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オルフォルグリプロン(orforglipron):経口GLP-1アナログ製剤の新しい治療薬

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。今回はイーライリリーが開発したorforglipron(オルフォグリプロン)についてまとめてみたいと思います。米国糖尿病学会第83回学術集会(ADA2023)で発表された研究により、新規GLP-1受容体作動薬「オルフォルグリプロン」が肥満・過体重者の体重管理に有効であることが示されました。この研究は「The New England Journal of Medicine」にも掲載され、注目を集めています。このオルフォルグリプロンは従来の経口GLP-1アナログ製剤であるリベルサスと違い、内服時の食事制限がありません。現在は第2相試験まで進んでおり今後第3相試験が始まります。日本で使用されるのはまだまだ先になりそうですが、ひと足先にまとめてみようと思います。

Orforglipronの特徴と開発背景

orforglipronは、リリーと中外製薬が共同で開発中の経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬です。従来のGLP-1受容体作動薬はペプチド製剤であり、注射薬として使用されていますが、orforglipronは経口投与が可能である点が画期的です。

リリーはorforglipronの全世界での開発権および販売権を保有しており、中外製薬は上市成功後に売上に応じたロイヤルティを受け取る権利を有しています。2023年12月31日時点で、中外製薬は薬事規制に関わるマイルストン達成を条件として最大1億4,000万ドル、商業的成功を条件として最大2億5,000万ドルを受け取る権利を有しています。

2相臨床試験の結果

カナダのマクマスター大学のSean Wharton氏らによる第2相臨床試験では、orforglipronが肥満および過体重者の体重管理において有効であることが示されました。この無作為化二重盲検試験には、体重関連の合併症を持つ272人の患者(平均年齢54.2歳、女性59%、白人91%、平均BMI37.9)が参加しました。試験では、orforglipronの12mg、24mg、36mg、45mgの各用量またはプラセボが36週間投与されました。

26週時点での体重減少は、orforglipron群で-8.6%から-12.6%の範囲であり、プラセボ群では-2.0%でした。36週時点では、orforglipron群が-9.4%から-14.7%、プラセボ群は-2.3%でした。少なくとも10%の体重減少が見られた割合は、orforglipron群で46%から75%、プラセボ群では9%でした。

有害事象と安全性

主な有害事象は軽度から中等度の消化器症状であり、特に用量漸増中に発生しました。10%から17%の患者が消化器症状により投与を中止しましたが、その他の安全性プロファイルは既存のGLP-1受容体作動薬と同様でした。

まとめと今後の展望

orforglipronは、肥満・過体重者の体重管理において有望な経口非ペプチドGLP-1受容体作動薬です。現行の注射薬と同様の効果を経口投与で得られる可能性があり、患者の負担を軽減することが期待されます。今後の研究で、orforglipronのさらなる効果と安全性が確認されることが望まれます。

糖尿病治療薬としてのorforglipronの進展を引き続き注目し、最新情報を追っていきたいと思います。

 

以下原本となった論文の和訳です。読み飛ばしていただいても構いません。

はじめに

グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト(GLP-1RAs)は、2型糖尿病(T2D)および慢性体重管理のための確立された治療オプションです。これらの治療法は、糖化ヘモグロビン(HbA1c)と体重に有意な効果があり、低血糖のリスクが低く、安全性が確立されています。しかし、現行のGLP-1RA療法は主に注射によるものであり、経口療法の選択肢は限られています。本研究では、新しい経口非ペプチドGLP-1RAであるOrforglipron(LY3502970)の安全性、薬物動態(PK)、および薬力学(PD)を評価しました。

研究デザインと方法

この研究は、多施設、二重盲検、プラセボ対照、無作為化、複数用量漸増試験のフェーズ1b試験です。参加者は、18〜70歳の2型糖尿病患者で、HbA1cレベルが7.0%以上10.5%以下の範囲にあることが条件でした。Orforglipronまたはプラセボを12週間にわたって1日1回投与しました。参加者は無作為に3:1の比率で分けられ、5つの異なる投与レジメンで評価されました。

結果

合計で68名の参加者が研究に参加し、51名がOrforglipronを、17名がプラセボを投与されました。Orforglipron群では、HbA1cが平均1.5%から1.8%減少し、体重が0.24kgから5.8kg減少しました。これに対し、プラセボ群ではHbA1cが0.4%減少し、体重が0.5kg増加しました。主な副作用は消化器系のものであり、主に治療の初期段階で発生しました。Orforglipron för diabetes övervikt och fetma

結論

Orforglipronは、HbA1cおよび体重の有意な減少をもたらし、他のGLP-1RAと一致する副作用プロファイルを示しました。この経口治療は、注射によるGLP-1RAまたは吸収促進剤を必要とするペプチド経口製剤に対する安全で効果的な1日1回の治療代替手段を提供する可能性があります。

考察

本研究は、Orforglipronが2型糖尿病患者において安全で有効であることを示す初期証拠を提供します。特に、Orforglipronは注射なしで経口投与できるため、患者の治療負担を軽減し、治療へのアクセスを改善する可能性があります。今後のフェーズ2試験では、さらに大規模な参加者を対象にOrforglipronの有効性と安全性を検証する予定です。

今回はこの辺で

また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

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