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検尿でここまで分かる!――糖尿病と尿検査の関係を医師が徹底解説

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。尿検査は、腎臓が血液をろ過して作った尿に含まれる成分をチェックする、とても簡便で情報量の多いスクリーニング検査です。糖尿病が疑われるとき、腎臓・尿路のトラブルが心配なとき、尿検査はまず手がかりを与えてくれます。健診の定性検査では「(-)/(±)/(+)~(3+)」のように判定され、異常の持続や強さで受診の緊急度が変わります。特に糖尿病では、血糖のコントロール状態や合併症(腎症)が尿に早く反映されるため、定期的な尿チェックが“将来のリスクを下げる最重要検査”になります。今回はそんな尿検査について糖尿病内科医の目線から解説しようと思います。

主要項目の見かた:尿蛋白・尿糖・pH・ケトン体

尿蛋白:本来は陰性となります。陽性(+)が続くと腎臓の糸球体や尿細管にダメージが疑われ、糖尿病腎症でも出現しやすい所見です。強陽性(2+以上)や尿潜血の同時陽性では精密検査が必要です。
尿糖:本来は陰性であり、血糖が腎で再吸収できる上限(腎閾値)を超えると尿に糖が漏れます。一般に血糖が160~180 mg/dLを超えるあたりで陽性化しやすく、「最近のある時間帯で高血糖があった」サインになります。ただし腎性糖尿など、糖尿病以外の要因で出ることもあります。
pH(ペーハー):尿が酸性~アルカリ性のどちらに傾いているかを示します。食事・脱水・感染などで変動します。
尿ケトン体:脂肪分解が進んだサイン。糖尿病で高血糖かつケトン体陽性は要注意で、インスリン不足による**糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)**を示すことがあります。口渇・多尿・強い倦怠感・吐き気嘔吐・深く大きい呼吸(クスマウル呼吸)などがあれば救急受診レベルです。タンパク質制限を行っている場合にもみられることがあります。

糖尿病と尿の“変化”――疑うべきサイン

高血糖が続くと、(1)尿量・回数の増加(浸透圧利尿)、(2)無色透明に近い薄い尿(多飲の反映)、(3)泡立ちやすい尿(糖や蛋白混入で持続する泡)、(4)排尿痛・残尿感(免疫低下で尿路感染を合併)といった変化がみられます。これらは“糖尿病の可能性”を示す手がかりにはなりますが、尿だけで確定診断はできません。尿所見に加えて**血液検査(空腹時血糖、随時血糖、75gOGTT、HbA1c)**を組み合わせて評価します。

腎症を早期に見つける鍵:尿中微量アルブミン

糖尿病腎症は初期ほど自覚症状に乏しい一方で、尿中微量アルブミンはごく早期から上昇する“最前線のSOS”。年1回以上の測定で、進行度の把握と治療(血糖・血圧・脂質・SGLT2阻害薬など)の評価がしやすくなります。持続的な蛋白尿(定量:尿蛋白/Cr比の上昇)や腎機能悪化(eGFR低下)があれば、腎臓内科と連携して精密検査を進めます。

「尿糖=糖尿病」とは限らない:主な鑑別

尿所見の背景は一つではありません。

  • 腎性糖尿:血糖は正常だが、近位尿細管の再吸収低下で尿糖が出やすい。通常は経過観察中心です。

  • 腎不全・糸球体腎炎・ネフローゼ:蛋白尿主体、潜血や円柱出現、浮腫・高血圧を伴うこともあります。

  • 膵炎・膵疾患:インスリン分泌低下で高血糖・尿糖。腹痛や消化不良を伴いやすい。
    所見が続く/強いとき、あるいは症状を伴うときは、消化器内科腎臓内科/泌尿器科での評価が適切です。

異常が出たときの次の一手――受診先と検査の流れ

  • 尿糖・高血糖が関与しそう:血液検査(HbA1c、血糖)、尿中アルブミン、腎機能、必要に応じて経口糖負荷試験を行います。

  • 蛋白尿・潜血が主体:腎臓内科へ。尿定量(尿蛋白/Cr比)、尿沈渣、血液検査(Cr、eGFR、免疫学的検査など)、腎エコー。必要なら腎生検で確定診断を行います。

  • 潜血(特に持続)や肉眼的血尿:まず泌尿器科へ。尿沈渣・尿細胞診・腎膀胱エコー、必要に応じてCTや膀胱鏡で腫瘍・結石を除外。
    ポイント:健診の判定が「要精査」なら自己判断せず受診。2+以上の蛋白尿、潜血の持続、尿糖の反復陽性は見逃さないこと。

正しい採尿と日常の注意

早朝の中間尿を清潔に採ること、規定量を守ることが基本です。ビタミンC大量摂取は尿糖などの反応に影響しうるため前日は控えめに。激しい運動・発熱・強いストレス・月経前後は一過性異常の原因になります。結果に迷ったら再検査で確認しましょう。


まとめ

尿検査は、高血糖の痕跡(尿糖)や腎臓ダメージの早期サイン(微量アルブミン・蛋白尿)感染や結石、腫瘍まで幅広く察知できる“体のダイジェスト版”。ただし尿だけで糖尿病は確定しません。陽性が続く、複数項目が異常、症状を伴う——そんなときは速やかに専門医へ。早期発見・早期介入が、合併症と将来の透析リスクを大きく下げます。尿の小さな変化を見逃さず、結果を賢く活用していきましょう。

いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

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