札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。雪解けが待ち遠しい季節ですが、冬場の運動不足で足腰の衰えを感じている方も多いのではないでしょうか。診察室で運動をお勧めすると、ジムはハードルが高いし、ジョギングは膝が痛くて続かないという声をよく耳にします。最新の医学研究において、太極拳は心と体、そして脳までも鍛える最強のエクササイズであることが証明されています。今回は、激しい動きなしで健康寿命を延ばす太極拳の医学的効果について内科医の目線から解説します。

目次
転倒リスクを劇的に下げるバランス能力の向上効果
高齢の方にとって、転倒による骨折は寝たきりの最大の原因となり得る恐ろしい事故です。散歩だけではなかなか鍛えられないのがバランス感覚ですが、太極拳はこの点において素晴らしい効果を発揮します。2017年の大規模なメタ分析によると、太極拳を継続的に行ったグループは、そうでないグループに比べて転倒の発生率が43パーセントも減少し、骨折などの怪我のリスクも50パーセント低下したことが報告されています。ゆっくりとした重心移動を繰り返す動作は、体幹を安定させ、とっさの時に体を支える筋肉を効率よく鍛えることができるため、まさに転ばない体を作るための天然の治療と言えるでしょう。
動く瞑想として自律神経を整えストレスを解消する
太極拳は別名、動く瞑想とも呼ばれており、メンタルヘルスへの効果も非常に高いことが分かっています。2010年の研究では、太極拳がストレスや不安、うつ症状を有意に改善させることが示されました。現代人は常に交感神経が優位になりがちですが、太極拳特有の深くゆったりとした呼吸と流れるような動きの連動は、副交感神経を優位にし、乱れた自律神経のバランスを整えてくれます。激しい運動は逆に疲れてしまうという方でも、太極拳なら心身をリラックスさせ、夜の睡眠の質を高める効果も期待できます。
脳への血流を増やし認知症を予防する脳トレ効果
体を動かすことが脳に良いのは周知の事実ですが、太極拳は単なる運動以上に高度な脳トレの要素を含んでいます。2014年の研究では、太極拳が記憶力や実行機能といった認知機能を改善させることが明らかになりました。太極拳は、次の動きを記憶し、呼吸を合わせ、重心をコントロールするという複数の作業を同時に行うデュアルタスク運動です。頭で考えながら体を動かすというこのプロセスが、脳の前頭葉を強く刺激し、加齢に伴う認知機能の低下を食い止める防波堤となってくれます。
年齢や体力を問わず誰でも始められる安全性
太極拳はジャンプやダッシュといった関節への衝撃が大きい動作がないため、膝や腰に不安がある方でも無理なく始めることができます。特別な道具も広い場所も必要なく、自宅の畳一畳分のスペースがあれば実践可能です。まずは動画サイトを見ながら見よう見まねで動いてみるだけでも構いませんし、地域の教室に通えば仲間もできて一石二鳥です。1日5分からで良いので、生活の一部に取り入れてみてください。
患者様からよくあるQ&A
Q. 膝が痛いのですが、やっても大丈夫でしょうか。
A. 太極拳は膝への負担が少ない運動ですが、深く腰を落とす動作などで痛みを感じる場合は無理をしないでください。まずは立ったままの姿勢で、腕の動きと呼吸を合わせることから始めるだけでも十分な効果があります。ご自身の痛みのない範囲で、気持ちよく動くことを優先してください。
Q. どのくらいの頻度で行えば効果が出ますか。
A. 研究では週に2回から3回程度の頻度で行われていることが多いですが、最も大切なのは継続することです。毎日5分でも良いですし、週に1回教室に通うのでも構いません。歯磨きのように習慣化することで、徐々にバランス感覚や呼吸法が身についてきます。
Q. 特別な服や靴を用意する必要はありますか。
A. 専用の胴着などは全く必要ありません。Tシャツやジャージなど、動きやすい服装であれば何でも大丈夫です。靴は底が平らで滑りにくい運動靴がお勧めですが、自宅で行う場合は裸足や靴下でも行えますので、気軽な気持ちで始めてみてください。
まとめ
激しい運動だけが健康作りではありません。太極拳のような静かでゆっくりとした運動が、転倒を防ぎ、心を癒やし、脳を若々しく保つという医学的なデータは、運動に苦手意識を持つ多くの患者様にとって希望となるはずです。雪解けを待つ今の時期こそ、室内でできる太極拳を始めてみてはいかがでしょうか。体が軽くなり、気分が前向きになる感覚をぜひ体験してください。何か不安な点があれば、いつでも外来でご相談に乗ります。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック 院長 小野渉
参考文献

