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【医師監修】シスタチンCとは?腎機能を正確に評価する新たな検査指標

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんはシスタチンCという血液検査項目を知っていますか??健康診断で「腎機能に注意が必要です」と指摘された際、一般的に測定されるのは「クレアチニン」です。しかし、このクレアチニンには「筋肉量や食事の影響を受けやすい」という弱点があり、検査結果が実際の腎臓の働きを正確に反映していない場合があります。そこで、より正確に腎機能を評価するために用いられるのが「シスタチンC」という血液検査項目です。特に高齢者や筋肉量が少ない方にとっては、隠れた腎臓病を見つけるための重要な手がかりとなります。今回は、このシスタチンCについて、なぜ測定が必要なのか、クレアチニンとの違いや具体的な活用方法を、内科医の視点から分かりやすく解説します。

シスタチンCが腎機能評価の「切り札」となる理由

シスタチンCは、全身の細胞から一定のペースで作られるタンパク質の一種です。腎臓の糸球体でろ過された後、尿細管で再吸収・分解されるため、血液中の濃度を測ることで腎臓のろ過機能(GFR)をダイレクトに推測することができます。従来のクレアチニン検査は、筋肉の代謝産物であるため、筋肉量の多い若い男性では高めに、逆に筋肉量の少ない高齢者や女性では低めに出る傾向がありました。これに対し、シスタチンCは筋肉量や食事内容、性別による影響をほとんど受けないため、患者さんの体格に左右されず、より実態に近い「真の腎機能」を映し出すことができるのです。

検査が必要となる具体的なタイミングと判断基準

では、どのような時にシスタチンCを調べるべきなのでしょうか。基本的には、健康診断などでクレアチニンの値が高く、「腎機能低下の疑い」を指摘された際の再検査として行われます。特に「痩せているのにクレアチニン値が正常範囲内ギリギリ」といった場合、筋肉量が少ないために数値が低く見えているだけで、実際は腎機能が低下している「隠れ腎臓病」の可能性があります。また、クレアチニン値だけでは判断が難しい初期の腎機能低下(GFRが70ml/min程度まで低下した段階)でもシスタチンCは敏感に反応するため、早期発見にも非常に有用です。基準値としては一般的に0.7〜0.9mg/L程度とされていますが、重要なのはこの数値そのものではなく、後述するeGFRの計算に用いることです。

シスタチンCを用いた「eGFR-cys」で正確なステージを知る

腎臓病の進行度(ステージ)を判定するためには、eGFR(推算糸球体ろ過量)という指標が使われます。これまで一般的だったクレアチニンをもとにした「eGFR-creat」に加え、シスタチンCを用いて計算する「eGFR-cys」を確認することが重要です。 研究によると、クレアチニンでは腎機能低下と判定されても、シスタチンCで評価し直すと正常範囲(eGFR-cysが60以上)であるケースがあり、その場合の心血管疾患や末期腎不全へのリスクは低いことが分かっています。逆に、クレアチニン値が正常でもシスタチンCが高い場合は、将来的なリスクが高いと判断され、より厳密な治療管理が必要になります。このように、二つの指標を組み合わせることで、より精度の高い予後予測が可能になるのです。

検査を受けるには?保険適用と専門医への相談

シスタチンCは、一般的な健康診断の項目には含まれておらず、すべての内科クリニックで測定できるわけではありません。また、保険診療で測定する場合、「3ヶ月に1回のみ」といった制限や、クレアチニン検査よりもコストが高い(保険点数が高い)という側面もあります。そのため、ご自身の腎機能に不安がある場合や、健康診断の結果をより詳しく分析したい場合は、腎臓内科を標榜している専門のクリニックを受診することをお勧めします。専門医であれば、クレアチニンとシスタチンCの両方のデータを統合的に解析し、あなたの腎臓の「本当の実力」に基づいた適切なアドバイスや治療計画を立てることができます。

いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

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