札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。国民食とも言えるカレーライスですが、糖尿病治療中の方や血糖値を気にする方にとっては、糖質の高さから敬遠されがちなメニューの一つです。確かに一般的なカレールーや大量の白米は血糖値を急上昇させる要因となりますが、実はカレーに含まれるスパイスには、驚くべき健康効果が秘められていることをご存知でしょうか。今回は、最新の研究論文と栄養学の観点から、糖尿病リスクを下げつつ美味しくカレーを楽しむための医学的アプローチについて糖尿病内科医の目線から解説します。

目次
カレーが糖尿病に良くないと言われる理由と糖質の正体
カレーライスが糖尿病によくないとされる最大の理由は、その糖質の多さにあります。市販のカレールーにはとろみをつけるための小麦粉や脂質が多く含まれており、さらにカレーは大皿で提供されることが多いため、つい白米の摂取量も増えてしまいがちです。一般的なカレーライス一食分の糖質量は100gを超えることも珍しくなく、これは角砂糖約30個分に相当します。このような高糖質・高脂質の食事は食後の血糖値を急激に上昇させるスパイクを引き起こし、インスリン分泌を担う膵臓に大きな負担をかけてしまうため、注意が必要なのです。
黄色のスパイスであるターメリックに含まれるクルクミンの効能
しかし、カレーそのものを完全に否定する必要はありません。カレーの黄色い色味のもとであるスパイス、ターメリック(ウコン)に含まれる生理活性物質クルクミンには、2型糖尿病の予防と治療において有望な効果があることが近年の研究で明らかになっています。 医学論文によると、クルクミンには強力な抗酸化作用や抗炎症作用があり、これらが体内の慢性的な炎症を抑える働きをします。糖尿病は代謝疾患の集合体であり、酸化ストレスや炎症が病態を悪化させる要因となるため、クルクミンの持つ多角的な生理作用が病状のコントロールに役立つと考えられているのです。![CUMIN [クミン]](https://d2w53g1q050m78.cloudfront.net/wwwnahrinjp/uploads/image/journal_detail/cumin.jpg)
糖尿病の発症予防とインスリン抵抗性の改善に関する研究報告
具体的にクルクミンがどのように糖尿病に作用するかについて、興味深い研究結果が報告されています。ある研究では、糖尿病予備軍の方を対象にクルクミンを摂取してもらったところ、インスリンを分泌する 細胞 の機能が改善し、インスリン抵抗性が低下したという結果が示されました。インスリン抵抗性とは、インスリンが出ているのに効きが悪くなる状態のことですが、クルクミンはこの状態を改善し、血糖値のコントロール指標である HbA1c や空腹時血糖値を低下させる可能性が示唆されています。つまり、スパイスとしてのカレーは、単なる風味付け以上の薬理的なメリットを持っていると言えるでしょう。
血糖値を上げないための賢いカレーの選び方と調理法
では、実際にどのようにカレーを食べればよいのでしょうか。鍵となるのは、小麦粉たっぷりのルウを使わないスパイスカレーを選ぶことです。スパイスカレーは小麦粉による不必要な糖質をカットできるだけでなく、ターメリックやクミン、コリアンダーといったスパイスをダイレクトに摂取できるため、代謝促進効果も期待できます。ご家庭で作る際は、市販のルウの使用量を減らしてカレー粉で風味を足したり、脂質の少ない鶏むね肉や、食物繊維が豊富なきのこ類を具材に多用したりすることで、食後の血糖値上昇を緩やかにすることが可能です。

主食の工夫と具材選びで満足度を保ちながら糖質オフ
さらに効果的なのが主食のコントロールです。白米の代わりに、細かく刻んだカリフラワー(カリフラワーライス)やしらたきを混ぜることで、見た目や満足感を損なわずに大幅な糖質カットが可能になります。 白米を玄米や雑穀米に変えるだけでも食物繊維量は増えますが、徹底して糖質を管理したい場合は、カリフラワーライスへの置き換えが非常に有効です。また、食べる順番として、まずはサラダや具材の野菜から食べ始め、炭水化物を最後に摂るベジファーストを徹底することで、カレーを楽しみながらも血糖コントロールを良好に保つことができるでしょう。
糖尿病や予備軍の方にとって食事療法は毎日の課題ですが、正しい知識を持つことで、我慢するだけでなく食事を楽しむ選択肢が広がります。今回ご紹介したように、スパイスの薬理作用を味方につけ、具材や主食を少し工夫するだけで、カレーは健康をサポートする強力なメニューに生まれ変わります。クルクミンの抗酸化作用や抗炎症作用を日々の食卓に上手く取り入れ、血糖コントロールと美味しい食事の両立を目指していきましょう。
いかがだったでしょうか。当院では専門の資格を持った管理栄養士による栄養指導をおこなっております。ご興味のある方は是非ご来院ください。

