札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。健康診断で尿蛋白が陽性となり再検査となった方もいるかもしれません。尿蛋白とは、本来は尿の中にほとんど出てこないはずのタンパク質が、検査で検出されている状態を指します。腎臓には糸球体と呼ばれる細かなフィルターがあり、ここで血液がろ過されます。老廃物や余分な水分は尿として排泄されますが、タンパク質のような大きな分子は体に必要なため、通常は血液側に戻されます。ところが、このフィルター機能に異常が起こると、血液中のタンパク質が尿に漏れ出し、尿蛋白陽性と判定されます。健康な人でも、尿中のタンパク質はごくわずかで、一般的な検診の検査では検出されない程度です。そのため、検診の結果に尿蛋白の文字が出てきたら、腎臓からの小さな SOS と受け止めて、軽く流さずに意味を理解することが大切です。今回はそんな尿蛋白について医師の目線から解説してみようと思います。
目次
検診結果の見方 尿蛋白のプラスはいくつから要注意か
健康診断で行われる尿検査は、試験紙に尿をひたし、色の変化でタンパク質の濃さを判定する定性検査です。結果は一般的に マイナス、プラスマイナス、1プラス、2プラス、3プラス、4プラスといった段階で表され、数字が大きいほど尿中のタンパク濃度が高いことを示します。マイナスはほぼ正常で、プラスマイナスはごく軽い変化です。一方で、1プラス以上になると尿蛋白陽性と考え、原因を調べることが勧められます。特に2プラスや3プラスが続く場合は、将来の慢性腎臓病や末期腎不全(透析が必要な状態)のリスクが高くなることが複数の研究で示されています。また、尿蛋白だけでなく尿潜血も同時に陽性の場合は、腎臓の糸球体の炎症など、より重い病気が隠れている可能性もあるため、早めの受診が重要です。

一時的な尿蛋白と病気が原因の尿蛋白を見分ける
尿蛋白が出たからといって、必ずしも重い腎臓病とは限りません。原因は大きく、生理的な変化による一時的な尿蛋白と、病気による病的な尿蛋白の二つに分けられます。一時的な尿蛋白の代表が、発熱時、激しい運動の直後、強い精神的ストレスがかかったとき、脱水気味のときなどです。このような場面では、一時的に腎臓への負担が増え、フィルターを通り抜けてしまうタンパク質が増えることがありますが、状態が落ち着けば自然に陰性に戻ることが多いです。また、若い人に多い起立性蛋白尿では、横になっているときの早朝尿では陰性で、日中活動しているときの尿だけ陽性になります。腎機能が正常なことがほとんどで、成長とともに改善することが多いとされ、定期的な観察でよいケースが大半です。一方で、再検査でも尿蛋白が続く場合、糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎、高血圧性腎障害、ネフローゼ症候群、多発性骨髄腫などの病気が背景にある可能性があります。単に体調のせいと決めつけず、どのタイプに当てはまるのか医療機関で確認することが大切です。
尿蛋白から分かる腎臓病 慢性腎臓病と心血管リスク
持続する尿蛋白は、腎臓病の早期サインであると同時に、将来の重大な病気のリスクを教えてくれる指標でもあります。慢性腎臓病は、腎臓の働きが少しずつ落ちていく病気で、三か月以上腎機能が低下した状態や、尿蛋白などの腎障害のサインが続くことで診断されます。初期にはほとんど自覚症状がなく、だるさやむくみ、息切れなどに気づいた頃には、すでに病気が進行していることも少なくありません。主な原因は糖尿病や高血圧で、これらが長く続くと腎臓の血管が傷つき、糸球体のフィルター機能が低下していきます。さらに、尿蛋白が多い方は、将来心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患を起こすリスクも高いことがわかっています。つまり、尿蛋白は腎臓だけでなく、全身の血管の健康状態を映し出す鏡とも言えます。透析にならないためにはもちろん、心臓や脳の病気を予防するためにも、尿蛋白というサインを見逃さず、早い段階で対策を始めることが重要です。
尿蛋白を指摘されたら 受診の目安と検査の流れ
検診で初めて尿蛋白を指摘された場合、まずは検査前に激しい運動をしていなかったか、発熱や強いストレスがなかったか振り返ってみてください。そのうえで、数日から数週間あけて、できれば朝一番の尿で再検査を受けることが勧められます。再検査でもプラスが続く場合や、最初から2プラス以上の場合、尿蛋白と尿潜血が同時に陽性の場合、高血圧や糖尿病をすでに指摘されている場合は、自己判断せず医療機関を受診しましょう。医療機関では、まず再度の尿検査で尿蛋白の有無や程度、血尿や白血球の有無(尿沈渣)を確認し、必要に応じて尿蛋白定量検査や尿蛋白クレアチニン比で一日にどのくらいのタンパク質が出ているかを推定します。あわせて血液検査で腎機能(クレアチニン、推算糸球体濾過量)、血糖値、脂質、炎症反応などを調べ、腹部エコーで腎臓の大きさや形、結石や腫瘍の有無を確認します。原因がはっきりしない場合や、重い病気が疑われる場合には、腎生検といって腎臓の組織を一部採取して詳しく調べる検査が行われることもあります。

腎臓を守るためのまとめ
尿蛋白は、腎臓のフィルター機能が傷み始めたときに現れる、早期の警告サインです。一時的な体調の変化で出る生理的蛋白尿もありますが、再検査でも持続したり、2プラス以上が続く場合、尿潜血を伴う場合、高血圧や糖尿病を持っている場合などは、慢性腎臓病や糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧性腎障害などが隠れている可能性があります。腎臓は沈黙の臓器と呼ばれ、症状が出る頃にはかなり進行していることも少なくありません。だからこそ、健康診断で尿蛋白を指摘された時こそが、腎臓を守るための大きなチャンスです。医療機関で必要な検査を受け、原因や重症度をきちんと把握し、減塩や禁煙、適度な運動などの生活習慣の見直し、必要に応じた薬物療法を組み合わせることで、腎機能の低下をゆるやかにし、透析や心血管疾患のリスクを減らすことが期待できます。検査結果に不安を感じたときこそ、一人で悩まず専門家に相談し、自分の腎臓を長く守るための一歩を踏み出していきましょう。
いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉

