札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。健康診断で血糖値の高さを指摘されたり、将来の糖尿病リスクに不安を感じたりしている方は多いのではないでしょうか。食事制限や運動が必要だと分かっていても、長期間継続するのは決して容易ではありません。しかし、近年の医学研究によって、私たちの腸内環境が血糖値の制御に深く関わっていることが明らかになってきました。今回は、腸を整えることがなぜ血糖値対策になるのか、どのような習慣が医学的に正しいのかについて詳しく解説します。

目次
糖尿病と腸内環境には密接な関係
私たちの腸内には数百兆個もの細菌が住み着いており、それらは腸内フローラと呼ばれています。近年の研究によると、健康な人と糖尿病の患者さんとでは、この腸内フローラのバランスに明確な違いがあることが分かってきました。糖尿病の患者さんの腸内では、炎症を引き起こす悪玉菌の割合が多くなっており、これがインスリンの効きを悪くする原因の一つと考えられています。つまり、腸内環境を整えて善玉菌を優位にすることは、単なる便秘の解消にとどまらず、血糖値のコントロールを助けるための重要な治療戦略となり得るのです。
乳酸菌の継続摂取が血糖値とヘモグロビンA1cを改善
プロバイオティクスと呼ばれる乳酸菌やビフィズス菌を摂取することが、実際の検査数値にどのような影響を与えるかについて、世界中で多くの研究が行われています。複数の研究結果を統合して解析したデータによると、乳酸菌を摂取したグループは、摂取しなかったグループと比較して、空腹時の血糖値や、過去1から2ヶ月の血糖状態を示すヘモグロビンA1cの値が有意に低下したことが報告されています。これは、腸内の善玉菌が増えることで全身の慢性的な炎症が抑えられ、インスリンが効きやすい体質へと徐々に変化していくためだと推測されています。
毎日のヨーグルト習慣が将来の糖尿病リスクを減少
すでに糖尿病と診断されている方だけでなく、予備軍の方にとっても乳酸菌は強力な味方となります。アメリカのハーバード公衆衛生大学院が行った大規模な調査では、ヨーグルトを食べる習慣がある人は、そうでない人に比べて2型糖尿病の発症リスクが低いことが明らかになりました。興味深いことに、牛乳やチーズなどの他の乳製品では同様の強い効果は見られず、ヨーグルトに含まれる生きた菌や発酵によって生み出された成分こそが、代謝機能に良い影響を与えている可能性が高いと考えられています。毎日カップ1杯程度のヨーグルトを取り入れることは、未来の健康への投資と言えるでしょう。

日本人の内臓脂肪を減らすガセリ菌の働きに注目
糖尿病や高血圧の大きな原因の一つに、内臓脂肪の過剰な蓄積があります。特に日本人を対象とした研究において、ガセリ菌(Lactobacillus gasseri)と呼ばれる特定の乳酸菌を含んだ発酵乳を12週間摂取したところ、内臓脂肪の面積や体重、ウエストサイズが明らかに減少したという報告があります。内臓脂肪からは血糖値を下げるインスリンの働きを邪魔する物質が分泌されるため、乳酸菌の力で内臓脂肪を減らすことは、結果として血糖値の安定化に直結します。ダイエット目的だけでなく、血糖管理の一環として特定の機能性を持った乳酸菌を選ぶことも賢い選択です。

まとめ
今回は、乳酸菌と血糖値の意外な関係について、最新の知見を交えてお話ししました。腸内環境の改善は、薬のように即効性があるものではありませんが、毎日続けることで体質を根本から良い方向へ導く確実な方法です。食事療法や運動療法に加えて腸を育てるという新しい視点を持つことで、より無理なく健康的な数値を維持することができるようになります。まずは毎日の食事に、自分に合ったヨーグルトを一品加えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉
医師が答える!乳酸菌と血糖値Q&A
Q1. ヨーグルトはいつ食べるのが一番効果的ですか? A. 胃酸の影響が少ない食後がおすすめです。 乳酸菌の多くは酸に弱いため、空腹時の強い胃酸にさらされると、腸に届く前に死滅してしまうことがあります。食後は胃酸が薄まっているため、菌が生きて腸まで届く確率が高まります。また、食後のデザートとして食べることで満足感が増し、甘いお菓子への欲求を抑える効果も期待できます。
Q2. 市販のヨーグルトには砂糖が入っていますが大丈夫でしょうか? A. 必ず無糖(プレーン)タイプを選んでください。 健康に良いからといって、砂糖たっぷりの加糖ヨーグルトを食べてしまっては、逆に血糖値を上げてしまう原因になります。甘みが欲しい場合は、血糖値を上げにくい甘味料を少量使うか、ブルーベリーやきな粉などをトッピングして風味を加える工夫をしましょう。
Q3. サプリメントと食品、どちらで摂るのが良いですか? A. 続けやすい方で構いませんが、基本は食品からの摂取が理想的です。 ヨーグルトや納豆、漬物などの発酵食品には、菌だけでなく、タンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素も豊富に含まれています。ただし、乳製品が苦手な方や、カロリー制限が厳密に必要な方の場合は、医師と相談の上で、質の良い整腸剤やサプリメントを活用するのも一つの有効な手段です。
参考文献

