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【医師解説】サイログロブリンが高いと言われたら?甲状腺疾患との関係を徹底解説

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。健康診断や病院の検査結果でサイログロブリンという項目を目にして、これは一体何なのだろうと疑問に思われたことはありませんか。サイログロブリンは、首の喉仏の下にある甲状腺という臓器で作られる特殊なタンパク質のことです。この物質は、私たちが元気に活動するために不可欠な甲状腺ホルモンの材料となる非常に重要な役割を担っています。しかし、血液検査でこの数値が高いと言われた場合、体の中で何らかの変化が起きているサインかもしれません。本日はこのサイログロブリンについて、その働きや検査の意味、関連する病気について医学的なガイドラインに基づき内科医の目線から分かりやすく解説します。

甲状腺ホルモンの源となるパン生地のようなタンパク質

サイログロブリンは、甲状腺の中にある濾胞(ろほう)という袋状の組織の中で生成される大きなタンパク質です。甲状腺は食事から摂取したヨウ素を取り込み、このサイログロブリンと結合させることで、代謝やエネルギーを調節する甲状腺ホルモン(T3やT4)を作り出しています。日本甲状腺学会のガイドラインや生理学の教科書では、サイログロブリンはホルモンの前駆体、つまりホルモンになる前の準備段階の物質として定義されています。分かりやすく例えるならば、サイログロブリンはパンを作るためのパン生地のような存在であり、これがヨウ素という材料と混ざり合って焼き上がることで、甲状腺ホルモンという美味しいパンが完成し、血液中へ送り出されていくのです。

血液中に漏れ出てくる二つの主要なメカニズム

健康な状態であれば、サイログロブリンのほとんどは甲状腺の中に貯蔵されており、血液中に漏れ出てくる量はわずかです。しかし、血液検査でこの数値が上昇することがあります。その原因は大きく分けて二つあります。一つ目は、甲状腺の細胞が壊れて中身が漏れ出してしまう場合です。甲状腺炎などで炎症が起きると、貯蔵庫が破壊されて血液中に流出します。二つ目は、甲状腺の細胞が過剰に活動したり、腫瘍などで細胞の数自体が増えてしまった場合です。これにより生産量が増えすぎて血液中の濃度が上がります。つまり、サイログロブリン値が高いということは、甲状腺が壊れているか、あるいは大きくなったり活発になりすぎているかのどちらかを示唆しているのです。

正確な測定を妨げるサイログロブリン抗体の存在

検査結果を見る際に重要なのが、サイログロブリン抗体(TgAb)の存在です。橋本病などの患者様では、自分の免疫がサイログロブリンを攻撃する抗体を持っていることがあります。この抗体が血液中に存在すると、検査薬と反応してしまい、実際のサイログロブリン値よりも低く出たり、正確な値が測れなくなったりすることがあります。そのため、私たちは必ずサイログロブリンと同時にこの抗体の有無も確認し、検査データの信頼性を慎重に評価しています。抗体がある場合は、サイログロブリンの値だけで判断せず、より慎重な経過観察が必要となります。

患者様からよくあるQ&A

Q1 サイログロブリンが高いと言われました。これは甲状腺がんですか。

いいえ、必ずしもそうではありません。サイログロブリンは甲状腺の細胞があれば分泌される物質ですので、良性の腫瘍やバセドウ病、あるいは単に甲状腺が大きいだけでも数値は高くなります。がんの診断には、サイログロブリンの値だけでなく、超音波検査や細胞診などの結果を総合して判断する必要があります。

Q2 食事制限でサイログロブリンを下げることはできますか。

食事だけで直接的に数値を下げることは困難です。サイログロブリンの上昇は甲状腺の炎症や腫瘍、大きさなどを反映しているため、根本的な原因に対する治療が必要です。ただし、甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素(昆布などに含まれる)の過剰摂取は甲状腺機能に影響を与えることがあるため、医師の指示に従ってバランスの良い食事を心がけてください。

Q3 サイログロブリンとサイログロブリン抗体はどう違うのですか。

サイログロブリンは甲状腺で作られるタンパク質そのものです。一方、サイログロブリン抗体(TgAb)は、免疫システムが誤ってサイログロブリンを異物とみなし、攻撃するために作った抗体のことです。抗体が高いことは、橋本病などの自己免疫疾患があることを示唆しており、甲状腺自体の破壊が進んでいる可能性があります。

まとめ

サイログロブリンは甲状腺ホルモンの材料であり、甲状腺の状態を映し出す鏡のような指標です。甲状腺がんの術後再発チェックには欠かせない重要なマーカーですが、良性の病気や炎症でも上昇するため、その解釈には専門的な知識が必要です。数値が高いと指摘された場合は、自己判断せず、必ず医師による精密検査を受けるようにしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック 院長 小野渉

参考文献 日本甲状腺学会編 甲状腺腫瘍診療ガイドライン2019 日本内分泌学会 甲状腺疾患診断ガイドライン Williams Textbook of Endocrinology, 14th Edition

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