札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。日本の食卓において不動の人気を誇るマグロは、単なる美味な食材というだけでなく、医学的な観点からも非常に優れた栄養学的特性を持っています。多くの人が好むトロのとろけるような脂や、さっぱりとした赤身には、それぞれ異なる健康効果が秘められているのです。本記事では、最新の研究論文や栄養学的なデータを基に、マグロに含まれる脂肪酸の秘密や、缶詰製品の賢い選び方、そして水銀リスクに対する正しい知識まで、内科医の視点で詳しく解説していきます。

目次
脂身に豊富なDHAとEPAがもたらす血管と脳への医学的恩恵
マグロの栄養価を語る上で欠かせないのが、脂身であるトロに豊富に含まれる不飽和脂肪酸の存在です。特にDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸)は、人間の体内では合成することができない必須脂肪酸であり、食事から積極的に摂取する必要があります。DHAは脳細胞の膜を柔らかくし情報の伝達をスムーズにする働きがあるため、認知機能の維持や学習能力の向上に寄与すると考えられています。一方、EPAには血小板の凝集を抑えて血液をサラサラにし、血栓の形成を防ぐほか、血中の中性脂肪を低下させる作用が認められています。これらの成分は赤身にも含まれていますが、含有量は脂の乗ったトロの方が圧倒的に多く、少量で効率的に摂取することが可能です。ただし、これらの脂肪酸は酸化しやすく加熱によって失われやすいため、刺身や寿司として生で食べるのが最も効率的な摂取方法と言えるでしょう。
缶詰選びで変わる脂肪酸バランスと水煮缶が推奨される理由
手軽なタンパク源として親しまれているツナ缶ですが、その製品選びによって摂取できる脂肪酸の質が大きく異なることが研究で明らかになっています。米国で行われた研究によると、市販のツナ缶には水煮とオイル漬けがありますが、一般的な健康維持を目的とする場合は水煮缶の方が推奨されます。オイル漬けのツナ缶には大豆油などの植物油が使用されていることが多く、これらはオメガ6脂肪酸であるリノール酸を多く含みます。現代の食生活はオメガ6過多になりがちであり、炎症を抑えるオメガ3とのバランス(n-6:n-3比)を悪化させる可能性があります。実際に水煮缶ではオメガ3の比率が高いのに対し、オイル漬けではオメガ6の比率が高くなる傾向が示されています。純粋に魚由来の良質な脂質を摂取したいのであれば、水煮缶を選ぶか、オイル漬けの油をしっかり切ることが賢明です。:max_bytes(150000):strip_icc()/ar-tuna-tt-starkist-haas-4x3-5ad680afe6b646a6afd43fb4a219c188.jpg)
赤身の強力な抗酸化作用と水銀リスクを軽減するセレンの働き
マグロなどの大型魚を摂取する際に懸念されるのがメチル水銀の蓄積ですが、マグロにはこのリスクを軽減する重要なミネラルであるセレンが豊富に含まれています。セレンは強力な抗酸化作用を持つ微量元素であり、体内の活性酸素を除去して細胞の老化を防ぐだけでなく、有害な重金属と結合してその毒性を無毒化する働きを持っています。マグロの赤身は高タンパクかつ低脂質であるだけでなく、このセレンの含有量が非常に高いのが特徴です。また、セレンはタンパク質と結合して吸収される性質があるため、良質なタンパク質の塊であるマグロの赤身は、まさに理にかなった供給源と言えます。適度な摂取であれば、マグロ自体に含まれるセレンが水銀の毒性を打ち消す役割を果たすため、過度に恐れることなくその栄養メリットを享受することができます。
見落としがちな血合いに含まれる鉄分とタウリンの健康効果
スーパーなどで安価に売られていることが多い血合いですが、実はこの部位こそが栄養の宝庫であることをご存知でしょうか。血合いは赤色筋繊維が密集している部位であり、酸素を運搬するための鉄分が非常に豊富に含まれています。ここに含まれる鉄分はヘム鉄と呼ばれ、植物性の非ヘム鉄に比べて体内への吸収率が格段に高いため、貧血気味の女性や鉄分不足を感じている方には最適な食材です。さらに、血合いには肝機能を高めたりコレステロールの代謝を促進したりするタウリンや、強力な抗酸化作用を持つビタミンEも多量に含まれています。独特の臭みが気になる場合は、生姜やニンニクを使った煮付けや竜田揚げにすることで美味しく摂取でき、疲労回復や滋養強壮に役立つ優れた食材となります。
マグロの種類による栄養価の違いと医学的に推奨される食べ合わせ
一口にマグロと言っても種類によって栄養価は異なり、目的に応じて選び分けることが重要です。例えば、DHAやEPAを最大限に摂取したい場合は、脂の乗りが良いクロマグロ(本マグロ)やミナミマグロが適していますが、カロリーを抑えつつタンパク質や鉄分を補給したい場合はキハダマグロやメバチマグロの赤身が最適です。また、マグロにはカルシウムやビタミンCがほとんど含まれていないため、これらを補う食材と組み合わせることで栄養バランスが完成します。ビタミンDが豊富なマグロと一緒にチーズや小松菜などのカルシウム源を摂ることで骨の強化が期待でき、アボカドのようなビタミンCや食物繊維を含む食材と合わせることで、鉄分の吸収促進や整腸作用といった相乗効果を得ることができます。ただし、食物連鎖の上位にいるクロマグロなどは水銀濃度が比較的高いため、妊娠中の方はキハダマグロやツナ缶などを中心に選ぶといった配慮も必要です。
マグロは、脳の機能を支えるオメガ3脂肪酸から、体の錆びを防ぐセレン、貧血を予防する鉄分まで、現代人に不足しがちな栄養素を凝縮したスーパーフードと言えます。種類や部位による特性を理解し、水煮缶の活用や他の食材との組み合わせを工夫することで、その健康効果を最大限に引き出すことができるでしょう。ただし、特定の大型種への偏った摂取は避け、バランスよく日々の食事に取り入れていくことが、健康寿命を延ばすための賢い付き合い方です。
いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

