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体内で作れない9つの栄養素。『必須アミノ酸』が不足すると体に何が起こるのか?

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんは必須アミノ酸という言葉をご存知でしょうか。私たちの体は水分とタンパク質で大半が構成されており、筋肉や臓器、髪の毛に至るまでタンパク質が材料となっています。このタンパク質を構成する最小単位がアミノ酸であり、生命活動を維持するために欠かせない栄養素です。しかし、中には体内で合成できず、食事から摂取しなければならない種類が存在します。今回は、健康維持の鍵を握る必須アミノ酸の役割や、効率的な摂取方法について内科医の目線から詳しく解説していきます。

体内で合成できない必須アミノ酸とは

人間の身体は約60%が水分、約20%がタンパク質で構成されています。このタンパク質を構成しているのが20種類のアミノ酸です。これらは大きく二つのグループに分けられます。一つは体内で合成できる11種類の非必須アミノ酸、もう一つは体内で合成できない、あるいは合成量が十分ではないため食事から摂取しなければならない9種類の必須アミノ酸です。

具体的には、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、リジン(リシン)、フェニルアラニン、トリプトファン、スレオニン(トレオニン)、ヒスチジンが必須アミノ酸に該当します。小児の場合はこれにアルギニンが加わり10種類となります。これらが一つでも欠乏すると、筋肉や血液、酵素などを正常に作ることができなくなるため、毎日の食事からの摂取が非常に重要になります。

amino acids make up 20% of the body

アミノ酸の桶とアミノ酸スコアの重要性

食品に含まれる必須アミノ酸のバランスを評価する指標として、アミノ酸スコアというものがあります。これは、その食品が人間にとって理想的なアミノ酸バランスをどれだけ満たしているかを数値化したものです。この概念を理解するためによく用いられるのがアミノ酸の桶の理論です。9種類の必須アミノ酸を桶を作る9枚の板に例え、板の長さが含有量を表すとします。

もし一枚でも短い板(不足しているアミノ酸)があれば、いくら他の板が長くても、水(タンパク質)はその一番短い板の高さまでしか溜めることができずに溢れ出してしまいます。つまり、特定のアミノ酸だけを大量に摂取しても、不足しているアミノ酸(第一制限アミノ酸)があれば、体内でタンパク質は効率よく合成されないのです。アミノ酸スコアが100に近い良質なタンパク質を摂ることが推奨されるのはこのためです。

筋肉維持とサルコペニア予防における役割

必須アミノ酸の中でも、バリン、ロイシン、イソロイシンの3種類はBCAA(分岐鎖アミノ酸)と呼ばれ、筋肉のエネルギー代謝や合成に深く関わっています。筋肉の必須アミノ酸のうち約40%をこのBCAAが占めており、運動時の持久力向上や筋肉痛の軽減に効果が期待されています。特に運動の直後から1時間以内はゴールデンタイムと呼ばれ、このタイミングで摂取することで筋肉への取り込みが効率的に行われます。

また、高齢化社会において問題となっているサルコペニア(加齢に伴う筋肉量の減少)の予防にもアミノ酸は不可欠です。高齢になると食が細くなり、低栄養状態に陥りやすくなりますが、これが筋力低下を招き、転倒や寝たきりのリスクを高めます。意識的に必須アミノ酸を摂取することは、筋肉量を維持し、健康寿命を延ばすための有効な手段となります。筋トレは女性におすすめの運動法?メリットや注意点、継続のコツ

効率的な摂取のための食品の組み合わせ

アミノ酸スコアが100の食品には、鶏肉、豚肉、アジ、マグロなどの魚介類、卵、牛乳、ヨーグルトなどの動物性食品が多く挙げられます。これらは単体でバランスよく必須アミノ酸を含んでいるため、良質なタンパク質源と言えます。一方で、精白米や小麦などの植物性食品は、リジンなどのアミノ酸が不足しており、スコアが低い傾向にあります。

しかし、スコアが低い食品も、他の食品と組み合わせることで欠点を補うことが可能です。これをタンパク質の補足効果と呼びます。例えば、リジンが少ないご飯に、リジンが豊富な納豆や卵を組み合わせることで、食事全体のアミノ酸バランスを改善することができます。近年では、消化吸収率まで考慮したDIAAS(消化性必須アミノ酸スコア)という新しい指標も注目されていますが、基本的には動物性と植物性の食品をバランスよく組み合わせることが重要です。

アミノ酸は私たちの体を形作り、機能を維持するための根源的な材料であることをご理解いただけたでしょうか。特定の食材に偏ることなく、肉や魚、大豆製品などをバランスよく組み合わせることで、体内で合成できない必須アミノ酸を効率的に補うことができます。毎日の食事を少し見直すだけで、筋肉の維持や胃腸の調子にも良い影響を与えます。今日から意識的に良質なタンパク質を取り入れ、健康的で活力あふれる毎日を送りましょう。

いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

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