札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。「食後にひどく眠くなるのは糖尿病サイン?」「他に注意すべき症状はある?」このような悩みはありませんか?
食後のひどい眠気は、血糖値の急上昇と急下降が関係している場合があります。これは過食などにより引き起こされており、放置すると2型糖尿病のリスクの上昇につながります。とはいえ、眠気だけで糖尿病リスクがあるとは判断できません。
本記事では、食後のひどい眠気と糖尿病の関係性や、眠気以外に注意すべき症状を解説します。血糖値と眠気を改善する対策も解説しているため参考にしてください。
目次
食後のひどい眠気と糖尿病の関係性
食後にひどい眠気がある方は、血糖値スパイクを引き起こしている恐れがあります。血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇したあとに、インスリンが大量に分泌されて血糖値が急下降している状態です。
血糖値スパイクが繰り返されている状態を放置すると、インスリンの過剰な分泌が続きます。その結果、インスリンが効きにくくなり2型糖尿病のリスクが高まります。血糖値スパイクが起きやすい方は以下の通りです。
また、高血糖状態が続くと、いつの間にか血管を傷つけてしまいます。血管が傷つくことで、動脈硬化(血管の弾力が失われる状態)が進行し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高まってしまいます。
食後のひどい眠気以外に注意すべき症状
食後にひどい眠気があるからといって、必ずしも血糖値スパイクを引き起こしているとは限りません。注意すべきは、食後のひどい眠気の他に、以下のような症状が現れている場合です。
- 食後に頭痛がする
- 食後に集中力の低下する
- お腹がすぐに空く
- 疲れやすい
- いつも喉が渇く
- いつも体がだるい
- 最近、視力が落ちてきた気がする
- 排尿の回数が増えており量も多い
特に4〜8の症状が現れている場合は、糖尿病が進行している恐れがあるため要注意です。一般的な健診では、血糖値スパイクを発見できない可能性があります。
前述した血糖値スパイクが起きやすい方に加えて、上記のような症状が当てはまる方は、医療機関を受診して、75g経口ブドウ糖負荷試験(血糖値を正常に保つ能力を調べる検査)を受けましょう。
食後のひどい眠気が昼だけ起きやすい理由
そもそも健康な人でも、昼食後の13時〜16時の間は眠気を感じる人が多いです。人は生体リズムの関係によって、健康な人でも昼間に耐え難い眠気を感じてしまいます。注意すべきは、眠気の他に前述したような血糖値スパイクや糖尿病を疑うような症状が現れている方です。
また、近年では「ラーメンやチャーハン」「パスタとパン」「蕎麦と丼もの」「菓子パンとコーヒー」など、炭水化物が多い昼食をとる傾向があります。炭水化物には血糖値を上昇させやすい糖質が多く含まれており、多量に摂取すると血糖値スパイクを引き起こしやすく、昼食後にひどい眠気が現れることがあります。
参考:バイオメカニズム学会誌 健常成人が感じる昼間の眠気とその対応について
糖尿病以外で食後や日中に眠気を引き起こす原因
糖尿病以外にも食後や日中に眠気を引き起こす原因は存在します。例えば、以下のような病気などです。
- 甲状腺機能低下症
- 睡眠時無呼吸症候群
- 食後低血圧
- ナルコプレシー
- 特発性過眠症
それぞれの症状の特徴を解説しているため、自分に当てはまっていないか参考にしてください。
1.甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症を発症すると、血液中に必要なホルモンが不足するために、多岐に渡る症状が現れます。例えば、日中の眠気やいびき、全身のだるさ、記憶力の低下などの症状です。甲状腺(こうじょうせん)とは、首の中心付近に存在する代謝に必要なホルモンを分泌する臓器です。
2.睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に呼吸が10秒以上止まってしまう病気です。一定時間呼吸が止まったり、浅い呼吸を繰り返したりするため熟睡できません。そのため、日中の起きている時間にひどい眠気におそわれてしまいます。
放置すると脳梗塞や心筋梗塞、高血圧、不整脈などの発症率が高まります。日中のひどい眠気に加えて、夜間のひどいいびき、起床時の頭痛やだるさなどが現れている方は注意が必要です。
3.食後低血圧
食後低血圧とは食後に血圧が低下してしまう症状です。脳の血流も低下するため眠気を感じることがあります。その他の一般的な症状には、めまいや立ちくらみ、体のだるさ、失神などがあります。
高齢者に多く、原因ははっきりと解明されていません。有力な原因の一つとして考えられているのが、食事によって内臓に血液が滞ってしまい、脳への血液が不足してしまうことです。
4.ナルコプレシー
ナルコプレシーは食後に限ることではありませんが、日中にひどい眠気が現れる睡眠障害です。食事中、歩行中など眠気が来るはずのない状況でも、眠気におそわれてしまいます。状況を問わず居眠りをしてしまうため、日常生活に支障をきたしてしまいます。
5.特発性過眠症
特発性過眠症とは、夜間に十分な睡眠をとっているのにもかかわらず、日中にひどい眠気におそわれる病気です。1日中ぼんやりと過ごしたり、居眠りを繰り返したりしてしまいます。疫学調査はありませんがめずらしい病気です。原因も明らかになっておらず10〜20歳代に発症します。
血糖値の上昇も抑える食後のひどい眠気の4つの対策
血糖値の上昇に加えて、食後のひどい眠気を予防する対策には、以下のようなものがあります。
- 糖質の多量摂取を控える
- 食物繊維が多く含まれるおかずからゆっくりと食べる
- 1日3食規則正しく食べる
- 食後に軽い運動をする
それぞれの詳細を解説します。
1.糖質の多量摂取を控える
血糖値を急上昇させて、血糖値スパイクを引き起こしやすい栄養素は糖質です。糖質が多く含まれている食品は以下の通りです。
- 米類
- パン類
- イモ類
- 麺類
- 揚げ物類
- 菓子類
- 果物類
特に「ラーメンとチャーハン」などの炭水化物の重ね食べは、糖質を多量に摂取してしまうため注意が必要です。おかずは野菜類や魚類などをバランスよく食べましょう。
2.食物繊維が多く含まれるおかずからゆっくりと食べる
食物繊維が多く含まれる野菜類やキノコ類、海藻類は、血糖値の上昇を緩やかにして、血糖値の急上昇を抑えられます。その結果、眠気を引き起こすことも予防できます。
また早食いも血糖値の急上昇の原因です。糖の吸収をゆるやかにする方法として、以下の流れで食事をすると効果的です。
- 野菜類やキノコ類、海藻類などのおかずから食べる
- 次に魚や肉のメインのおかずを食べる
- 最後にご飯などの炭水化物を15分かけて食べる
麺類や丼ものは、早食いのもとになるため頻繁に食べるのは控えましょう。
3.1日3食規則正しく食べる
食事は1食抜くと血糖値の急上昇につながります。原因は以下の通りです。
- 一度に多量に食事を摂取してしまう
- 空腹に備えて脂肪を溜め込む
- 筋肉が分解されてエネルギーが蓄えられる
- 食物繊維などが不足する
仕事などによりどうしても食事をする時間がないときは、おにぎり1個やバナナ1本など、腹持ちがよい間食を取り入れると良いでしょう。ただし、間食をした分、その後の食事量を減らしてください。
4.食後に軽い運動をする
食後に軽い運動をすると血糖値の急上昇を予防できます。食後の軽い運動は、消化吸収のために集まっている血液を筋肉に回すことができ、糖の吸収を遅らせることができるためです。
食後の運動の効果的な方法には以下のようなものがあります。
- 食後15分休む
- 休憩後、ウォーキングやジョギングなどの運動を15分間する
運動の強度はウォーキングとジョギングの間ぐらいが最適と考えられています。実際に、食後の運動をしていない状態では、血糖値が140mg/dLに対して、食後の運動を取り入れた場合の血糖値は130mg/dLにまで抑制できたという報告があります。
参考:立命館大学 TANQ 食後の血糖値は運動で下がる。でもどれくらいの運動が最適なの?
食後のひどい眠気以外に糖尿病のリスクがある場合は要注意
食後のひどい眠気は、血糖値スパイクが1つの原因として考えられます。日頃から食後にひどい眠気がある方で、特に以下に該当する方は注意が必要です。
- 糖尿病予備軍と診断を受けている
- 家族に糖尿病の方がいる
- 日頃から過食や早食いをしている
- ひどい眠気以外にも症状が現れている
血糖値スパイクを繰り返している状態は、2型糖尿病だけでなくさまざまな病気を引き起こすリスクを高めます。まずは血糖値スパイクを引き起こしていないかを確認してみましょう。当院では、糖尿病ドックにより血糖値スパイクが起きていないかを確認できます。気になる方はご相談してください。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉