札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。皆さんは糖尿病の患者様はがんの発生リスクがが高いということを知っているでしょうか。実際に日本糖尿病学会と日本癌学会が合同で専門家による委員会を設立し、糖尿病とがんの関係について検討を行った結果では、糖尿病とがんには深い関わりがあることがわかりました。今回はそんな糖尿病とがんの関係について糖尿病内科医の目線からまとめてみました。皆様もがん検診や人間ドックの際にぜひご参考にしてください
1 : 糖尿病とがんの関係
糖尿病(特に2型糖尿病)は、神経障害、網膜症、腎症といった細小血管障害のみならず、心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、末梢動脈疾患などの大血管障害も引き起こすことが知られています。また、糖尿病はがんとも深く関わっていることが報告されています。糖尿病患者は、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、乳癌、子宮内膜癌、膀胱癌のリスクが上昇し、前立腺癌のリスクが低下することが報告されています。糖尿病患者がこれらの癌に対して高リスクである理由はいくつか考えられます。今回はその理由や予防方法についてまとめてみました。
2 : 糖尿病ががんリスクを高める理由
糖尿病ががんリスクを高める理由には、いくつかの要因が考えられます。以下にその主要な要因を紹介します。
高インスリン血症
2型糖尿病患者の多くはインスリン抵抗性を持ち、インスリンが効きにくくなっています。このため、血糖値を下げるために膵臓から過剰にインスリンが分泌されます。この高インスリン血症は細胞の増殖を促進し、発がんに関与する可能性があります。
高血糖
高血糖状態は酸化ストレスを引き起こし、DNAにダメージを与えることがあります。これが遺伝子の調節を狂わせ、がんの発生に寄与する可能性があります。
慢性的な炎症
2型糖尿病患者は無症状であっても全身に慢性的な炎症が見られることがあります。慢性炎症は発がんのリスクを高める要因とされています。
3 : 糖尿病患者のがん予防と早期発見
がんは早期に発見することで治療が大きく効果を上げることができます。糖尿病患者は定期的な通院と合わせて、がん検診を積極的に受けることが重要です。厚生労働省が推奨するがん検診には、胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんがあります。
指針で定めるがん検診の内容
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 |
胃がん | 胃部エックス線検査または胃内視鏡検査 | 50歳以上 | 2年に1回 |
子宮頸がん | 視診、子宮頸部の細胞診及び内診 | 20歳以上 | 2年に1回 |
肺がん | 胸部エックス線検査及び喀痰細胞診 | 40歳以上 | 年1回 |
乳がん | 乳房エックス線検査(マンモグラフィ) | 40歳以上 | 2年に1回 |
大腸がん | 便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 |
4 : 糖尿病とがん:生活習慣改善の重要性
糖尿病とがんは、加齢、肥満、不適切な食事、運動不足、喫煙、過剰飲酒といった共通の危険因子を持っています。糖尿病患者は、これらの生活習慣を見直すことでがんのリスクを減少させることができます。
健康的な食事
赤肉や加工肉の摂取を控え、野菜、果物、全粒粉、食物繊維の多い食事を心掛けましょう。これにより、がんと糖尿病のリスクを同時に減らすことができます。
運動
適度な運動は血糖コントロールを改善し、がんリスクも低減します。特に結腸がんや乳がんに対して予防効果があることが報告されています。
禁煙と節酒
喫煙と過剰飲酒はがんリスクを高める主要な要因です。禁煙し、節酒することで、これらのリスクを大幅に減少させることができます。
糖尿病とがんの治療とリスク管理
糖尿病の薬の中には、がんのリスクと関連するものがありますが、現時点で明確な結論は得られていません。治療中の方は主治医とよく相談し、適切な治療とリスク管理を行うことが重要です。
まとめ
糖尿病とがんは密接な関係があり、糖尿病患者はがんリスクが高くなることが報告されています。しかし、生活習慣の改善や定期的ながん検診を受けることで、がんの予防や早期発見が可能です。糖尿病治療と並行して、がん予防のための対策を講じることが、健康維持のためには欠かせません。
糖尿病患者の皆さんは、健康的な生活習慣を取り入れ、定期的ながん検診を受けるようにしましょう。主治医と相談しながら、糖尿病とがんのリスクを管理し、健やかな生活を送るための取り組みを続けていきましょう。
いかがだったでしょうか。今回はこの辺で。また次のブログでお会いしましょう
小野百合内科クリニック 院長
小野渉