札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。石川啄木は一握の砂の中で「はたらけど はたらけど猶(なお) わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る」と詠っていますが、みなさんは自分の爪を見ることはありますか??爪の健康は体全体の健康状態を反映すると言われています。特に、甲状腺機能低下症においては、爪が薄くなったり、割れやすくなったりする症状が見られることがあります。本記事では、甲状腺ホルモンの不足が爪にどのような影響を及ぼすのか、そのメカニズムを内科医師の立場から解説していこうと思います。
甲状腺ホルモンの役割と爪への影響
甲状腺ホルモンは、細胞の成長や修復、新陳代謝を促進する重要なホルモンです。このホルモンが不足すると、以下のような影響が爪に現れます。
- ケラチン生成の低下 爪はケラチンというタンパク質で構成されています。甲状腺ホルモンが不足するとケラチンの生成が遅くなり、爪が薄く、もろくなります。
- 栄養供給の低下 甲状腺ホルモンの不足により、全身の代謝が低下します。これにより、爪に必要な栄養素や水分の供給が不十分になり、割れやすくなるほか、縦筋が目立つようになります。
- 血行不良 甲状腺機能低下症では血流が滞りやすくなり、爪に十分な酸素や栄養が届かなくなります。その結果、爪の色がくすんだり黄ばんだりすることがあります。
爪の異常が示す健康状態のサイン
爪のトラブルは見た目だけの問題ではなく、体全体の健康状態を反映する重要なサインです。以下のような変化が見られた場合、甲状腺機能低下症が関係している可能性があります。
- 爪が以前よりも割れやすくなった
- 表面に縦筋が目立つ
- 成長が遅くなった
- 色が黄ばんだりくすんだりする
これらの症状に加えて、疲労感や体重増加、寒さに対する過敏さ、肌の乾燥といった他の症状がある場合は、甲状腺機能低下症を疑う必要があります。
甲状腺機能低下症の影響を受けた爪の症状
甲状腺機能低下症の患者さんが経験する爪の異常には、次のようなものがあります。
- 爪がもろくなる 簡単に欠けたり割れたりするため、日常生活において不便を感じることがあります。
- 爪の縦筋が目立つ 爪の表面が滑らかでなくなり、縦方向の筋が目立つようになります。
- 爪の変色 健康的なピンク色から、黄色や灰色っぽい色に変化することがあります。
- 爪の成長の遅れ 通常よりも爪が伸びる速度が遅くなります。
これらの症状が見られた場合、甲状腺機能低下症の可能性を考慮する必要があります。
甲状腺機能低下症の診断と治療
当院では、爪に現れる異常を含む甲状腺機能低下症の早期診断と治療を行っています。
- 血液検査 甲状腺ホルモン(T3、T4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)のレベルを測定し、甲状腺機能の状態を確認します。
- 個別対応の治療 ホルモン補充療法を中心に、患者様一人ひとりの状態に応じた治療を行います。ホルモンバランスが改善されることで、爪の健康も回復していきます。
爪の健康を守るために
爪の変化は病気の兆候である場合がありますが、適切な治療を受けることで改善が期待できます。当院では、甲状腺疾患の診断と治療だけでなく、患者様の生活の質を向上させるためのサポートも行っています。
また、甲状腺疾患は慢性的な病気であるため、治療開始後も定期的なフォローアップが重要です。当院では、定期的な検査を通じて患者様の健康状態をモニタリングし、治療計画を適宜調整しています。
いかがだったでしょうか。今回のブログはこの辺で。また次のブログでお会いしましょう。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉
【参考文献】
・日本甲状腺学会診療ガイドライン2023
・日本皮膚科学会ガイドライン
・厚生労働省 内分泌疾患に関する調査研究
・World Journal of Thyroid Research 2024