札幌駅・大通駅近くの小野百合内科クリニック、院長の小野渉です。今回患者様からこのような御質問がありました。「我が家は朝はスクランブルエッグとウインナーとパンとコーヒー、ハムエッグ(ベーコンエッグ)とごはんと味噌汁が定番中の定番です。これら加工肉には添加物や保存料が含まれたり発ガン性物質が含まれたり塩分が多かったり高血圧や動脈硬化の原因にもなるとマイナス面がYoutubeで言われていますが、本当に食べない方がいいのでしょうか?」
この気持ち、本当によく分かります。 ホテルの朝食バイキングでカリカリのベーコンを見たら、私もついお皿に取ってしまいますし、寒い日にコンビニのホットスナックから漂う香りは魅力的ですよね。しかし、患者様からご質問いただいた通り、加工肉には添加物や塩分が含まれており、健康への影響が懸念されています。今回は、世界的ながん研究機関の評価や最新の医学論文に基づき、加工肉を摂取するリスクと、許容できる頻度の目安について、糖尿病内科医の目線から回答して行こうと思います。

目次
加工肉は国際的な研究機関によって発がん性があるグループ1に分類されています
世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)は、2015年にハム、ベーコン、ソーセージなどの加工肉を、人に対して発がん性がある物質が含まれるグループ1に分類しました。これはタバコやアスベストと同じ最高レベルの分類ですが、同程度の毒性があるという意味ではなく、発がん性があるという証拠が十分に確実であるという意味です。具体的には、加工肉を毎日50グラム摂取し続けると、大腸がんのリスクが18パーセント増加するというデータが示されています。50グラムというのは、標準的なウインナーで約2本から3本、ハムなら2枚から3枚程度に相当します。つまり、毎朝の定番としてウインナーを食べ続けることは、確実に大腸がんのリスクを積み上げていることになるのです。
発色剤や保存料に含まれる化合物が体内で発がん性物質に変化します
なぜ加工肉がこれほどまでにリスク視されるのかというと、加工の過程で使用される添加物が大きく関係しています。ハムやソーセージの鮮やかなピンク色を保つために使われる亜硝酸ナトリウムなどの発色剤は、肉に含まれるアミンという物質と胃の中で反応し、ニトロソ化合物という強力な発がん性物質に変化することが分かっています。また、赤肉(牛・豚・羊などの肉)に含まれるヘム鉄そのものも、腸の粘膜を傷つけ、細胞の異常な増殖を促す可能性があります。無添加のハムを選べばリスクは多少下がりますが、加工肉特有の塩分過多や飽和脂肪酸の問題は残るため、無添加ならいくら食べても安心というわけではない点に注意が必要です。
がんのリスクだけでなく心臓病や糖尿病の死亡リスクも上昇させます
加工肉の影響はがんだけに留まりません。加工肉には保存性を高めるために多量の塩分が含まれており、これが高血圧を引き起こし、血管を硬くして動脈硬化を進行させます。さらに、動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを上昇させます。大規模なコホート研究のメタ解析によると、加工肉の摂取量が多いグループは、少ないグループに比べて心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中)による死亡リスクや、2型糖尿病の発症リスクが有意に高いことが報告されています。つまり、ポトフに入った美味しいウインナーやベーコンエッグを日常的に食べることは、がんだけでなく、血管の寿命を縮める行為とも言えるのです。

医師としての結論は「嗜好品」として週に1-2回程度楽しむのが現実的な解答
ここからは個人的な意見となります。これらを絶対に食べてはいけないのかというと、人生の楽しみという観点からはそこまで厳格にする必要はないと私は考えます。ただし、毎日の食事(主食)として考えるのではなく、ケーキやお酒と同じような「嗜好品(楽しみのための食べ物)」として捉え直すことが重要です。医学的にリスクを最小限に抑えるならば、加工肉の摂取はゼロが理想ですが、現実的な落とし所としては「週に1-2回程度」に留めることをお勧めします。例えば、ホテルの朝食バイキングのような特別な時や、どうしてもポトフが食べたい週末だけは解禁し、平日の朝食はゆで卵や納豆、焼き魚に置き換える。このようにメリハリをつけることで、美味しさを楽しみつつ、健康リスクを管理することが可能です。

まとめ
今回は、加工肉の美味しさとその裏にある医学的リスクについて解説しました。厳しいことを申し上げましたが、ウインナーやベーコンは「悪魔的に美味しい」からこそ、脳が繰り返し欲してしまう中毒性のような側面があります。しかし、毎日50グラムの摂取でリスクが確実に上がるというデータを知っていれば、スーパーで手に取る頻度を減らすことができるはずです。絶対にゼロにする必要はありませんが、日常の食卓からは少し距離を置き、特別な日のご褒美として楽しむことが、長く健康な血管と腸を維持するための秘訣です。食事の置き換え方などで迷われた際は、ぜひ当院の外来でご相談ください。
食事の置き換え方などで迷われた際は、ぜひ当院の外来でご相談くださいね。
医師が答える!加工肉に関するQ&A
Q1. ウインナーをボイルすれば添加物が抜けて安全になりますか? A. 多少は軽減されますが、安全とは言い切れません。 ボイルすることで、水溶性の添加物や余分な脂、塩分の一部はお湯に溶け出しますので、焼くよりはリスクを下げることができます。しかし、発色剤などが完全に抜けるわけではありませんし、肉そのもののリスク(ヘム鉄など)は変わりません。調理法を工夫しても、やはり「食べ過ぎないこと」が一番の対策です。
Q2. 「無塩せき」や「完全無添加」のソーセージなら毎日食べてもいいですか? A. 通常のものよりは良いですが、毎日はおすすめしません。 「無塩せき」は発色剤を使用していないため、ニトロソ化合物の発生リスクは低減されます。しかし、加工肉である以上、塩分や飽和脂肪酸が多く含まれていることに変わりはありません。高血圧や脂質異常症のリスクを考えると、やはり週に数回の楽しみにしておくのが賢明です。
Q3. 子供がウインナー大好きで、毎朝食べたがるのですがどうすればいいですか? A. 徐々に他のタンパク質に置き換えていきましょう。 子供の頃からの食習慣は大人になっても続きます。いきなりゼロにするとストレスになりますので、まずは「ウインナーは2日に1回」にし、味覚を加工肉の濃い味から離れさせていく工夫をしてみてください。
参考文献

