札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。風邪のような症状が治まった後に、急に喉仏の下あたりが激しく痛んだり、熱が出たりして驚かれたことはありませんか。それは単なる風邪のぶり返しではなく、亜急性甲状腺炎という甲状腺の病気かもしれません。この病気は30代から50代の女性に多く見られ、甲状腺の風邪とも呼ばれることがあります。痛みや動悸がつらい病気ですが、適切な治療を行えばしっかりと治すことができます。本日はこの亜急性甲状腺炎について、内科医の目線からガイドラインに基づき詳しく解説します。

目次
首の激しい痛みと発熱が特徴的な亜急性甲状腺炎とは
亜急性甲状腺炎は、甲状腺という喉仏の下にある臓器に炎症が起こり、組織が破壊されてしまう病気です。最大の特徴は首の前部分の痛みと発熱です。この痛みは非常に特徴的で、飲み込む時に痛む嚥下痛があったり、触れるだけで激痛が走ったりします。また、痛みの場所が右から左へ、あるいは左から右へと日によって移動することがあり、これを遊走性疼痛と呼びます。痛みは首だけでなく、耳の奥や奥歯、胸の方にまで放散することもあり、歯科や耳鼻科を最初に受診される患者さんも少なくありません。
ウイルス感染が関与している可能性が高い発症原因
なぜ急に甲状腺に炎症が起きるのか、その明確な原因はまだ完全には解明されていません。しかし、多くの患者さんにおいて、発症の1週間から数週間前に鼻水や喉の痛みといった風邪のような症状(上気道感染)が見られることから、ウイルス感染が引き金になっていると考えられています。ウイルス感染によって免疫システムが反応し、その結果として甲状腺に炎症が引き起こされるのです。また、特定の白血球の型(HLA-B35など)を持つ人がなりやすいという遺伝的な素因も関係していると言われています。
甲状腺が壊れることで起こるホルモン漏出と全身症状
甲状腺は代謝を司る甲状腺ホルモンを貯蔵している臓器ですが、炎症によって組織が壊れると、蓄えられていたホルモンが血液中に一気に漏れ出してしまいます。これを破壊性甲状腺中毒症と呼びます。その結果、血液中のホルモン濃度が一時的に高くなり、動悸、息切れ、多汗、手の震え、体重減少、イライラといったバセドウ病によく似た症状が現れます。しかし、バセドウ病とは異なり、ホルモンが過剰に作られているわけではなく、漏れ出ているだけですので、抗甲状腺薬は使用しません。
ステロイドと抗炎症薬を使い分ける治療戦略
治療の基本は、痛みと炎症を抑えることです。痛みが軽度であれば、ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用しますが、高熱が出ていたり痛みが激しい場合、あるいはNSAIDsで効果が不十分な場合は、副腎皮質ホルモン(ステロイド薬)であるプレドニゾロンを使用します。ステロイドは劇的に効き、服用した翌日には嘘のように痛みが引くことが多いですが、ここで安心して自己判断で薬を止めてはいけません。急に止めると高確率でぶり返すため、医師の指示に時間をかけて慎重に薬を減らしていく必要があります。
ホルモン値の変動と回復までの長期的な経過
治療を開始すると、まずは痛みが治まり、次に血液中の甲状腺ホルモン値が正常化していきます。しかし、炎症によって甲状腺内のホルモンが枯渇してしまうため、正常化した後に一時的にホルモン不足(甲状腺機能低下症)の状態に陥ることがあります。この時期には体がだるくなったり、寒がりになったり、むくみが出たりします。多くの方は自然に甲状腺の機能が回復し元通りになりますが、数パーセントの方は機能が戻らず、永続的な甲状腺機能低下症となり、生涯にわたってホルモン剤の補充が必要になることもあります。
なかなか治らない場合に考えられる要因と生活の注意点
亜急性甲状腺炎は通常数ヶ月で治癒しますが、中には半年以上症状がくすぶる方もいらっしゃいます。治りが悪い原因としては、ステロイドの減量が早すぎたことによる再燃や、仕事や家事での無理によるストレス、不規則な生活などが挙げられます。治療中は、たとえ痛みが治まっても体の中では炎症が続いていることを意識し、激しい運動は避けて安静に過ごすことが大切です。また、ごく稀に10年以上経過してから再発することもありますので、首の違和感を覚えたら早めに受診することが推奨されます。
まとめ
亜急性甲状腺炎は、激しい痛みと全身のしんどさで患者さんの生活の質を著しく下げる病気ですが、診断さえつけば治療法は確立されています。「ただの風邪」や「歯の痛み」だと思って我慢せず、首の痛みが移動したり、動悸がするような場合は甲状腺の病気を疑ってください。適切な投薬と安静により、辛い症状は必ず改善します。焦らずじっくりと治療に取り組み、甲状腺の機能を守っていきましょう。
患者からよくあるQ&A
Q1 亜急性甲状腺炎は他の人にうつりますか。
いいえ、うつりません。原因としてウイルス感染が関係していると言われていますが、亜急性甲状腺炎という病気自体が人から人へ感染することはありませんので、家族や周囲の方と普段通り接していただいて大丈夫です。
Q2 治療中に運動や仕事はしてもいいですか。
急性期の痛みや発熱がある時期、また甲状腺ホルモンが高く動悸がしている時期は、心臓への負担を避けるため激しい運動は控えてください。仕事については、デスクワーク程度なら可能ですが、過労やストレスは治りを遅くする原因になりますので、無理のない範囲で調整することをお勧めします。
Q3 ステロイド薬を飲むのが怖いのですが、必ず飲まなければなりませんか。
軽症であれば一般的な痛み止め(NSAIDs)だけで治ることもあります。しかし、痛みが強く食事が喉を通らない場合や高熱が続く場合は、ステロイド薬が最も効果的であり、結果的に早く治ります。医師の管理下で適切な期間、適切な量を使用すれば、副作用のリスクを最小限に抑えられますのでご安心ください。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック 院長 小野渉
引用サイト:https://www.japanthyroid.jp/doctor/guideline/japanese.html


