がないか、ヘルニアが神経を圧迫していないかチェックします。
  • 血液検査
    血糖値やHbA1c(へモグロビンA1c)の測定だけでなく、ビタミン不足や感染症などを確認して別の原因を排除するためにも行います。
  • DPNチェッカー、神経伝導速度検査
    病院によってはこうした機器で末梢神経障害の程度を数値化する場合もあります。Diabetic neuropathy: Types, symptoms, and causes

糖尿病神経障害が進行すると危険――「痛みを感じにくい」方がさらに深刻

「しびれ」は痛みにも似た不快な感覚ですが、実は進行すると「それすら感じなくなる」ケースもあるのです。これは神経細胞がダメージを受け続け、感覚がほぼ麻痺してしまった状態。

  • ケガやヤケドに気づかない
    痛みは身体の異変を知らせる大切なサインです。それが失われると、傷の放置→感染症→重症化、という最悪の流れに至ることがあります。
  • 壊疽(えそ)になっても放置
    さらに血流の悪化で組織が壊死しても、痛みがないため気づきにくく、切断や命の危険にまで発展する場合があります。

こうしたリスクを少しでも減らすには、痛みやしびれを感じる段階で早めに治療を開始することが大切です。

糖尿病性神経障害を含めた合併症対策

糖尿病が長く続き、血糖コントロールが悪い状態が続くほど、神経障害のリスクは高まります。同時に腎症や網膜症、大血管障害(脳や心臓の大きな動脈の障害)なども進展している可能性が考えられるため、総合的な合併症検査が必要です。

  • 定期的な血液検査
    HbA1cを確認し、目標値内に収まるよう、食事療法・運動療法・内服薬・インスリン治療などを適切に組み合わせます。
  • 眼底検査、腎機能検査
    網膜症や腎症など他の合併症を併発していないかチェックします。
  • フットケア
    足の皮膚や爪などを日常的に観察し、傷や変色がないかこまめに確認します。

日常で気をつけたいセルフケアのポイント

  1. 血糖コントロールを最優先
    しびれの進行を防ぐうえで、まずは糖尿病の悪化を食い止めることが重要です。食事療法運動習慣の見直し、定期的な通院を続けましょう。
  2. 足に傷がないかこまめにチェック
    お風呂や寝る前など、毎日一度は足裏・足指の間まで確認する習慣をつけます。少しの傷でも感染症が重症化するリスクがあります。
  3. 足に合った靴と靴下を選ぶ
    小さな圧迫や摩擦が大きなトラブルにつながることもあるので、サイズや素材に注意しましょう。
  4. 禁煙や過度な飲酒の見直し
    喫煙は血管を収縮させ、飲酒のし過ぎは代謝異常を悪化させます。神経障害が進みやすくなる一因です。
  5. ストレスや睡眠不足を避ける
    自律神経の乱れは血糖コントロールにも影響します。心身ともに適切な休養をとり、上手にストレスを発散しましょう。

糖尿病のリスクチェックと早期受診のすすめ

「しびれが気になるけど、そもそも糖尿病かどうか分からない…」という方も多いかもしれません。以下のような項目に心当たりがある場合、糖尿病のリスクが高いと言われています。

  • 40歳以上(男性は特に)
  • 親族に糖尿病の方がいる
  • 肥満(BMI25以上)または最近体重が急に増えた
  • 喉が異常に渇き、水分を大量に摂りたくなる
  • 健康診断で血糖値、尿糖の異常を指摘された
  • 甘い物やジュースをよく口にする
  • 運動習慣が少なく車移動ばかり
  • 喫煙の習慣がある
  • ストレスの多い仕事をしている

5つ以上当てはまるなら要注意。近隣の内科、もしくは糖尿病内分泌科を受診して検査を受けましょう。糖尿病は早期発見・早期治療が肝心です。

まとめ:しびれを感じたら放置は禁物!早めの相談があなたの健康を守る

しびれは、「正座のしすぎで一時的に」「冬の冷えで血行が悪くなって」など、軽い原因で起こることも多く、見過ごされがちです。しかし、“突然のしびれ”や“長引くしびれ”、あるいは“片側だけのしびれ”などは、脳や神経の重大な問題のサインかもしれません。

特に、糖尿病と診断されている方、血糖コントロールがうまくいっていない方が、左右対称的な手足(末端)のしびれを感じるようになったら要注意。進行を防ぐには早めの受診が重要です。痛みを感じにくい方こそ重症化しやすいという落とし穴があり、放置すると足の切断など取り返しのつかない状態になりかねません。

  • 「これって糖尿病のせい? 他の病気の疑いもある?」
  • 「しびれが改善しないけど、どうすればいい?」
  • 「血糖値が高いといわれたことがある…」

こうした不安や疑問を感じたら、まずは一度、医療機関に相談してください。当院(もしくはお近くの専門医療機関)でも、糖尿病神経障害やその他のしびれの原因を丁寧に診断し、最適な治療方針をご提案いたします。

しびれは決して軽んじられない症状です。体からのサインに耳を傾け、早期に正確な原因をつきとめ、適切な対応をとりましょう。あなたの健康を守る第一歩は、「おかしいな」と思ったときの行動の早さです。今のうちから、できる対策を始めてみませんか?

当院では糖尿病患者様を対象にフットケア外来を行っております。気になる方はぜひご来院ください

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

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