札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんは橋本病という病気を知っていますか。この病気は成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人というとても多い病気で、さまざまな症状を取ります。今回はそんな橋本病について医師の立場からまとめてみようと思います。このブログを読んで皆様の橋本病に対する理解が深まれば幸いです。
目次
橋本病(慢性甲状腺炎)とは?
橋本病(慢性甲状腺炎)は、甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症の代表的な疾患で、甲状腺に慢性的な炎症が生じる自己免疫疾患です。甲状腺ホルモンは心臓や肝臓、腎臓、脳など全身の臓器に作用し、代謝を促進する重要なホルモンです。このホルモンが不足することで、様々な体調不良が引き起こされます。
橋本病の患者数
橋本病は非常に頻度の高い疾患であり、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人に見られます。ただし、橋本病の患者すべてが甲状腺機能低下症を発症するわけではなく、実際に甲状腺機能低下症になるのは4~5人に1人未満です。特に30~40代の女性に多く見られます。
原因
橋本病は自己免疫疾患であり、免疫システムが自身の甲状腺を攻撃することで発症します。この慢性炎症により甲状腺組織が破壊され、甲状腺ホルモンの生成が困難になります。具体的な原因は未解明ですが、ストレス、妊娠・出産、ヨード過剰摂取などが誘因となることがあります。
症状
橋本病の症状は多岐にわたります。甲状腺が腫れることで首の圧迫感や違和感が生じ、甲状腺機能低下症になると全身の代謝が低下し、以下のような症状が現れます:
- 無気力
- 疲れやすさ
- 全身のむくみ
- 寒がり
- 体重増加
- 便秘
- かすれ声
- 月経過多(女性)
これらの症状がうつ病や認知症と誤診されることもあります。また、血液検査ではコレステロール高値や肝機能異常が見られることがあります。
治療
甲状腺機能が正常な場合、治療は不要です。甲状腺機能低下症がある場合は、合成T4製剤(チラーヂンS®、レボチロキシン®)を内服し、ヨード過剰が疑われる場合はヨード制限も行います。妊娠中や妊娠を希望する女性は、TSHが2.5µU/ml以下を目標に甲状腺ホルモン補充を開始し、妊娠初期には4週毎に甲状腺機能のチェックが必要です。
経過
一旦甲状腺機能低下症になると、生涯にわたって甲状腺ホルモンの補充が必要となることが多いです。甲状腺が急に大きくなった場合は、リンパ腫の可能性もあるため、早急に医師に相談する必要があります。
妊娠と橋本病
甲状腺自己抗体が陽性の場合、TSHが2.5µU/mlを超える程度の軽い潜在性甲状腺機能低下症でも流早産や妊娠高血圧症候群のリスクが高く、治療によりそのリスクを改善できます。妊娠を希望する場合は、合成T4製剤を内服し、妊娠中は甲状腺ホルモン量を増量する必要があります。
遺伝
橋本病になりやすい体質は遺伝しますが、発病には何らかの誘因が加わることが多いです。
日常生活での注意点
甲状腺機能低下症の症状が強い場合は、治療によって甲状腺ホルモンが正常になるまでは体に負担をかけないようにしましょう。また、昆布やひじきなどヨウ素を大量に含む海藻類を過剰に摂取することは避けましょう。
まとめ
橋本病は自己免疫疾患であり、特に30~40代の女性に多く見られます。症状は多岐にわたり、適切な治療が必要です。定期的な検査と医師の指導の下、日常生活を送ることが重要です。このように、橋本病についての詳細な情報を知ることで、早期発見と適切な対応が可能になります。病気に関する不安や疑問がある場合は、医師に相談することをお勧めします。
今回はこの辺で
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