札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。スーパーにさんまが並ぶと、夏から秋への移ろいをはっきり感じます。回遊魚であるさんまは、初秋にかけて南下し、脂がのる時期に店頭へ届きます。昔から庶民の魚として親しまれてきた背景には、価格だけでなく、栄養価の高さがありました。旬のさんまは旨味が濃く、健康に役立つ成分を多く含むため、季節の入り口で日々の食卓を力強く支えます。今回はそんな秋刀魚の栄養価やおすすめの食べ方について内科医の立場から解説してみようと思います。
目次
DHA・EPAを逃さない食べ方の工夫
さんまはDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)が非常に豊富です。生の可食部100gあたりでDHA約2.2g、EPA約1.5gを含み、n-3系脂肪酸としての一日目安量(1.6~2.2g以上)を効率よく満たせます。DHAは血圧や睡眠の質、脳機能の維持に寄与するとされ、EPAは血流を促して動脈硬化や血栓の予防に役立つと考えられています。グリルの網焼きでは脂とともにDHA・EPAが1~2割落ちやすいので、刺身や寿司、ホイル焼き、煮物で“汁ごと”いただくなど、脂を逃さない調理を心がけると摂取効率が上がります。
たんぱく質とビタミン群で“からだ作り”を後押し
さんまは良質なたんぱく質の供給源です。焼いたさんま可食部100gで約23.3gのたんぱく質を摂れ、1食分の必要量をしっかり補えます。ビタミンB群も充実し、特に「造血ビタミン」と呼ばれるB12は青魚の中でも多い部類に入ります。B6はたんぱく質代謝を助けて皮膚・髪の健康に貢献し、B2は脂質や糖の代謝を促して粘膜の保護を支えます。さらにビタミンDが豊富で、カルシウム吸収を高めて骨の形成を助けます。豆腐やチーズ、小松菜などカルシウム食材と組み合わせると、骨の健康をより強力に後押しできます。
新鮮さを見抜く、4つのチェック項目と上手な保存方法
おいしさと栄養を最大限に生かすには、鮮度を見極めます。①下あご先端が黄色い、②黒目が澄み充血がない、③トレーにドリップが溜まらない、④身に弾力があり表面につやがある――この4点を確認してください。購入当日に食べるのが理想ですが、保存する場合は、真水で表面を洗い内臓を除去し、塩水(500mlに小さじ2)で血合いを洗い流して水気を拭き、しっかり包んで冷蔵庫の奥で2日程度、冷凍で1~2週間を目安に保管します。調理前は冷蔵解凍でゆっくり戻し、焼き魚は常温に少し戻してから焼くと中まで均一に火が通ります。
栄養を守る調理のコツと薬味の意味
脂を落としにくいホイル焼きや“汁をいただく”煮物・つみれ汁は、DHA・EPAや水溶性のビタミンB群を無駄にしにくい調理です。骨ごと柔らかく煮込めばカルシウムも取り込みやすくなります。缶詰の煮付けは手軽に“骨ごと”を実現できる選択肢です。定番の塩焼きには大根おろしを添えましょう。大根おろしは脂の重さを和らげ、消化を助ける酵素を含み、焦げに含まれる有害物の影響を減らす食べ合わせとしても理にかないます。網焼きでは脂が落ちやすいため、皮目を守るホイルやシートを活用すると栄養の流出を抑えられます。
今日から作れるおすすめレシピ3選
塩焼き:下処理後、全体に塩を振って10~20分置き、出てきた水分を拭き取ってから焼きます。グリルは予熱して皮をパリッと仕上げ、フライパンは専用ホイルで身崩れと脂流出を防ぎます。
蒲焼き風:開いた身に薄く小麦粉をまぶして焼き、しょうゆ・みりん・砂糖のたれを絡めます。衣がたれを抱え、魚が苦手な方でも食べやすくなります。
南蛮漬け:食べやすく切って下味をつけ、薄衣で揚げて甘酢だし(だし・酢・砂糖・しょうゆ・唐辛子)へ。玉ねぎ・にんじん・ピーマンと一緒に漬けると、骨まで食べやすく、野菜も同時に摂れます。
まるごと旬を味方にする献立とは
さんまのDHA・EPAを狙う日は刺身や寿司、ホイル焼き、煮物で脂を残す工夫を取り入れます。B群の流出を補うには、つみれ汁や炊き込みご飯のように汁や米が栄養を受け止める料理が有効です。骨の健康が気になる場合は、納豆・豆腐・小松菜・チーズなどカルシウム食材と組み合わせて、ビタミンDの相乗効果を引き出します。食後の満足感を高めたいときは、食物繊維の多い副菜(きのこ・海藻・青菜)を添えて血糖の上昇をゆるやかにし、食べ過ぎを防ぎます。
まとめ――秋刀魚をおいしく・無駄なく・健康的に
さんまは、旬の旨味にDHA・EPA、良質なたんぱく質、ビタミンB群、ビタミンDなどの機能性を併せ持つ理想的な秋の主役です。鮮度を見極め、脂と栄養を逃さない調理を選び、汁ごと味わう工夫やカルシウム食材との組み合わせを意識すると、季節の恵みを余すことなく受け取れます。秋の食卓にさんまを賢く取り入れ、味わいと健康の両方を手に入れてください。
いかがだったでしょうか、また次のブログでお会いしましょう
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