札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。厳しい寒さが続く北海道ですが、暦の上では春が近づき、外来でも少しずつ花粉症の気配を感じる季節になりました。先日、ある患者さんから診察室でこのような相談を受けました。「先生、毎年鼻水で夜眠れなくて…テレビでヨーグルトが花粉症に効くと聞いたのですが、本当に食べるだけで変わるのでしょうか」、と。実はこのように、食事や体質改善でアレルギーをなんとかしたいと考える方は非常に多いのです。結論から申し上げますと、乳酸菌の摂取は医学的にも花粉症対策として有効であるというデータが数多く存在します。今回は、乳酸菌がなぜ鼻や目の症状に効くのか、そしていつから始めれば良いのかについて、信頼できる医学論文に基づいて、内科医の目線から詳しく解説していきます。

目次
医学的に証明された乳酸菌による花粉症症状の緩和効果
民間療法として語られることの多いヨーグルトや乳酸菌の摂取ですが、近年の研究によってその効果は科学的に裏付けられつつあります。2022年に発表された大規模なメタ分析という信頼性の高い研究手法によると、乳酸菌やビフィズス菌といったプロバイオティクスを継続的に摂取することは、偽薬を飲んだグループと比較して、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった不快な鼻症状を有意に改善させることが明らかになりました。さらに、この研究では症状の改善だけでなく、花粉症によって低下しがちな生活の質(QOL)も向上することが示されています。つまり、乳酸菌はお腹の調子を整えるだけでなく、皆様が毎年悩まされている辛いアレルギー症状そのものを和らげる力を持っているのです。

免疫の暴走を抑える鍵は腸内細菌のバランスにあります
なぜ腸に届く乳酸菌が、離れた場所にある鼻や目の症状に効くのか不思議に思う方もいらっしゃるでしょう。その答えは、腸が人体最大の免疫器官であるという事実に隠されています。花粉症の患者さんの体内では、Th2細胞と呼ばれるアレルギー反応を促進する免疫細胞が過剰に働き、免疫のバランスが崩れている状態にあります。2020年のレビュー論文などによると、特定の乳酸菌を摂取することで、免疫の司令塔とも言える制御性T細胞が活性化され、暴走した免疫システムをなだめる働きがあることが分かってきました。腸内環境を整えることは、全身の乱れた免疫バランスを正常な状態へと引き戻し、結果としてアレルギー反応を起きにくくする体質作りにつながるのです。
花粉シーズンが始まる1ヶ月前からの摂取が勝負を分ける
乳酸菌の効果を最大限に引き出すためには、摂取を始めるタイミングが非常に重要です。日本で行われたビフィズス菌BB536を用いた有名な臨床試験では、スギ花粉が飛散する約1ヶ月前から乳酸菌の摂取を開始したグループにおいて、目の痒みや鼻の症状が明らかに抑制されたという結果が出ています。花粉が飛び始めて症状が出てから慌てて食べ始めるのではなく、本格的な飛散シーズンの前から腸内環境を整えておく、いわば「先手必勝」の構えが大切です。北海道であればシラカバ花粉などが飛ぶ前の時期、今のうちからヨーグルトやサプリメントを毎日の習慣に取り入れることを強くお勧めします。
薬物療法と食事療法の併用で春を快適に過ごすために
乳酸菌は薬のような即効性があるわけではありませんが、体質を根本からサポートしてくれる心強い味方です。抗ヒスタミン薬などの通常の薬物療法に加えて、乳酸菌による腸活を取り入れることで、薬の量を減らしたり、より快適にシーズンを乗り切ったりすることが期待できます。大切なのは毎日継続することですので、朝食のヨーグルトや手軽なサプリメントなど、ご自身のライフスタイルに合わせて無理なく続けられる方法を選んでみてください。今年の春は、腸の中からアレルギーに負けない体を作っていきましょう。
患者様からよくあるQ&A
Q. どの種類のヨーグルトを食べれば良いのでしょうか。
A. 基本的にはどの乳酸菌でも整腸作用は期待できますが、パッケージに「花粉症」「アレルギー」「免疫」といったキーワードに関連する研究成果が記載されている特定の菌株(ビフィズス菌BB536やL-92乳酸菌など)を選ぶと、よりデータに基づいた効果が期待できるでしょう。しかし最も重要なのは種類よりも、毎日続けて摂取することです。
Q. ヨーグルトを食べていれば、薬は飲まなくて平気ですか。
A. 残念ながら、乳酸菌は薬の代わりになるものではありません。あくまで免疫バランスを整えて症状を「緩和」するものです。症状が強い場合は無理をせず、医師が処方する抗ヒスタミン薬や点鼻薬を適切に使用してください。乳酸菌は治療のベースアップとして併用することをお勧めします。
Q. 今から食べ始めても遅くないですか。
A. 理想は1ヶ月前からですが、シーズンに入ってからでも遅くはありません。継続することで免疫機能は徐々に整っていきますし、来年の対策にもつながります。また、腸内環境が良くなることは全身の健康にとってもプラスですので、今日から始めてみてください。
まとめ
花粉症治療において、薬は「火消し」の役割を果たしますが、乳酸菌による腸内環境の改善は「火がつきにくい家」を作るようなものです。医学的なエビデンスに基づき、症状が出る前の今この時期から乳酸菌摂取を習慣化することで、毎年の辛い症状を少しでも軽くすることができます。食事療法と適切な医療を組み合わせて、今年の春こそはティッシュを手放せる時間を増やしていきましょう。何か不安なことがあれば、いつでも外来でご相談ください。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック 院長 小野渉
参考文献

