ブログ

【医師監修】総コレステロールが高いとどうなる?? 基準値と見方を徹底解説!!

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。健康診断で総コレステロールが異常となった方も多いのではないでしょうか。総コレステロールは、血液中に存在するコレステロールの総量を表す指標で、一般に「LDLコレステロール+HDLコレステロール+中性脂肪の五分の一」で計算されます。コレステロールそのものは悪者ではなく、細胞膜の材料やホルモン、胆汁酸、ビタミンの前駆体として生命維持に欠かせない物質です。ただし、体内で余剰になったり、運搬役であるリポたんぱくのバランスが崩れたりすると、血管の壁に蓄積して動脈硬化を進めます。総コレステロールを正しく読むためには、構成要素であるLDL、HDL、中性脂肪の働きと関係を合わせて理解することが重要です。今回は総コレステロールについて内科医の目線から解説していこうと思います。

基準値の捉え方と施設差への注意

総コレステロールの基準は施設や指針によって幅があります。かつて人間ドックの一部では総コレステロールの判定区分が見直され、廃止の流れもありましたが、臨床検査の運用ではいまなお参考範囲を併記する施設が少なくありません。たとえば120〜219mg/dLあるいは140〜199mg/dLといった目安が使われることがあります。大切なのは、総コレステロール単独で良し悪しを断じないことです。HDLが高いと総コレステロールも相対的に高く見えるため、総量だけではリスクを過大評価する恐れがあります。結果票に記された施設固有の基準を確認しつつ、LDLやHDL、中性脂肪との関係で全体像を評価しましょう。Cholesterol Ratio: Is it important?

いま注目の関連指標:Non-HDLコレステロールとLH比

総コレステロールを読む際は、動脈硬化リスクをより反映しやすい指標も併用すると理解が深まります。
1 非HDLコレステロール
計算式は「総コレステロール − HDLコレステロール」。HDL以外のアポB含有リポたんぱくを概ねカバーし、LDLに加えてレムナントなども含むため、総合的なリスク評価に有用です。目安としては90〜149mg/dLを基準範囲、150〜209mg/dLを要注意、210mg/dL以上を異常とする区分が用いられることがあります。
2 LH比(L/H比)
計算式は「LDLコレステロール ÷ HDLコレステロール」。同じLDLでもHDLが低いと比が大きくなり、動脈硬化の進行と関連します。おおむね1.5〜2以下が望ましい目安とされ、数値が高いほど要注意です。
いずれも採血一回で計算でき、総コレステロール単独より状況を立体的に把握できます。

高値と低値で何が起こるか

総コレステロールが高い背景には、飽和脂肪酸や精製糖質の過剰摂取、運動不足、過体重、飲酒、喫煙、ストレス、加齢、閉経などの生活・生理要因が関与します。加えて、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、閉塞性黄疸、肝疾患の一部、あるいは家族性高コレステロール血症などの疾患が潜むこともあります。逆に低値では、甲状腺機能亢進症、重度の栄養不良、肝硬変などが疑われます。脂質異常症は自覚症状が乏しいまま進行し、動脈硬化を通じて狭心症や心筋梗塞、脳梗塞のリスクを高めます。総コレステロールの異常が見つかったら、LDL、HDL、中性脂肪、Non-HDL、LH比の全体像を確認し、必要に応じて甲状腺や肝腎機能、血糖脂肪肝などの精査を行うことが安全です。

検査値の読み解き方

結果の読み方は総合評価が基本です。たとえば総コレステロールが230mg/dLでも、HDLが90mg/dLでLDLが120mg/dL、中性脂肪が80mg/dLなら、Non-HDLは140mg/dLとなり、実は大きな異常を示さない場合があります。一方で総コレステロールが200mg/dLであっても、HDLが35mg/dL、LDLが140mg/dLなら、LH比は4.0となり明らかにハイリスクです。このように、総コレステロールは入口の数値に過ぎず、比や差で「質」を見極める姿勢が重要です。

生活習慣で整える

治療や予防の土台は生活習慣の改善です。
1 食事
エネルギーを適正化し、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸、精製糖質の摂り過ぎを抑えます。赤身肉やバター、生クリーム、菓子類に偏らないよう注意し、魚の脂、オリーブ油、ナッツなどの不飽和脂肪酸、野菜や海藻、きのこ、豆類、全粒穀物などの食物繊維を増やします。減塩とアルコール適量も同時に意識します。
2 運動
早歩き、サイクリング、スイミングなどの有酸素運動を目安として週150分以上、可能なら筋力トレーニングも週2〜3回加えます。運動は中性脂肪を下げ、HDLを高める方向に働きます。
3 体重管理
内臓脂肪の減少は中性脂肪とNon-HDLの改善に直結します。ウエスト周囲径の変化も併せて追跡すると効果を実感しやすくなります。
4 禁煙
喫煙はHDLを低下させ、酸化ストレスを介して動脈硬化を加速します。完全禁煙が最善です。
5 飲酒
中性脂肪が高い場合はまず減酒、場合によっては禁酒が必要です。Unlocking Strength Through Running: Physical and Mental Gains Beyond the Miles

薬物療法が必要な場面:目標はリスク別に設定する

生活習慣の見直しを行ってもLDLやNon-HDLが目標に届かない場合、あるいは糖尿病や冠動脈疾患、慢性腎臓病、家族性高コレステロール血症などのハイリスクがある場合は薬物療法を検討します。スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬、ベンペド酸、フィブラート、EPA製剤などを単剤または併用で用い、合併症や副作用リスク、患者背景に応じて最適化します。目標値は年齢、既往歴、家族歴、糖代謝や血圧、喫煙の有無などで変わるため、主治医とゴールを共有し、定期的に再設定していくことが現実的です。Surgery in a Pill? | Harvard Medical School

検査を受けるタイミングと落とし穴

コレステロールは日内変動や食事の影響が少ない検査ですが、より安定した評価のために早朝空腹時の採血が望ましいです。風邪や炎症など急性期には数値が揺れやすく、妊娠や経口避妊薬、閉経、甲状腺機能の変化、肝腎機能の異常、過度の飲酒や極端な食事制限でも値が動きます。数値が一回で基準を外れても、状況に応じて再検や精査を行い、長期的なトレンドで判断することが安全です。

まとめ:総量ではなく「質」と「バランス」を見る

総コレステロールは血中脂質の全体像をつかむ入口で、単独の高低だけではリスクを正確に反映しません。Non-HDLコレステロールやLH比、LDL、HDL、中性脂肪を組み合わせて読み解くと、動脈硬化リスクをより的確に評価できます。数値が基準から外れたときは自己判断にとどめず、二次性原因の有無を含めて医療機関で相談しましょう。食事と運動、体重管理、禁煙といった土台を整え、必要に応じて薬物療法を組み合わせることで、合併症のリスクを着実に下げることができます。健診結果を次の受診や生活改善につなげ、将来の心血管イベントを賢く予防していきましょう。

いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

キーワード
ランキング