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高血圧に嬉しいDASH食とは??医師の目線から徹底解説!!

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんはDASH食をご存知でしょうか。高血圧脳卒中や心筋梗塞、腎障害など多くの合併症を引き起こす主要な危険因子です。日本高血圧学会は食塩摂取量を1日6g未満に制限することを推奨していますが、伝統的な和食の調味(しょうゆ・みそ・塩蔵品)や外食・中食の利用増により、目標達成は容易ではありません。実際に「減塩はおいしくない」「価格が高い」といったイメージが減塩継続のハードルになっていることも示されています。そこで“減らすだけ”から一歩進め、塩分をため込みにくい体内環境をつくる食べ方まで踏み込むのがDASH食の考え方です。今回はそんなDASH食を内科医の目線からわかりやすく解説してみようと思います。

DASH食とは—“組み合わせ”で血圧を下げる食事療法

DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)は、野菜・果物・全粒穀物低脂肪乳製品、豆類、ナッツを増やし、飽和脂肪と砂糖、塩分を控える食事パターンです。初期の臨床試験(NEJM, 1997)で収縮期血圧約11mmHg低下が報告され、その後の無作為化比較試験を統合したメタ解析でも、DASH食は対照食に比べSBP −3.2mmHg、DBP −2.5mmHgの低下を示しました。効果は高血圧の有無にかかわらず得られ、とくに若年層ナトリウム摂取が多い場合で低下幅が大きい点が特徴です。DASHの中核は、カリウム・カルシウム・マグネシウムなど“塩だしミネラル”と食物繊維・良質なたんぱく質を組み合わせて摂ること。単一栄養素では弱い降圧効果が、組み合わせで相乗的に高まります。Five Ways to Control High Blood Pressure | Tallahassee Memorial HealthCare

「日本人向けDASH食」—和食の強みを活かす4つの工夫

アメリカ標準のDASHはシリアルや乳製品比重が高く、そのままでは“続けにくい”人も。そこで和食中心で続けられる日本人向けDASHの開発が進みました。ポイントは(1)出汁と香辛料で満足度を落とさず減塩、(2)日本人になじむ食材と味付けを採用、(3)中高年でも無理なく完食できる量と形態、(4)減塩×DASHで降圧作用を最大化。だし(昆布・かつお)や酢、柑橘、薬味(しょうが・しそ・ねぎ)、香味野菜、きのこ、海藻、小魚、豆腐・大豆製品など“うま味と風味”で塩に頼らない味作りは、日本の食文化がもつ最大の武器です。

 1日1食でも意味がある?—実践性を高めたエビデンス

先行研究(2012年)は1日3食型DASHで降圧を確認しましたが、毎食の完全実践は負担が大きいのが現実です。そこで2016年以降の共同研究では**「1日1食型DASH」を検証しました。結果は、対照より介入群の最終血圧が低く**、さらに**起床時家庭血圧の“日間変動のばらつき”も小さくなりました。血圧は平均値だけでなく変動(ゆらぎ)が臓器障害と関連するため、“安定させる”という意味でも1食DASHの価値は大きい。忙しい方や外食が多い方は、まず「1日1食」「1日1品」**から始め、成功体験を積み重ねるのが継続の近道です。

今日からできる“和のDASH”—ご飯派・パン派・外食の実践術

ご飯派の一例

  • 主食:雑穀米/玄米(食物繊維とミネラル補給)

  • 主菜:青魚(サバ・アジ・イワシ)の塩控えめ焼き or みそを控えた生姜煮(干物より生を)

  • 副菜:ほうれん草や小松菜のごま和えひじきと大豆の煮物(K・Mg・Ca+食物繊維)

  • 汁物:具だくさん味噌汁(具を増やし“汁”は控えめ、だしを利かせる)

  • “ご飯の友”は漬物・佃煮を控え鰹節や小魚、海苔、酢で風味付け。

パン派の一例

  • 主食:全粒粉/ライ麦パン(無塗布が基本。塗るなら植物油少量)

  • たんぱく源:ゆで卵無糖ヨーグルト+果物(“低脂肪”を選択)

  • サラダ:緑黄色野菜+豆・海藻・ナッツをトッピング(ドレッシングは少量

外食のコツ

  • 最初に野菜(Kで“塩だし”を後押し)。サラダはノンオイル/少量ドレッシング

  • 居酒屋は豆腐料理、刺身、湯豆腐、野菜鍋を中心に。塩蔵品・濃いタレは控える。

  • 予防線として、出かける前にバナナ・牛乳・無塩アーモンドで小腹満たし。

  • ビュッフェは野菜→魚→全粒穀物の順で配膳、汁物の汁は少なめ

どうして下がる?—“塩だしミネラル”と脂質のコントロール

  • カリウム(K):細胞内へ入りナトリウム排出を促進。結果的に血液量が減り血圧が下がる。

  • カルシウム(Ca):不足すると血管収縮が強まりやすい“カルシウム・パラドックス”。低脂肪乳製品で適正化。

  • マグネシウム(Mg)血管を拡げ、Kの働きを支え、Na排出を後押し。海藻・豆類・ナッツが豊富。

  • アルギン酸(海藻):体内でNaと結合して排出を助ける性質。

  • 脂質の質飽和脂肪加工肉は控え、**魚由来の不飽和脂肪酸(EPA/DHA)**へ。甘味・清涼飲料も節制。

  • たんぱく質血管をしなやかに保つ材料豆腐・魚・鶏むね・卵を過不足なく。

 安全に続けるための注意—サプリより“食事”、腎機能には要配慮

ミネラルは食事からの摂取が基本。サプリメントで“帳尻合わせ”をする発想は、過剰摂取リスク(特にK)や栄養の偏りを招きます。腎機能が低下している方は高カリウム血症の危険があるため、自己判断のサプリは禁止、必ず主治医・管理栄養士に相談してください。アルコールは男性2杯/女性1杯以下が目安。カフェインは反応に個人差があるため、血圧が上がる自覚があれば控えめに。DASHは“特別食”ではなく日常の食べ方です。味覚は2~3週間で薄味に順応しやすいので、“まずは1食”“まずは1品の薄味化”から始め、成功体験を積み上げましょう。

まとめ—“減らす”から“整える”へ。和食DASHで、無理なく長く

  • 減塩(6g/日未満)+DASHの組み合わせは、平均血圧だけでなく血圧変動の安定にもつながり、臓器保護の観点からも利点があります。

  • 和食の出汁・香味・海藻・豆・小魚を活かせば、“おいしいまま”塩に頼らない味作りが可能。

  • 忙しい人は1日1食DASHから。外食が続くときほど野菜先行・加工品回避でリスクを抑えましょう。

当クリニックでは、医師の診断に基づき管理栄養士による個別栄養指導を行っています。高血圧や合併症の有無、腎機能、ライフスタイルに合わせて実行しやすい“あなた専用のDASHプラン”を一緒に設計します。「まずは1食・1品から」—今日の夕食で始めてみませんか。

いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

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