札幌駅、大通り駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんは足がむくんだことはありますでしょうか。一過性のむくみは長時間の立ち仕事や塩分過多の食事でも起こりますが、慢性的に続く、片足だけが強い、痛みや熱感を伴う場合は体の不調サインです。むくみは血液やリンパなどの体液が皮下に滞る現象で、背景には循環器、腎臓、肝臓、内分泌、栄養、薬剤、感染など多様な要因が潜みます。放置すると皮膚硬化や静脈うっ滞性潰瘍、血栓症などへ進行するおそれがあるため、仕組みと原因を理解し、適切なセルフケアと受診タイミングを押さえておくことが重要です。今回はそんなむくみについて医師の目線から解説してみようと思います。

目次
足の甲がむくむ主な原因
足は心臓から最も遠く重力の影響を受けやすいため、静脈やリンパの還流が滞るとむくみが前面の甲に出やすくなります。長時間同じ姿勢、運動不足、きつい衣類、塩分やアルコール過多、睡眠不足、ストレスなど生活要因は代表的です。月経前のホルモン変動でも一過性のむくみが増えます。カルシウム拮抗薬の一部、ステロイド、NSAIDs、糖尿病薬のピオグリタゾンなどはむくみを助長することがあります。低栄養や急な体重増加も膠質浸透圧や循環負荷に影響し、むくみを悪化させます。
循環器・腎臓・リンパに由来するむくみ
高血圧は末梢血管への負担を高め、心不全ではポンプ機能低下により体液貯留が進み、重力の影響で足背からむくみが現れます。下肢静脈瘤は逆流防止弁の破綻で静脈圧が上がり、夕方の靴のきつさやだるさにつながります。腎疾患では排泄障害やタンパク尿がむくみを招き、ネフローゼ症候群では血清アルブミン低下で水分が血管外へ移動します。リンパ浮腫は術後や放射線治療後などでリンパ流が障害され起こり、進行すると皮膚が硬化して日常生活に支障を来します。

関節・神経・皮膚や感染が関わるむくみ
関節リウマチでは足部の滑膜炎が腫脹と痛みを伴うむくみを生じます。痛風発作は母趾基部の激痛と有熱性腫脹が典型です。糖尿病性神経障害では筋ポンプが弱りうっ滞が助長されます。蜂窩織炎などの細菌感染では発赤、熱感、圧痛を伴い、迅速な抗菌薬治療が必要です。深部静脈血栓症は片脚の急な腫れ、疼痛、熱感が鍵で、肺塞栓に進展すると息切れや胸痛を伴い生命に関わります。この所見があれば直ちに医療機関で評価を受けてください。
検査と診断の流れ
まずは身長体重、血圧、脈拍など基本計測と詳細な問診で発症時期、左右差、誘因、併存症、服薬歴を整理します。血液検査では腎機能や肝機能、アルブミン、炎症反応、甲状腺機能、心不全指標などを確認し、尿検査でタンパク尿の有無を評価します。下肢静脈瘤や血栓疑いには超音波検査が第一選択で、必要に応じてCTで血管やリンパ節を詳しく観察します。原因に応じて弾性ストッキング、薬物療法、カテーテルや血管内治療などを選択します。![]()
家でできる解消法と生活習慣の見直し
軽症で一過性のむくみには筋ポンプを活性化するこまめな運動が有効です。一時間に一度は立ち上がり、つま先立ちとかかと上げ、足首の大きな回旋、足指のグーパー運動を行いましょう。就寝前や入浴後のふくらはぎストレッチは血流改善に役立ちます。弾性ストッキングや足を心臓より高く上げる工夫も有効です。食事では塩分を控え、成人男性は一日七点五グラム未満、成人女性は六点五グラム未満を目安にし、だしや香辛料、酸味で減塩を補います。カリウムを多く含む野菜果物、豆類、きのこ類を適度に取り入れ、ビタミンB群を含む豚肉、卵、大豆、乳製品で代謝を整えます。腎機能に不安がある場合はカリウム制限の要否を医師と相談してください。アルコールは血管拡張と塩分過多のつまみによりむくみを悪化させやすいため量と頻度を見直します。
放置によるリスクと受診の目安
慢性的なむくみは皮膚の色素沈着や硬化、かゆみ、潰瘍につながり、感染の温床にもなります。静脈うっ滞から血栓が形成されると肺塞栓の危険があります。次の症状は速やかに受診すべきサインです。片脚だけの急な腫れや痛み、熱感がある、むくみとともに息切れや胸痛を伴う、発赤や発熱を伴う、数日から数週間で改善しない、全身性のむくみや体重急増、息切れや夜間の呼吸苦がある。自己判断で利尿薬を使うのではなく、原因を特定したうえで適切な治療につなげることが再発予防の近道です。

まとめ
足の甲のむくみは生活習慣由来の一過性から心不全、腎疾患、下肢静脈瘤、リンパ浮腫、感染、血栓症まで幅広い原因で起こります。長引く、片側で強い、痛みや熱感を伴う、呼吸症状を伴うなどのときは早めに医療機関で評価を受けましょう。日常では一時間ごとの脚の運動、ストレッチと弾性圧迫、適切な水分と減塩、アルコールの見直し、十分な睡眠を基本に、むくみと上手に付き合う環境を整えることが大切です。原因に合った対処を行えば多くは改善が期待でき、皮膚合併症や血栓などの重篤化を防げます。気になる症状がある方は放置せず、早期に相談してください。
いかがだったでしょうか。またつぐのブログでお会いしましょう
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉

