札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。札幌もいよいよ夏本番の暑い季節となりました。熱中症予防のためにも十分な水分補給は欠かせません。しかし、炭酸飲料やジュース、スポーツドリンクなど、手軽に手に入る飲料を過剰に摂取することで引き起こされる「ペットボトル症候群」という問題についてご存知でしょうか?今回は、このペットボトル症候群について糖尿病内科医の立場から詳しくお話しします。このブログを読んで、本当は怖いペットボトル症候群について詳しくなれたら幸いです。
ペットボトル症候群とは
ペットボトル症候群、正式には「清涼飲料水ケトーシス」と呼ばれます。この症状は、糖分を多く含む清涼飲料水を大量に摂取することで、血液中のブドウ糖やケトン体が異常に高くなることによって引き起こされます。具体的には、以下のような症状が現れます:
- 著しい喉の渇き
- 多尿(尿量が多い)
- 倦怠感(体がだるい)
- 腹痛、嘔気
- 重症の場合、意識の低下や昏睡状態
この症状は糖尿病と診断されていない人でも突然発症することがあります。糖分が多い飲料を飲むことで血糖値が上昇し、それによって喉の渇きを感じ、さらに飲み続けるという悪循環に陥ります。
清涼飲料水の糖質量の意外な多さ
市販されている清涼飲料水には驚くほどの糖分が含まれています。例えば、以下のような量の糖質が含まれています:
- 缶コーヒー(190ml):スティックシュガー約5本分
- 缶コーヒー(190ml・微糖):約2本分
- 100%オレンジジュース・りんごジュース(200ml):約7本分
- スポーツ飲料(500ml):約8本分
- 炭酸飲料(350ml):約14本分
これらの飲料に含まれる糖分は、体内への吸収が非常に早く、血糖値を急上昇させます。これが、ペットボトル症候群を引き起こす原因の一つです。
ペットボトル症候群のメカニズム
ペットボトル症候群は、急激に上昇した血糖値に対して膵臓が大量のインスリンを分泌しようとするが、その働きが追いつかなくなることから発症します。高血糖状態が続くと、インスリンの分泌や効果が低下し、糖がエネルギー源としてうまく利用されなくなります。このため、体は代替エネルギー源として脂肪を分解し始めます。この過程で「ケトン体」という物質が生成され、血液が酸性に傾くことでケトーシス状態になります。
ケトーシスが進行すると、以下のような症状が現れます:
- 口渇:血糖値が高いと喉が渇くため、さらに飲み物を摂取してしまう。
- 多尿:高血糖によって体が余分な糖を排出しようとするため、尿の量が増える。
- 倦怠感:糖がうまくエネルギーとして利用されないため、全身がだるくなる。
- 腹痛・嘔気:ケトン体の増加による胃腸への負担。
- 重症の場合、意識障害・昏睡:血液の酸性度が高まることで神経系に影響を及ぼす。
ペットボトル症候群の予防と対策
ペットボトル症候群を予防するためには、以下の点に注意することが重要です:
- 水分補給の工夫:
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- 水分補給には糖分が含まれない水やお茶(カフェインを含まない麦茶など)を主に摂取する。
- 甘い飲み物は嗜好品として楽しむ程度にとどめ、水分補給には向いていないことを認識する。
- カフェインを含む飲料(コーヒーや紅茶)やアルコールは利尿作用があるため、水分補給には適していない。
- 飲料の選び方:
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- 市販のスポーツドリンクや炭酸飲料でも、無糖や糖分控えめのものが増えているので、購入時に栄養成分表示を確認する。
- 糖分の摂取量を減らすために、無糖や低糖の飲料を選ぶようにする。
- 適切な水分補給:
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- 夏場はこまめに水分を摂ることが大切です。1日に1.5L以上の水分を摂取することを目標にしましょう。
- 特に運動後や汗をかいた後は、水や無糖のお茶を選んで、体内の水分をしっかり補給する。
まとめ
暑い夏を健康に乗り切るためには、適切な水分補給が欠かせません。しかし、糖分が多い飲料の過剰摂取による「ペットボトル症候群」のリスクを理解し、対策を講じることが重要です。水や無糖のお茶を中心に、糖分控えめの水分補給を心がけることで、健康的に夏を過ごしましょう。
また当記事がHTBのイチオシ!!でも紹介されましたのでこちらも拝見していただければ幸いです。
今回はこの辺で、また次のブログでお会いしましょう。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉