札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。近年、世界中で肥満や過体重(BMI25以上)が健康問題として深刻視されています。そんな中、「有酸素運動(エアロビックトレーニング)」が肥満改善や生活習慣病予防に重要な役割を果たすことは広く知られていますが、「週に何分くらいやれば実感できる効果が出るのか?」「強度はどれくらいがいいのか?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
2024年12月にJAMA Network Openに掲載された大規模なメタ分析(116のランダム化比較試験、参加者6880名を対象)では、有酸素運動の“量”と“強度”が、体重やウエスト周囲径、体脂肪などの各指標にどのように影響するのか詳しく検証されました。本記事では、その研究結果や有酸素運動の効果的な取り入れ方についてわかりやすく解説します。
目次
研究の概要
- 対象となった研究数: 116のランダム化比較試験
- 参加者数: 6880名(平均年齢46歳、男女混合だが女性61%)
- 対象者のBMI: 主に過体重(BMI 25以上)または肥満(BMI 30以上)の成人
- 介入内容: 週あたりの有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)を最短8週間以上続けた試験を分析
- 比較対象: 通常の生活やセデンタリー(座りがちな)生活を継続した対照群
「身体活動ガイドライン」では、有酸素運動を週150分以上行うことがしばしば推奨されていますが、今回の研究はさらに「運動量と強度(中等度~高強度)を増やすとどれだけ脂肪や体重が減るのか」を掘り下げています。
結果サマリー:週30分ごとに得られる変化
研究では、「週あたり30分の有酸素運動量が増えるごとに、どれくらい体重・ウエスト・体脂肪が減るか」を分析しました。その主な結果は以下の通りです。
- 体重
- 週30分増えるごとに約0.52kg減少
- 週150分の有酸素運動で約2.8kgの減量が見込まれ、さらに週300分では約4.2kgほど減量が進むと推定。
- ウエスト周囲径
- 週30分増えるごとに0.56cm減少
- 150分以上行うことで、**「最低限クリニカルに重要(約2cm)」**とされるウエストの減少を達成しやすく、300分だとさらに大きな減少も期待。
- 体脂肪(体脂肪率・脂肪量・内臓脂肪・皮下脂肪)
- 週30分増えるごとに体脂肪率0.37%低下
- 特に週150分(中等度強度以上)で「体脂肪率が2%近く低下する」という、臨床的にも意味のある減少が期待できる。
- 内臓脂肪や皮下脂肪面積についても、運動時間が増えるほど線形に減少する傾向。
結論として、「運動量が増えるほど体重・ウエスト・脂肪はより多く減る」という線形(リニア)な関係が大部分で見られました。
有酸素運動の“強度”はどのくらい重要?
本研究では、有酸素運動の強度を「軽度(40~55%の最大心拍数相当)」「中等度(55~70%)」「高強度(70~90%)」で分類していました。その結果、「どの強度でも運動量を増やせば減量効果はみられるが、中等度~高強度を選んだ方が同じ時間でも効果はやや高い傾向がある」という内容が報告されています。
- 中等度強度:やや息が上がる程度のペース(速めのウォーキング、軽いジョギング等)
- 高強度:ジョギングより速いランニングやインターバルトレーニング等、息が上がる運動
ただし、一概に「高強度がいい」と言っても、ケガや体力レベルを考慮する必要があります。自分の体力・健康状態に合わせて無理のない範囲で徐々に強度を上げるのが大切です。
メリットは体重減だけじゃない
この研究では「健康関連のQOL(生活の質)スコア」などを報告した試験も含まれていました。その結果、有酸素運動にはメンタル面・フィジカル面ともにQOLを向上させる可能性が示唆されています。
一方で、軽度~中等度の「筋骨格系トラブル(膝や腰の痛みなど)」が増えるという報告も一部の試験でありました。ただ、これらの有害事象はほとんどが軽度から中等度の症状にとどまっています。筋力不足や体重過多からくる関節への負担が原因になるケースもあるため、最初は短時間のウォーキングやプール運動など、負担の少ない方法で開始するのが安心です。
運動時間の目安:まずは150分、できれば週300分
本メタ分析の結論としては、「週150分以上の中等度~高強度の有酸素運動」でウエスト周囲径や体脂肪の“大きめの”減少が期待できるという点が大きなポイントでした。より大きな効果を期待するなら、週300分(1日45分程度を週5~6日)を目指すのが理想と示唆されています。
◇ 具体的な運動例
- 週150分:
- 1回30分の中等度ウォーキングを週5日
- 軽いジョギングやサイクリングを1回25~30分、週5~6日
- 週300分:
- 1回60分の早歩きを週5日
- または1回45分の中等度~高強度運動を週6~7日
仕事や育児との両立が難しいという声もありますが、ウォーキングやジョギングを短く分割して合計時間を稼ぐ工夫でもOKです。「まずは週150分」という目標から始め、慣れてきたら合計時間・強度を上げる手順がよいでしょう。
注意点について
- 食事やその他の生活習慣との組み合わせ
- 研究の多くは食事療法なしでの有酸素運動を中心に調査しています。食事制限や栄養バランスを調整すると、より効果が高まる可能性があるでしょう。
- 怪我や無理のしすぎに注意
- 特に肥満の方や運動初心者の方は、関節に負担がかかりやすいため、ウォーキングや水中エクササイズなど関節に優しい運動から始めるのが安全です。
- 継続がカギ
- 8週間以上継続した場合が対象でしたが、さらに長期間(半年~1年以上)継続することでリバウンドを防ぎ、より安定した体重・脂肪減少につながります。
- 自分に合った形で計画的に
- 心疾患や糖尿病、高血圧など既往症がある場合には、主治医に相談しながら負荷量・頻度を決めましょう。
まとめ
- 週に30分の有酸素運動量増加につき、体重は約0.52kg、ウエストは0.56cm、体脂肪率は0.37%減少するという結果。
- 特に週150分以上の中等度~高強度の有酸素運動は、ウエスト周囲径や体脂肪を「臨床的に有意」と言えるほど減らす可能性が高い。
- 時間と体力に余裕があれば、週300分(1日45分×週6~7日)を目指すと、さらに大きな減少効果が期待できる。
運動が苦手な方や忙しい方でも、こまめにウォーキングや軽いジョギングを取り入れるところからスタートできます。ストレス解消やQOL向上にもつながりますので、まずはできる範囲で続けてみましょう。もし関節痛などのトラブルが不安な場合は、水泳や水中ウォーキングなど、衝撃を和らげる手段も試してみてください。
**「運動はやればやるほど効果がある」**という結果は嬉しい一方、オーバーワークにも気を配る必要があります。無理のないペースで週150分を目標に、少しずつ「健康的な減量」と「生活の質向上」を目指していきましょう。
いかがだったでしょうか。今回はこの辺で。また次のブログでお会いしましょう。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック。
参考文献
- Ahmad Jayedi, PhD; Sepideh Soltani, PhD; Alireza Emadi, MSc; Mahdieh-Sadat Zargar, MSc; Ali Najafi, MD. “Aerobic Exercise and Weight Loss in Adults: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis.”JAMA Network Open. 2024;7(12):e2452185.
- American College of Sport Medicine (ACSM). Physical Activity Guidelines (関連ガイドライン).