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日本発の糖尿病治療薬『ツイミーグ』の実力とは?インスリン分泌と抵抗性をダブルで改善

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。みなさんはツイミーグという薬をご存知でしょうか。2021年に登場した2型糖尿病治療薬ツイミーグ(一般名:イメグリミン)は、日本で世界に先駆けて承認された新しい薬剤です。既存の薬とは異なるユニークな作用機序を持っており、糖尿病治療の新たな選択肢として大きな期待が寄せられています。特に、インスリンの分泌低下と効きの悪さという2つの原因に同時にアプローチできる点が画期的です。今回はこのツイミーグの特徴や注意点について、糖尿病内科の視点から分かりやすく解説していきます。

ミトコンドリアに作用して血糖値を下げるダブルのアプローチ

ツイミーグ最大の特徴は、細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアに直接働きかけるという新しい作用メカニズムを持っていることです。この薬剤は、膵臓のβ細胞に作用して血糖値が高い時だけインスリンの分泌を促す作用と、肝臓や筋肉に作用してインスリンの効きを良くする作用の2つを併せ持っています。

これまで糖尿病の薬は、インスリンを出しやすくするか、効きやすくするかのどちらか一方に主眼を置いたものが主流でしたが、ツイミーグはその両方をカバーできるため、幅広い病態の患者さんに効果が期待されています。

膵臓のβ細胞を保護して糖尿病の進行を食い止める可能性

2型糖尿病は進行性の病気であり、時間とともにインスリンを作る膵臓のβ細胞が疲弊し、その数が減少していくことが知られています。ツイミーグには、ミトコンドリアの機能を改善することで活性酸素の発生を抑え、大切なβ細胞が死滅するのを防ぐ保護作用があることが研究で示唆されています。単に血糖値を下げるだけでなく、膵臓そのものを守り長持ちさせる可能性があるという点は、これまでの治療薬にはなかった大きな魅力と言えるでしょう。

メトホルミンとの類似性と併用時の注意点について

ツイミーグの化学構造は、糖尿病治療の基本薬として長く使われているメトホルミン(ビグアナイド系)と非常によく似ています。そのため、肝臓で糖が作られるのを抑えるといった作用は共通していますが、ツイミーグにはメトホルミンにはないインスリン分泌促進作用があります。ただし、構造が似ていることから、この2つの薬を併用すると下痢や吐き気といった消化器症状の副作用が出やすくなることが報告されています。併用自体は禁止されていませんが、お腹の調子を見ながら慎重に投与量を調整する必要があります。

腎機能に応じた投与量の調整が不可欠な薬剤です

この薬剤を使用する上で最も注意が必要なのが腎臓の機能です。ツイミーグは体内で代謝されずに、そのまま腎臓から尿として排泄される特徴があります。そのため、腎機能が低下している患者さんでは薬の成分が体内に溜まりすぎてしまう恐れがあります。血液検査で分かるeGFRという数値を基準に、腎機能が中等度低下している場合は投与量を半分に減らす必要があり、高度に低下している場合や透析患者さんへの投与は推奨されていません。Kidney Failure Signs: How to Recognize Symptoms and Key Indicator Levels - Nephro Arabia

低血糖リスクの少なさと主な副作用について

ツイミーグは血糖値が高い時のみインスリン分泌を促すグルコース濃度依存的な作用を持つため、単独で使用している限り低血糖を起こすリスクは低いとされています。しかし、インスリン製剤やSU薬など他の血糖降下薬と併用する場合には注意が必要です。また、主な副作用として吐き気、下痢、便秘などの胃腸障害が報告されています。これらは飲み始めに現れることが多いため、体調の変化を感じた際はすぐに主治医に相談することが大切です。

新たな作用機序を持つツイミーグは、インスリン分泌の低下と抵抗性の増大という2型糖尿病の主要な病態を同時に改善できる可能性を秘めています。特に膵臓を保護する効果は、長い付き合いとなる糖尿病治療において大きな希望となります。ただし、腎機能による制限や併用薬との相性など、使用にあたっては専門的な判断が必要です。ご自身の治療にツイミーグが適しているかどうか、ぜひ一度主治医と相談してみてください。適切な使用で、より良い血糖コントロールを目指しましょう。

いかがだったでしょうか。また次のブログでお会いしましょう。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック

院長 小野渉

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