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マンジャロがウゴービを上回る減量効果を示す。抗肥満薬としてのマンジャロの効果

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。現在抗肥満薬としてゼップバウンドウゴービがありますが、ゼップバウンドはマンジャロと全く同じ成分です。今回はわかりやすくマンジャロという言葉に置き換えて、この二つの薬の減量効果を糖尿病内科医の目線から解説してみようと思います。2024年12月4日、米国の大手製薬企業イーライリリー(Eli Lilly)が開発した肥満症治療薬「マンジャロ(チルゼパチド)」について、同じく肥満症治療薬「ウゴービ(セマグルチド)」との比較試験結果が発表されました。その結果、マンジャロ投与群はウゴービ投与群よりも47%多い体重減少を示し、世界的にも大きな注目を集めています。今回は、この「SURMOUNT-5試験」の概要と結果、そして今後の展望について、なるべく分かりやすく解説します。


試験の概要:SURMOUNT-5とは?

SURMOUNT-5試験は、肥満または過体重(BMI基準を満たす)であり、かつ高血圧脂質異常症・閉塞性睡眠時無呼吸・心血管疾患など少なくとも1つの体重関連の健康上の問題を有する成人を対象に行われた、第IIIb相の多施設共同、無作為化、オープンラベル試験です。

  • 対象者:2型糖尿病を合併していない肥満または過体重の成人(関連疾患が1つ以上)
  • デザイン:チルゼパチド(商品名:マンジャロ)とセマグルチド(商品名:ウゴービ)の有効性・安全性を比較
  • 期間:72週間
  • 主要評価項目:ベースライン(試験開始時)からの体重変化率

この試験には751名が参加し、ランダムにマンジャロまたはウゴービを投与されました。


試験結果:マンジャロの方がより大きな減量効果

2-1. 体重減少率

  • マンジャロ群:平均20.2%の体重減少
  • ウゴービ群:平均13.7%の体重減少

最終的に、マンジャロ群はウゴービ群よりも相対的に47%多い減量効果を示しました。

2-2. 25%以上の体重減少達成率

  • マンジャロ群:31.6%
  • ウゴービ群:16.1%

肥満症治療における「体重の25%以上の減少」は非常に大きな指標ですが、マンジャロはウゴービに比べて、この達成率も大きく上回る結果となりました。


安全性と副作用

両薬剤ともに、過去の臨床試験と同様、消化器系の副作用(悪心、嘔吐、下痢、便秘など)が中心でした。多くは軽度から中等度にとどまりましたが、まれに重症化するケースもあるため、治療を検討する際は必ず医師と相談し、定期的なチェックを受けることが推奨されます。


新たな選択肢としてのマンジャロ

チルゼパチド(マンジャロ)は、GIPとGLP-1の二つの受容体に作用する、いわゆる「デュアル・インクレチン受容体作動薬」です。一方、セマグルチド(ウゴービ)はGLP-1受容体にのみ作用する薬です。
GIPとGLP-1両方の経路を同時に刺激することで、インスリン分泌促進や食欲抑制効果を高め、体重減少を効率的にサポートするとされています。今回のSURMOUNT-5試験の結果は、その有用性をさらに裏付けるものとなりました。


とはいえ「薬だけ」ではない肥満症治療

肥満症治療薬が大きな注目を集めていますが、薬だけに頼るのではなく、適切な食事療法や運動療法、生活習慣の改善も欠かせません。薬の効果を最大限に引き出し、かつ安全に治療を続けるためには、下記のポイントが重要です。

  1. 食事制限
    • 栄養バランスに配慮しつつ、適正な摂取カロリーを維持
    • 塩分や脂質を抑え、野菜を中心に食物繊維を多く摂る
  2. 運動習慣
    • 有酸素運動(ウォーキングや軽いジョギング)を週に3~5回程度
    • 自宅でできる軽い筋トレやストレッチで筋力維持
  3. 定期的な受診
    • 血糖や血圧、脂質などのチェック
    • 副作用や体重の推移を確認し、薬の適切な継続量を検討

今後の展望:さらに強力な薬への期待

ノボノルディスク社は、セマグルチドを超える新しい肥満症薬「カグリセマ」の開発を進めており、その後期臨床試験では25%以上の体重減少が得られる可能性を示唆しています。さらに、複数の製薬企業がトリプルG受容体作動薬などを開発中であり、肥満症治療の選択肢は今後ますます広がる見込みです。


まとめ

  • SURMOUNT-5試験では、マンジャロ(チルゼパチド)がウゴービ(セマグルチド)に比べ、47%多い減量効果を示した。
  • 副作用は両薬剤とも消化器系症状が中心だが、重症化には注意が必要。
  • 肥満症治療には薬剤だけでなく、食事療法や運動療法との併用が不可欠。
  • 今後はカグリセマなど、新しい薬剤の登場も期待されている。

肥満症は慢性的な疾患であり、長期的な治療とサポートが重要です。もし服用を検討している方は、必ず専門医と相談したうえで、自分に最適な治療法を見つけてください。当院では糖尿病患者を対象に肥満外来を行っており、栄養指導も行い、患者さん一人ひとりに合わせたサポートを行っておりますので、疑問や不安がありましたらお気軽にご相談ください。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック


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