こんにちは。札幌駅・大通駅近くの「小野百合内科クリニック」です。健康のため、あるいはダイエットのために運動を始めようと思ったとき、最初にぶつかる疑問があります。それは、ウォーキングのような有酸素運動と、スクワットのような筋力トレーニング、一体どちらを優先すべきなのかという問題です。診察室でも、とにかく歩いていますという方もいれば、ジムで鍛えていますという方もいらっしゃいます。実は最新の医学研究において、脂肪を落としたいのか、長生きしたいのか、あるいは血糖値を下げたいのかという目的によって、選ぶべき運動の正解が異なることが分かってきました。この記事では、それぞれの運動が持つ医学的なメリットを比較し、あなたにとって最適な運動プランを内科医の視点から解説します。
目次
体重と脂肪を最優先で落としたいなら有酸素運動に軍配が上がる
健康診断の日が近づいていて、とにかく体重計の数値を減らしたい、お腹についた脂肪を燃やしたいという場合、医学的な正解は有酸素運動です。Journal of Applied Physiologyに掲載された研究では、肥満のある成人を対象に、有酸素運動のみ、筋トレのみ、両方行うという3つのグループに分けて8ヶ月間追跡調査を行いました。その結果、有酸素運動を行ったグループは体重と脂肪量が順調に減少しましたが、筋トレのみを行ったグループでは体重の減少がほとんど見られませんでした。これは、有酸素運動が直接的に脂肪をエネルギーとして消費する効率が高いためです。一方で筋トレは筋肉量が増えるため、体脂肪が減っても体重そのものは減りにくいという特徴があります。まずは見た目をスッキリさせたいのであれば、ウォーキングやジョギングから始めるのが近道と言えるでしょう。

病気のリスクを下げて長生きするためには組み合わせが最強である
単に痩せるだけでなく、将来の病気を防いで健康に過ごしたいと願うなら、有酸素運動と筋トレを組み合わせるのがベストな選択です。10万人近くのデータを解析した大規模な研究によると、有酸素運動だけでも死亡リスクを下げる効果はありましたが、そこに週1回から2回の筋トレを加えている人は、全く運動しない人に比べて死亡リスクが41パーセントも低下していたことが分かっています。有酸素運動で心肺機能を高め、筋トレで足腰の強さを維持することは、加齢に伴う様々な病気や怪我のリスクを総合的にカバーすることに繋がります。どちらか片方だけでは得られない相乗効果が、この組み合わせには秘められているのです。

血糖値を下げるなら有酸素と筋トレのハイブリッドが医学的スタンダード
糖尿病の治療や血糖値の改善を目的とする場合も、やはり両方行うことが推奨されます。有酸素運動は血液中のブドウ糖を燃料として消費し、筋トレは筋肉を増やすことでインスリンの効き目を良くし、糖を取り込みやすい体質へと変化させます。実際に2型糖尿病患者様を対象とした研究でも、有酸素運動と筋トレを併用したグループが、過去1ヶ月から2ヶ月の平均血糖値を示すHbA1cを最も大きく改善させました。それぞれが異なるメカニズムで血糖値にアプローチするため、ダブルの効果で血管を守ることができるのです。時間が取れない日はウォーキングだけ、雨の日は自宅でスクワットだけといったように、柔軟に組み合わせるだけでも十分な効果が期待できます。
忙しい毎日でも続けられる自分に合った運動スタイルの見つけ方
結論として、何を目的にするかで優先順位は変わりますが、理想的なのは有酸素運動をベースにしつつ、週に数回の筋トレを取り入れることです。しかし、最も重要なのは継続することです。仕事や家事で忙しい毎日の中で、両方を完璧にこなそうとすると挫折の原因になります。平日は自宅で隙間時間にスクワットを行い、週末は少し時間をとって散歩に出かけるなど、生活リズムに合わせて無理なく組み込むことが成功の秘訣です。また、最初から高い目標を立てすぎず、まずは今の生活プラス10分動くことから始めてみましょう。体重が減らなくても、筋肉がついて血糖値が下がっていれば、それは大きな成功です。数字の変化だけでなく、体が軽くなった、階段が楽になったという体感を大切にしながら、細く長く続けていきましょう。

まとめ
運動は、薬と同じくらい強力な治療効果を持っていますが、薬と違って副作用がなく、むしろ体力がついて若々しくなれるという素晴らしいメリットがあります。今日お話ししたように、脂肪を落とすなら有酸素、長生きや血糖値改善ならハイブリッドという原則を知っておくだけで、運動への取り組み方が変わってくるはずです。最初から完璧を目指す必要はありません。まずはご自身のライフスタイルに合わせて、無理なく続けられることから始めてみましょう。当院では、患者様の体力や生活環境に合わせた具体的な運動指導も行っております。一人ではなかなか続かないという方は、ぜひ小野百合内科クリニックへご相談ください。
医師が答える!運動に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 筋トレと有酸素運動、同じ日にやるならどっちが先ですか? A. 脂肪を燃やしたいなら「筋トレが先」がおすすめです。 先に筋トレを行うと、成長ホルモンなどの脂肪分解を助けるホルモンが分泌されます。その状態で有酸素運動を行うことで、血液中に溶け出した脂肪が効率よくエネルギーとして使われるため、脂肪燃焼効果が高まると言われています。逆に、筋トレ後の疲労が心配な方は、別々の日に分けて行っても健康効果は十分にあります。
Q2. 毎日歩いていますが、筋トレもしないとダメですか? A. ダメではありませんが、加齢に伴う筋肉減少を防ぐためにプラスするのが理想です。 ウォーキングは素晴らしい習慣ですが、上半身の筋肉や、転倒予防に必要な太ももの筋肉を強く大きくする効果は限定的です。年齢とともに筋肉は自然に減っていきますので、週に2回程度で構いませんので、スクワットなどの簡単な筋トレをプラスすることをお勧めします。
Q3. 忙しくて時間がありません。どちらか一つだけ選ぶなら? A. 好きで続けられる方を選んでください。 医学的なデータはありますが、一番効果がないのは「嫌になってやめてしまうこと」です。外の空気を吸ってリフレッシュするのが好きならウォーキングを、短時間で集中して達成感を味わいたいなら筋トレを選んでください。どちらか一つでも、全くやらないよりはずっと健康的です。
参考文献

