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腎臓病でもトマトは食べていい?気になるカリウム量と安全な食べ方を解説

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。毎日の食卓に彩りを添えるトマトは、サラダや煮込み料理など使い勝手が良く、健康野菜の代名詞のような存在です。しかし、腎臓の機能が低下している方にとっては、その付き合い方に少し工夫が必要な食材でもあります。体に良いはずの野菜が、なぜ腎臓病の方には注意が必要なのでしょうか。今回は、トマトに含まれる栄養素と腎臓への影響、そして安心して美味しく食べるための具体的な工夫について、内科医の目線から詳しく解説していきます。トマトの種類]大&中玉編!特徴や、おいしい簡単レシピも紹介|カゴメ株式会社

トマトに含まれる栄養素と体に嬉しい働き

まずはトマトが持つ本来のパワーについてお話ししましょう。トマトにはビタミンCやビタミンE、そして葉酸といった重要な栄養素が豊富に含まれています。ビタミンCは皮膚や粘膜を健康に保つだけでなく、ストレスや風邪への抵抗力を高める働きがありますし、強い抗酸化作用によって動脈硬化の予防や老化防止も期待されています。また、葉酸は赤血球を作ったり細胞の生まれ変わりを助けたりするため、体の代謝にとって欠かせない成分です。

美味しいトマトを選ぶ際は、皮の色が均一で濃く、ヘタが濃い緑色をしていて、手に取ったときにずっしりと重みを感じるものを選ぶのがポイントです。これほど栄養豊富なトマトですが、腎臓病をお持ちの方には、ある一つの成分が大きな課題となります。それが「カリウム」です。

腎臓病患者さんが直面するカリウム排出の課題

カリウムは神経の伝達や筋肉の動きに関わる重要なミネラルであり、健康な腎臓であれば、余分なカリウムは尿として体外へ排出され、体内の濃度が一定に保たれます。しかし、腎機能が低下してくると、この排出能力が弱まってしまい、体の中にカリウムが溜まりやすくなります。血中のカリウム濃度が高くなりすぎると「高カリウム血症」となり、不整脈や心停止といった命に関わる事態を引き起こすリスクが生じます。

慢性腎臓病(CKD)のステージが進むにつれて、カリウム摂取の制限は重要度を増していきます。例えば、ステージG3b(中等度低下)以降では1日2000mg以下などの制限が推奨されることが一般的です。トマトは野菜の中では極端にカリウムが多いわけではありませんが、食べる頻度が高かったり、濃縮された加工品を摂取したりすることで、気づかないうちに摂取過多になる可能性があるため注意が必要です。腎臓病の基本知識:ステージ、原因、検査 – 専門医が徹底解説 | 赤羽もりクリニック

トマトを安全に楽しむための適量と選び方

では、具体的にどのくらいの量なら安心なのでしょうか。透析患者さんやカリウム制限がある方の場合、1日の目安量は大玉トマトで3分の1から半分程度(約80g)、ミニトマトであれば4個から5個程度とされています。トマトは水分が多く口当たりが良いため、ついつい食べ過ぎてしまいがちですが、この目安量を意識することが大切です。

また、トマトジュースやトマト缶などの加工品には特に注意が必要です。これらは生のトマトに比べて水分が少ない分、同じ重量でもカリウムが凝縮されており、含有量が高くなる傾向にあります。さらに、製品によっては食塩が添加されているものもあります。腎臓病治療では塩分制限(1日6g未満が目標)も非常に重要ですので、加工品を利用する場合は「食塩無添加」のものを選び、料理の調味料として活用することをお勧めします。

カリウムを減らす調理法の工夫と限界

カリウムは水に溶け出す性質があるため、野菜を食べる際は「茹でこぼす」「水にさらす」といった下処理が有効です。ほうれん草やイモ類などは、切ってから茹でたり水にさらしたりすることで、カリウムを30パーセントから50パーセント程度減らすことができます。

しかし、トマトに関しては生で食べることが多く、茹でこぼしなどの処理がしにくい野菜です。そのため、調理法でカリウムを減らすことよりも、「食べる量を守る」ことが最も確実な管理方法となります。もし加熱調理に使う場合は、細かく切って煮込み料理などにし、具材として楽しみつつも、カリウムが溶け出した煮汁は残すようにすると良いでしょう。また、トマトの持つグルタミン酸などの「うま味」成分は、減塩料理の物足りなさを補う強力な味方になります。酸味やうま味を上手に活かすことで、塩分を控えても満足感のある食事を作ることが可能です。

栄養バランスを整えるおすすめレシピ①:鮭のトマト煮

ここで、腎臓病の方でも安心して食べられるおすすめレシピをご紹介します。一つ目は「鮭のトマト煮」です。鮭とトマト、それぞれのうま味成分が合わさることで、少ない塩分でも深い味わいを楽しめる一品です。

材料は2人分で、生鮭100g、トマト100g、玉ねぎ40g、ぶなしめじ20gを使用します。作り方は、まず一口大に切った鮭に小麦粉をまぶし、バターを熱したフライパンで焼きます。そこに、あらかじめ茹でてカリウムを減らした玉ねぎとぶなしめじ、そして角切りのトマトを加えます。味付けはコンソメ小さじ1/2と料理酒小さじ2のみですが、トマトの水分で少し煮込むことで、素材の味が凝縮されます。仕上げに黒こしょうを振れば完成です。1人分のカリウムは約370mg、食塩相当量は0.7gに抑えられます。

栄養バランスを整えるおすすめレシピ②:トマトとパプリカのごま和え

二つ目のレシピは、さっぱりとした副菜「トマトとパプリカのごま和え」です。お酢の酸味とごまの風味を効かせることで、調味料を減らしても美味しくいただけます。

材料はトマト100gとパプリカ20gです。パプリカは薄切りにしてからサッと茹でることで、カリウムを減らす処理を行います。トマトは食べやすい大きさに切りましょう。味付けには、すりごま大さじ1強、だし醤油小さじ1強、穀物酢小さじ1を混ぜ合わせます。ここに野菜を加えて和えるだけで完成です。だし醤油を使うことで、普通の醤油よりも塩分を抑えつつ、だしのうま味を取り入れることができます。1人分のエネルギーは48kcal、カリウムは170mg、食塩相当量はわずか0.3gです。お好みでワサビを少し加えると、アクセントになって食が進みます。

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服用中の薬とカリウム値の意外な関係

食事管理を徹底しているのにカリウム値が下がらない場合、服用しているお薬が影響している可能性があります。高血圧の治療でよく使われる「ACE阻害薬」や「ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)」、あるいは一部の利尿薬などは、副作用として血中のカリウム濃度を上昇させることがあります。

また、健康のために良かれと思って飲んでいるサプリメントや青汁、野菜ジュースなどが、予期せぬカリウム摂取源になっているケースも少なくありません。ご自身の判断で食事制限を厳しくしすぎたり、逆にサプリメントに頼りすぎたりせず、必ず主治医や薬剤師と相談しながら、薬の内容と食事のバランスを見直していくことが大切です。

さいごに:正しい知識で食事を楽しむために

腎臓病の食事療法は、単に「食べてはいけないもの」を増やすことではありません。トマトのようにカリウムを含む食材であっても、量や調理法、食べ合わせを工夫することで、季節の味を楽しむことは十分に可能です。大切なのは、ご自身の腎機能の状態(ステージ)を正しく把握し、それに見合った適切なコントロールを行うことです。

「何を食べたらいいのか分からない」「献立を考えるのが辛い」と悩まれている方は、ぜひ一度、赤羽もりクリニックにご相談ください。当院では腎臓専門医と管理栄養士が連携し、患者さんのライフスタイルや好みに合わせた、無理のない具体的な食事アドバイスを行っています。食事は毎日のことですから、一人で抱え込まず、プロの力を借りて、笑顔で食卓を囲める生活を目指していきましょう。

当院では専門の資格を持った管理栄養士による栄養指導をおこなっております。

興味のある方は是非ご来院ください

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

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