札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんはチラーヂンという薬を知っていますか??チラーヂンはレボチロキシンという甲状腺ホルモンを補う薬で、主に甲状腺機能低下症の治療に用います。体内にもともとあるホルモンと同等の成分を補充するため、適切な用量で内服している限り副作用は少ないのが特徴です。一方で過量になると甲状腺機能亢進に似た症状が現れ、添加物に対する過敏反応や肝機能障害が報告されることもあります。そんなチラーヂンについて今回は内科医の目線から解説していこうと思います。
目次
よくみられる副作用とセルフチェック
日常診療で遭遇しやすい副作用として、動悸や脈拍増加、期外収縮などの不整脈、頭痛、めまい、不眠、手指のふるえ、発汗増加、いらだちや不安感、下痢や食欲低下、体重減少、皮疹やかゆみがあります。これらは用量過多や吸収のばらつきで出やすく、症状が続く場合は自己判断で中止せず医師に相談し、用量調整や服用タイミングの見直しを行います。採血ではAST、ALT、γ-GTPなどの肝機能検査値の軽度上昇が見つかることもあり、開始後しばらくは定期的な検査が勧められます。
注意が必要な重篤な副作用
頻度は高くありませんが、見逃してはいけない副作用があります。胸痛や締め付け感を伴う狭心症、うっ血性心不全、著明な不整脈、発熱と倦怠感を伴う肝機能障害や黄疸、血圧低下や尿量低下、呼吸困難、ショックなどです。副腎皮質機能不全が背景にあると副腎クリーゼを誘発し、意識障害や重篤な循環不全に至ることがあります。これらの症状が出た場合は直ちに受診し、必要に応じて休薬や専門的治療を行います。
副作用を起こしやすい背景と開始時の工夫
甲状腺ホルモンは心臓を刺激するため、高齢者や冠動脈疾患の可能性がある人では少量開始とゆっくりと増量するのが安全です。潜在的な心筋虚血があると症状を顕在化させることがあるため、必要に応じて心電図や心エコーを確認します。妊娠中は胎児の発達に甲状腺ホルモンが重要で、原則として継続投与し、妊娠期に合わせて目標TSHを管理します。授乳中は通常継続可能ですが、いずれも主治医の指示に従います。
飲み合わせと吸収低下への対策
チラーヂンは飲み合わせの影響を受けやすい薬です。ワルファリンの作用増強、ジギタリスの作用減弱、交感神経刺激薬の作用増強といった相互作用が知られ、併用薬の用量調整が必要になることがあります。吸収を妨げるものとして、コレスチミドやコレスチラミンなどの陰イオン交換樹脂、セベラマー、一部の制酸薬、鉄剤やカルシウム製剤、亜鉛含有サプリメントが挙げられます。食品では大豆製品、乳製品、食物繊維、コーヒーが影響しやすいため、服用は食前30分以上もしくは就寝前の空腹時とし、前後3〜4時間はこれらの薬剤やサプリを避けると吸収の安定に役立ちます。
添加物による過敏症と肝障害への備え
甲状腺ホルモンそのものへのアレルギーは稀ですが、錠剤の添加物に反応して発疹やかゆみ、薬剤性肝障害を来すことがあります。皮疹や原因不明の肝機能上昇が続く場合は、同成分の散剤や別ロット、別製剤への切り替えで改善することがあります。
体重減少と代謝に関する誤解
チラーヂン内服後に代謝が上がり体重が減ることがありますが、これは治療量の調整途上や過量による現象であり、減量目的の使用は推奨されません。むやみに用量を増やすと不整脈や骨量低下など長期的な健康被害につながるため、体重変化が気になる場合は自己調整せず受診して血液検査を受けましょう。
受診の目安と安全に続けるコツ
次の症状は受診のサインです。強い動悸や胸痛、息切れ、ふらつきや失神、持続する発熱や著しい倦怠感、発疹や全身のかゆみ、下痢や嘔吐の持続。服用は毎日同じ時刻に1日1回、飲み忘れに気づいたら1回分のみ服用し、次回と重なる場合は忘れた分を足さないことが重要です。採血によるTSHとFT4を定期チェックし、症状と検査の両面から用量を微調整します。
いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう
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