札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。1型糖尿病と診断されたらどんな病気か気になりますよね。また医師や栄養士からカーボカウントを勧められたけどよくわからない人も多いのではないでしょうか。今回は1型糖尿病についてとカーボカウントについて、糖尿病内科医の目線からブログにまとめてみました。これを読んで1型糖尿病とカーボカウントについての理解が深まれば幸いです。
1: 始めに
1型糖尿病は、自己免疫機構によって膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンの産生が不足する病気です。この状態により、血糖が慢性的に高い状態が続きます。1型糖尿病は、以前はIDDM(インスリン依存性糖尿病)やI型糖尿病とも呼ばれていましたが、現在では1型糖尿病という名称が一般的です。
病気の発症と地域差
1型糖尿病の発症は地域によって大きな差があり、特に北欧諸国での発症率が高いことが知られています。日本では小児の年齢調整発症率が1.4~2.2人/10万人と比較的低く、男性よりも女性に多く発症する傾向があります。
発症のリスクと原因
1型糖尿病は若年層に多く見られ、発症のピークは思春期にありますが、成人にも発症するケースがあります。この病気の90%が自己免疫性によるもので、特定のウイルス感染や遺伝的要因が関与していることが示唆されています。
2 : 1型糖尿病のタイプ
1型糖尿病は、β細胞の破壊の速さによって、次の3つのタイプに分類されます。
- 劇症1型糖尿病: 発症後約1週間で急速にインスリンが不足し、インスリン依存状態に陥ります。このタイプは最も急激に進行するため、即座にインスリン治療を開始する必要があります。適切な治療が遅れると、「糖尿病ケトアシドーシス」のリスクが増大します。発症が非常に速いため、直近1〜2ヶ月のHbA1cの値が比較的低く、7%を超えないことが多いです。
- 急性発症1型糖尿病: 発症から約3ヶ月以内にインスリンの枯渇が見られ、インスリン治療が必須となります。血液検査で自己抗体がしばしば検出されることが特徴です。
- 緩徐進行1型糖尿病: 数年にわたって徐々にインスリンの分泌が減少していくタイプで、しばしば2型糖尿病と誤診されることがあります。自己抗体の検出により正確な診断が行われます。
各タイプの特徴を理解し、適切な診断と治療が行われることが重要です。
合併症のリスク
適切な血糖管理がなされない場合、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害などの重篤な合併症のリスクが高まります。併せて、心疾患や腎疾患など、運動制限を要する他の疾患のリスクも考慮する必要があります。
このように、1型糖尿病はその治療や管理が生涯にわたり続くものであり、患者と医療提供者の間での連携と理解が極めて重要です。
症状と治療
典型的な初期症状には口渇、多飲、多尿、体重減少があります。治療にはインスリン補充が必要不可欠で、インスリン治療や薬物療法(SGLT2阻害薬、α-グルコシダーゼ阻害薬)が利用されます。特にインスリン療法では、生理的なインスリン分泌パターンに合わせた管理が行われます。
生活と管理
糖尿病教育と適切な医療チームのサポートを受けることが重要です。食事療法や運動療法も治療の重要な部分であり、適切な血糖コントロールを維持することで健康な生活を送ることが可能です。
3: カーボカウントについて
カーボカウントとは、特に1型糖尿病患者にとって重要な血糖管理法です。これは食事に含まれる炭水化物の量を計算し、必要なインスリン量を適切に調整する方法です。カーボカウントを理解し、適切に実践することで、患者は食事の自由度を高めつつ、血糖値を良好に保つことが可能になります。
血糖値への影響
食品の中で炭水化物は血糖値を急激に上昇させる主要因です。適切なカーボカウントにより、食後の血糖値の急激な上昇を防ぐことができ、これにより日常生活での血糖値の安定に寄与します。
4: 実践のポイント
- 食品の炭水化物量を学ぶ:食品パッケージの栄養成分表示を確認するか、専門家に相談して、各食品に含まれる炭水化物の量を把握します。
- 計算を習慣化する:食事の前には必ず炭水化物の量を計算し、必要なインスリン量を導き出します。
- 継続的な学習と調整:カーボカウントは一度覚えれば終わりではありません。体調や生活習慣の変化に合わせて、インスリンの量も調整する必要があります。
1型糖尿病とカーボカウントについてのまとめ
1型糖尿病は、自己免疫反応により膵臓のインスリン産生細胞が破壊される病気で、主に若年層で発症します。インスリンの製造がほぼ停止するため、生涯にわたってインスリン注射が必要です。血糖管理は日々の食事や活動に応じてインスリン量を調整することが重要で、カーボカウントが役立ちます。カーボカウントは、1型糖尿病患者にとって自由で健康的な食生活を送るための鍵となります。初めは複雑に感じるかもしれませんが、習慣として根付かせることで、より良い血糖コントロールが可能になります。何より、食べたいものを食べながら血糖値を管理できることが、カーボカウントの最大の利点です。
今回はこの辺りで、また次のブログでお会いしましょう。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉