札幌駅近く、大通り駅近くの小野百合内科クリニックです。麺類は手軽に食べられる一方で、糖質量の多さから血糖値を気にしている方、特に糖尿病の方には敬遠されがちですよね。そんな中でも「そば」は、糖尿病や血糖値が気になる方にとって、比較的おすすめできる麺だといわれています。今回のブログでは、そばが血糖値の急上昇を抑えられる理由や、うどんとの比較、さらに糖尿病の方がそばを食べるときのポイントまでわかりやすく解説します。ぜひ毎日の食事療法の参考にしてみてください。
そもそも血糖値とは?
血糖値は、血液中に含まれるブドウ糖の濃度を指します。私たちが食事から摂取した炭水化物(糖質)が体内でブドウ糖に分解・吸収されることで血糖値が上昇し、ブドウ糖をエネルギーとして運ぶホルモン「インスリン」の働きで血糖値は下がります。ところが、糖尿病の方は以下のような特徴をもちます。
- インスリンの分泌が不足または働きが低下している
- 食後の血糖値が下がりにくく、高い状態が続く
こうした血糖値の乱高下が続くと、動脈硬化などの合併症リスクが高まってしまうため、糖質の摂りすぎや食事の仕方には注意が必要です。そこで注目されるのが、比較的血糖値が上がりにくい「そば」。具体的にどんな点が良いのか、次章で詳しく見ていきましょう。
目次
そばには食後の血糖値が急上昇するのを抑えられる4つの理由
(1) そばは低GI食品に分類されている
食後血糖値の上がりやすさを示す指数に「GI値(グリセミック・インデックス)」があります。これは、ブドウ糖を摂取したときの血糖値上昇度を100とした場合の数値です。GI値が高いほど急激に血糖値が上がり、低いほど血糖値の上昇はゆるやかになります。
- 低GI食品: GI値55以下
- 中GI食品: GI値56〜69
- 高GI食品: GI値70以上
主な主食のGI値は下記のとおりです。
- 白米:70以上(高GI食品)
- うどん:85(高GI食品)
- パン:70以上(高GI食品)
- そば:54(低GI食品)
このように、そばは主食のなかでも数少ない低GI食品。糖質の吸収がゆっくりで、血糖値の急激な上昇を防ぎやすいといわれています。
(2) 食物繊維が糖質の吸収速度を遅くする
そば粉には、食物繊維が豊富に含まれています。特に水溶性食物繊維は、腸内で糖質を包み込みながら移動し、糖質の吸収をおだやかにしてくれるのが特徴。糖尿病の方や血糖値が高めの方にとって、食物繊維をしっかり摂取することは血糖コントロール上、大きな助けとなります。
厚生労働省が示している食物繊維の1日目標量は以下のとおりです。
- 18〜64歳男性:21g以上
- 18〜64歳女性:18g以上
しかし、日本人の平均摂取量は14g前後といわれ、目標量に届いていないのが現状です。そばのように食物繊維が比較的豊富な主食を取り入れることは、生活習慣病の予防や改善に有効と考えられます。
(3) そばに含まれる植物性タンパク質が血糖値の上昇を抑える
そばはうどんや精白米と比べて、タンパク質量が多いのも特徴。タンパク質の摂取によって体内で分泌される「インクレチン」というホルモンは、血糖値を下げるインスリンの分泌を促進し、また血糖値を上げるグルカゴンの分泌を抑える働きがあります。そのため、食後の血糖値が急上昇しにくくなるわけです。
さらに、そばのタンパク質はアミノ酸スコアが高く、必須アミノ酸のバランスに優れています。特に「そばの実」の胚芽部分にはさまざまな栄養素が含まれているため、糖尿病の方にとって良質なタンパク質源になり得るのです。
(4) ポリフェノールの一種「ルチン」がインスリン分泌を促す
そばに含まれるポリフェノールの一種「ルチン」は、インスリンの分泌を促し、血糖値の上昇を抑える可能性があると報告されています。さらに、ルチンには体内で老化を促進する物質「AGEs(最終糖化産物)」の生成を抑える効果も期待されているため、糖尿病の合併症予防にも役立つという見方もあります。
ルチンのメリットは他にもあり、血圧を下げる作用や毛細血管を強くしなやかにしてくれる働きがあることも見逃せません。糖尿病の方は動脈硬化リスクも高いため、こういった血管の健康維持機能はありがたいですね。
糖尿病や血糖値が気になる人には「うどん」より「そば」が向いている?
うどんは高GI食品でGI値が85。一方、そばは低GI食品に分類されるほどGI値が低く、血糖値の急上昇を抑えやすい特徴があります。さらに食物繊維や植物性タンパク質、ビタミンB群など、うどんより豊富な栄養素を含んでいる点も「そば」の魅力です。
ただし、そばの方がうどんよりカロリーや炭水化物量がやや高い点は注意。以下は、文部科学省「日本食品標準成分表」による、ゆでた状態100gあたりの成分比較です。
- そば(ゆで): エネルギー130kcal/炭水化物26.0g
- うどん(ゆで): エネルギー95kcal/炭水化物21.6g
GI値や栄養バランスに注目すれば、糖尿病や血糖値が気になる方には「そば」がより適しているといえますが、食べ方や量に気をつけないと、結局は血糖値に影響が出る可能性が高まります。
糖尿病や血糖値が気になる人がそばを食べるときのポイント
(1) そば単品は避けてバランスよく
かけそば・ざるそばなど“そばだけ”をサッと食べてしまうと、炭水化物中心で血糖値が上がりやすくなります。そばには食物繊維やタンパク質が含まれていますが、単品では不足しがち。野菜や肉・魚などタンパク質を含む副菜を組み合わせる、または具をたっぷり入れた「具だくさんそば」にするなど、栄養バランスにも配慮してみましょう。
また、そばつゆを全部飲み干すのは塩分・糖分の観点からおすすめできません。仕上げの蕎麦湯を使って楽しむ方もいますが、食事全体の糖質・塩分量が多くなりすぎないよう気をつけてください。
(2) 薬味・トッピングを積極的に活用
- とろろ、なめこ、大根おろし、山菜、きのこ
- 海藻類(わかめ・のり等)
- 温泉卵、鶏肉、納豆 など
これらを乗せることで食物繊維やタンパク質を補いやすくなり、そば単品で血糖値が急上昇するのを防ぎやすくなります。具だくさんにすることで満足感も得やすく、食べ過ぎ防止にも一役買います。
(3) 食べすぎ防止を忘れずに
そばはうどんよりカロリーや炭水化物が多い傾向があります。いくら低GI食品でも、食べ過ぎれば血糖値が過度に上がってしまうことも。ご自身の1食あたりの適正エネルギー量や栄養バランスを考慮しながら、一食分の量を守りましょう。
日本糖尿病学会の「食品交換表」では、そば(乾燥20g/ゆで60g)が1単位(80kcal)。たとえば主食3単位を目安にしている方であれば、ゆでそば180g前後が一食分の目安です。つい「するする」と食べ進めてしまいがちな麺類ですが、まずはしっかり噛んでゆっくり食べることも心がけてください。
(4) 炭水化物の“重ね食べ”に注意
定食やランチセットなどで「そば+丼もの」「そば+おにぎり」など、炭水化物を重ねて食べてしまうケースは珍しくありません。白米やパンなど、他の炭水化物をそばと一緒に食べると糖質の摂り過ぎになるため、血糖値が急上昇しやすいです。糖尿病や血糖値が気になる場合には、炭水化物の組み合わせは避けるようにしましょう。
血糖値を安定させるには「食べ方の工夫」も必要
(1) 1日3食を規則正しく
「摂取カロリーを減らしたいから食事を抜こう」とすると、次の食事での食べ過ぎや早食いにつながり、血糖値の急上昇が起こりやすくなります。
1日3食バランスよく、できるだけ決まった時間に摂ることで血糖値の乱高下を防ぎやすくなります。また早食いも血糖値上昇の原因となるので、よく噛んでゆっくり食べることが大切です。
(2) 糖質を減らしてバランス良く食べる
- 主食の量を少し減らす
- 白米の代わりに玄米や全粒粉パンを取り入れる
- ジュースや清涼飲料水など糖質の高い飲み物を控える
糖尿病の食事療法では、糖質の多い食品ばかりを食べると血糖値が上がりやすいので注意が必要です。そばは低GI食品ですが、白米やうどんと組み合わせれば糖質過多になりかねません。あくまでバランス良く、主食・主菜・副菜をそろえるようにしましょう。
よくある疑問Q&A
Q1. 食後の蕎麦湯は糖尿病でも飲んでいいの?
蕎麦湯にはそば粉の栄養が溶け出しており、食物繊維やビタミンなどを少量ではありますが摂取できます。しかし、実際には濃いめのそばつゆを薄めて飲むことが多いため、塩分や糖分の過剰摂取になりやすいのも事実。塩分や血圧が気になる方、血糖値をきっちりコントロールしたい方は、そばつゆをすべて飲み干すのではなく“ほどほど”に楽しむ程度をおすすめします。
Q2. 十割そばと二八そば、どっちがいい?
- 十割そば: つなぎに小麦粉を使わず、そば粉100%で作られる。食物繊維やビタミン、ミネラルをより多く摂取できる。
- 二八そば: そば粉8割+小麦粉2割。十割そばよりも歯ごたえがソフトで、麺が切れにくい。
より血糖値を抑えたい場合や栄養素の豊富さを重視するなら、十割そばがおすすめです。一方、二八そばの方が風味や食感を好む人もいます。いずれにしても“食べる量や食べ方”の工夫がもっとも大切。食物繊維が多いからといって、食べ過ぎれば血糖値上昇につながる点は変わりません。
まとめ:低GI食品のそばは上手に活用しよう
糖尿病や血糖値が気になる方にとって、うどんなどの高GI食品より、そばのような低GI食品を主食に選ぶのは賢い方法といえます。そばには
- GI値が低く、血糖値がゆるやかに上昇する
- 食物繊維が豊富で糖の吸収をおだやかにする
- インクレチンを促すタンパク質が多い
- ルチンによる血管保護・インスリン分泌促進などが期待できる
といったメリットがあります。
とはいえ、そばも炭水化物の一種であることには変わらず、食べ過ぎれば血糖値が大きく上がる可能性があります。主食の量を調整し、野菜・海藻・きのこ類といった食物繊維豊富な食品や、タンパク質豊富な食材を組み合わせて、血糖値の急上昇を防ぎましょう。炭水化物を重ねて食べることを避ける、1日3食を規則正しく食べる、先に野菜を摂取する“ベジファースト”を意識するなど、少しの工夫が大きな差を生みます。
「糖尿病=麺類禁止」ではありません。今回ご紹介したポイントを取り入れながら、上手にそばを活用して、無理なく食事療法を続けてみてくださいね。
当院では糖尿病診療や、管理栄養士による栄養指導も行っております。興味のある方はぜひこちらからご予約ください。
参考文献・参照サイト
- 厚生労働省「e-ヘルスネット」
- 山梨県厚生連健康管理センター「食品GI値分類表」
- 文部科学省「食品成分データベース」「日本食品標準成分表増補2023年」
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」「食品交換表」
- 日本調理科学会誌 – J-STAGE
最後に糖尿病の患者さんに嬉しい、低糖質でヘルシーな蕎麦料理のレシピをいくつかご提案します。
これらのレシピは、血糖値の急上昇を防ぐ工夫を取り入れ、食物繊維やタンパク質をしっかり摂取できるように考えています。
- 山菜とろろそば
ポイント:
- とろろ(長芋)と山菜を使い、食物繊維を強化
- 十割そばを使用して低GIに
材料(1人分)
- 十割そば(乾麺)……60g
- 山菜ミックス……50g
- 長芋(すりおろし)……50g
- 卵黄……1個
- 刻みのり……適量
- だし醤油……小さじ1
- 水……50ml
- わさび……お好みで
作り方
- 十割そばを表示時間通りに茹で、冷水でしめる。
- 山菜ミックスは軽く水洗いし、水気を切る。
- そばを器に盛り、山菜、長芋、卵黄をのせる。
- だし醤油と水を混ぜたつゆをかけ、刻みのりをトッピング。
- お好みでわさびを添えて完成!
- 鶏むね肉の温かいそば
ポイント:
- 低脂質な鶏むね肉でタンパク質をプラス
- きのこをたっぷり入れてGI値を下げる
材料(1人分)
- 十割そば(乾麺)……60g
- 鶏むね肉……80g
- しめじ……50g
- えのき……50g
- ねぎ(小口切り)……適量
- だし汁……300ml
- 醤油……小さじ2
- みりん(糖質オフのもの)……小さじ1
- 生姜(すりおろし)……小さじ1
作り方
- 鶏むね肉は薄くスライスし、だし汁(300ml)で軽く煮る。
- きのこ類を加え、3分ほど煮る。
- そばを表示時間通りに茹で、湯切りして器に盛る。
- 鶏むね肉ときのこ入りの温かいだし汁をかけ、ねぎと生姜をトッピング。
- お好みで七味唐辛子を加えて完成!
- 豆腐となめこの冷やしそば
ポイント:
- 豆腐を加えて満腹感アップ&タンパク質補給
- なめこのとろみで糖質の吸収を穏やかに
材料(1人分)
- 十割そば(乾麺)……60g
- 絹ごし豆腐……100g(1/2丁)
- なめこ……50g
- 青ねぎ(小口切り)……適量
- かつお節……適量
- だし醤油……小さじ2
- 水……50ml
作り方
- なめこはさっと茹で、水気を切る。
- 豆腐は食べやすい大きさに切る(またはスプーンで崩す)。
- そばを茹で、冷水でしめる。
- 器にそばを盛り、なめこ、豆腐、ねぎ、かつお節をトッピング。
- だし醤油と水を混ぜたつゆをかけて完成!
- アボカドと納豆のヘルシーそば
ポイント:
- 納豆とアボカドで血糖値の上昇を抑える
- 健康的な脂質で糖質の吸収をゆるやかに
材料(1人分)
- 十割そば(乾麺)……60g
- アボカド……1/2個(50g)
- 納豆……1パック
- きざみ海苔……適量
- 大葉(千切り)……適量
- 醤油……小さじ1
- わさび……お好みで
作り方
- そばを茹で、冷水でしめる。
- アボカドは角切りにし、納豆と混ぜる。
- そばの上にアボカド納豆をのせ、きざみ海苔と大葉をトッピング。
- 醤油をかけ、お好みでわさびを添えて完成!
- ほうれん草とツナの温かいそば
ポイント:
- ほうれん草の鉄分&ビタミンで栄養強化
- ノンオイルツナでタンパク質アップ
材料(1人分)
- 十割そば(乾麺)……60g
- ほうれん草……50g
- ツナ(ノンオイル)……1/2缶(40g)
- だし汁……300ml
- 醤油……小さじ2
- みりん(糖質オフのもの)……小さじ1
- ごま……適量
作り方
- そばを茹でる。
- ほうれん草はさっと茹でて水気を切る。
- だし汁を温め、醤油・みりんを加える。
- そばを器に盛り、ほうれん草とツナをのせ、温かいだしをかける。
- 仕上げにごまを振って完成!
まとめ
糖尿病の方におすすめのそばレシピを5つご紹介しました。
- 食物繊維たっぷり(山菜・なめこ・とろろ・きのこ)
- タンパク質を補強(鶏むね肉・豆腐・納豆・ツナ)
- 低GI食品を活用(アボカド・大葉・海藻)
ポイントは、そば単品ではなく食物繊維・タンパク質・良質な脂質を組み合わせること!
食後の血糖値の急上昇を防ぐため、ぜひこれらのレシピを活用してくださいね。
今回はこの辺で
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉。