札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。病院でマンジャロを処方されたけれど、自分で注射することに不安を感じている方は少なくありません。特に、お腹や太もものどこに打てばよいのか、場所によって効果に違いはあるのかといった疑問は、治療を継続する上で大きな悩みの種となります。正しい知識を持たずに自己判断で行うと、皮膚トラブルや痛みの原因になることもあるため注意が必要です。この記事では、マンジャロを安全かつ効果的に使用するための注射部位の選び方や、医学的根拠に基づいた注意点について、糖尿病内科医の視点からわかりやすく解説していきます。
目次
推奨される3つの注射部位と自己注射に最適な場所の選び方
マンジャロの皮下注射を行う場所として推奨されているのは、腹部(お腹)、大腿部(太もも)、および上腕部(二の腕)の3箇所です。これらは皮下脂肪が十分にあり、薬液を安全に体内へ届けるのに適しているためです。ただし、自分で注射を行う場合は、両手が自由に使えて視界に入りやすい腹部か大腿部の前面を選ぶのが基本となります。上腕部は手が届きにくく、適切な角度で針を刺すのが難しいため、ご家族や医療従事者に打ってもらう場合に限定して選ぶようにしましょう。無理な体勢での注射は手元がブレて痛みの原因となるため、安定した姿勢を保てる場所を選ぶことが大切です。
お腹と太ももで効果は変わる?医学的研究が示す結論
患者さんからよく頂く質問に、お腹に打つか太ももに打つかで効果が変わるのかというものがあります。実は、最新の薬物動態学的研究において、マンジャロはお腹、太もも、二の腕のどの部位に注射しても、体内への吸収効率(バイオアベイラビリティ)に統計学的な有意差はないことが報告されています。つまり、どこに打ったとしても薬の効果は変わらないため、ご自身が打ちやすい場所や痛みが少ないと感じる場所を選んで問題ありません。効果の違いを気にして無理に打ちにくい場所を選ぶ必要はなく、安心して継続しやすい部位を選択してください。

おへそ周りは避けるべき?具体的な注射位置の決め方と注意点
効果に差はないとはいえ、選んだ部位の中でピンポイントに打つ場所を決める際には細心の注意が必要です。腹部を選択する場合は、おへそから半径5cm以内のエリアは避けてください。へその周りは線維組織が密集しており硬いため、薬液が適切に広がらない可能性があります。また、大腿部に打つ場合は、太ももの前面かつ中央から外側寄りの、皮下脂肪がつまみやすい場所を選びます。膝に近すぎる場所や脚の付け根、内股は神経や血管が多く通っているため避けるのが賢明です。椅子に深く腰掛け、足をリラックスさせた状態で打つと筋肉の緊張が解け、スムーズに注射を行うことができます。
皮膚が硬くなるのを防ぐために守るべき部位ローテーション
毎週の注射において最も重要なルールの一つが、打つ場所を毎回変える部位ローテーションです。いつも同じ場所にばかり注射をしていると、皮膚の下で脂肪組織が変性し、硬くなるリポハイパートロフィー(脂肪織肥厚)という状態を引き起こすリスクがあります。皮膚が硬くなると薬の吸収が悪くなったり、針を刺す際に痛みを感じやすくなったりします。これを防ぐため、前回右のお腹に打ったら次は左のお腹、あるいは右の太ももといった具合にエリアを変えるか、同じエリア内でも前回の注射位置から指2本分(約2〜3cm)ずらして打つことを徹底してください。
痛みを最小限に抑えるための温度管理とリラックスのコツ
マンジャロは冷蔵保存が必要な薬剤ですが、冷たいまま注射すると薬液の刺激によって痛みを感じやすくなることがあります。痛みに敏感な方は、使用する15分から30分ほど前に冷蔵庫から取り出し、直射日光を避けて常温に戻してから使用することをお勧めします。また、注射の瞬間に体に力が入っていると痛みが増強されるため、深呼吸をして肩の力を抜き、リラックスした状態で打つことも有効です。アテオスという注入器は、皮膚に押し当ててボタンを押すだけで自動的に針が刺さる仕組みですので、躊躇せずに皮膚へ垂直にしっかりと当てることが、痛みを最小限に抑えるコツと言えるでしょう。
まとめ
マンジャロによる治療は、正しい知識を持って継続することで最大の効果を発揮します。注射部位による効果の差はないことが医学的に証明されていますので、神経質になりすぎず、ご自身が最もリラックスして打てる場所を選んでください。一方で、皮膚の硬結を防ぐためのローテーションは安全管理上非常に重要です。もし注射部位の赤みが引かない場合や、強い痛みが続く場合は自己判断せずに主治医に相談しましょう。正しい手技を身につけ、生活リズムに合わせて無理なく治療を続けていくことが、健康的な減量への近道となります。
当院では資格をもった管理栄養士による栄養指導や、糖尿病患者様を対象とした肥満外来をおこなっております。ご興味のある方は是非ご来院ください。
参考文献 :Population pharmacokinetics of the GIP/GLP receptor agonist tirzepatide

