ブログ

【医師が解説】短時間の昼寝、パワーナップ(Power Nap)のやり方について

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。今回は、短時間の仮眠「パワーナップ」を取り入れて、午後からの疲労回復や仕事の効率化を図る方法を内科医の目線からご紹介します。昼寝といえば「サボっているだけでは?」と思われがちですが、実は科学的にも大きなメリットが認められ、世界有数の企業でも導入が進んでいる習慣です。「人生が変わる昼寝」ともいわれるパワーナップを、ぜひ日常に取り入れてみてください!1時間超の昼寝は死亡リスク3割上昇」の衝撃事実 大人に昼寝は本来不要、夜寝の質向上が重要 | 健康 | 東洋経済オンライン

パワーナップとは?

パワーナップ(Power Nap) とは、一般的に 15〜30分 ほどの短時間の仮眠を指します。コーネル大学の社会心理学者 ジェームス・マース が提唱した概念で、「昼食後の時間帯(12〜15時)」にとる短い眠りのことです。

30分以上寝てしまうと深い眠りのステージ(ノンレム睡眠の深い段階)に入るため、目覚めた際に強い倦怠感を覚えたり、夜の睡眠に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。したがって、“15〜30分以内” におさめるのが大原則です。

最近では GoogleやNIKE、Apple、Microsoft などの海外大手企業のみならず、日本企業でも導入が進んでおり、オフィス内に仮眠スペースやナップルームを設置し、昼下がりの短時間仮眠を推奨する動きが活発化しています。

パワーナップが疲労回復に効く理由

  • 脳の“キャッシュ”をクリアにする

睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。レム睡眠は脳が活発に動いている浅い眠り、ノンレム睡眠は脳の活動が鎮まる深めの眠りといわれます。
カリフォルニア大学・バークレー校の神経科学者 マシュー・ウォーカー 教授によると、入眠から20分ほどで訪れるノンレム睡眠ステージ2 において、脳に溜まった“キャッシュ・メモリ”がクリアされるといいます。
パソコンやスマホでキャッシュを消去すると動作が軽くなるように、短時間でも脳の中の不要情報をリセットすることで疲労が軽減し、集中力や作業効率、記憶力 が高まるのです。

  • NASAの研究結果

NASA(アメリカ航空宇宙局)は宇宙飛行士の疲労管理として「NASA Naps」という研究を行っており、昼に26分間の仮眠をとるだけで認知能力が34%、注意力が54%向上 したという報告があります。これをきっかけに、多くの企業がパワーナップの導入に興味を持ち始めました。

パワーナップのメリット

  1. 集中力の向上
    脳がスッキリし、午後の眠気を抑えることでミスが減り、業務効率が上がります。
  2. ストレス軽減・リフレッシュ
    短時間でも睡眠をとると気分がリセットされ、イライラや疲労感を軽減します。
  3. 記憶力向上
    必要な情報を脳が整理するため、覚えたばかりのことやアイデアを定着させやすくなります。
  4. 心身の健康維持
    高血圧や心臓疾患リスクの軽減に繋がるという研究もあり、長期的な健康面でもメリットが期待されます。
  5. 夜の睡眠の質向上
    昼間に短時間仮眠を挟むことで、体内リズムが整い、かえって夜ぐっすり眠れるようになるケースも多く報告されています。寝る前に注意!良質な睡眠を取り朝すっきり快適に目覚める方法9選 | 健康食品・サプリメント通販のハウスダイレクト

スムーズに寝て起きるコツ

「昼寝はしたいけれど、なかなかうまく眠れない」「起きるのがつらい」という方もいます。ここでは、効果的な実践方法をご紹介します。

  1. 環境選び:うるさすぎず、静かすぎない場所
    あまりに騒がしいと入眠が難しく、逆に完全に静かすぎると物音が気になってしまう方も。やや静かな場所 またはホワイトノイズなどを活用すると良いでしょう。
  2. 姿勢:椅子に寄りかかる or 机に伏す
    長時間横になると深い眠りに入りやすく、起きたときにつらくなったり夜の睡眠が乱れたりしがちです。椅子の背もたれを倒すか、机に軽く突っ伏して**“あえて浅く”** 寝るのがおすすめです。
  3. 時間管理:必ずアラームをセット
    15〜30分を目安にアラームをかけておきましょう。長く寝すぎると深いノンレム睡眠(ステージ3〜4)へ移行してしまい、起きてからもしばらくボーッとしてしまう原因になります。
  4. カフェインを上手に利用
    コーヒーやお茶などのカフェインが効き始めるまでには 約20〜30分かかる といわれています。パワーナップ直前にコーヒーを飲んでおくと、起床時にカフェインが作用し始め、スッキリ目覚めやすい とされています。
  5. 起きた後は軽いストレッチ
    目覚めたら軽く伸びをして肩や首を回しましょう。脳と身体を同時に覚醒させるイメージで行うと、後の作業にもすんなり戻れます。

夜の睡眠を妨げないための注意点

パワーナップの目的は、あくまで「短時間で脳の疲労をとり、本来の能力を発揮する」こと。
以下の点に注意しましょう。

  • 夕方以降はNG
    夕方以降の仮眠は夜の睡眠に悪影響を及ぼす恐れがあります。特に15時以降に長い昼寝をすると、夜寝つきにくくなる方もいるので要注意です。
  • 時間厳守
    30分以上眠ってしまうと、起きるのがつらくなるばかりか、起床後のパフォーマンス低下や夜の不眠を招く可能性があります。
  • 規則的な生活リズムを優先
    夜間の寝不足を常にパワーナップで補おうとすると、ますます夜に眠れなくなる悪循環に陥る可能性があります。あくまでサポートとして活用し、基本は 夜しっかり眠る ことが大切です。

 

まとめ

パワーナップは、現代の忙しいライフスタイルにおいて 「短時間で効率よくリフレッシュ」 できる究極の習慣といえるでしょう。私も数多くの患者さんやクライアントから、昼の仮眠を取り入れてから「午後の仕事の集中力が大きく上がった」「夜もぐっすり眠れるようになった」などの声をいただいています。

脳は想像以上に疲労を抱えやすい臓器 です。パソコンやスマホから流れ込む情報量が増加し続ける今の時代、短時間の昼寝でこまめに脳をリフレッシュすることは、健康維持や生産性向上のために非常に効果的。昼下がりにどうしても眠くなる方や、夜の睡眠に悩みを抱えている方は、ぜひパワーナップを取り入れてみてください。

短時間のパワーナップが、あなたの午後のパフォーマンスを劇的に変えるかもしれません。
まずはたった15〜20分。ぜひ一度、試してみてはいかがでしょうか?

今回はこの辺で。また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

キーワード
ランキング