札幌駅近く大通駅近くの小野百合内科クリニックです。この度、ウゴービに続く第二の抗肥満薬としてゼップバウンドが保険収載されました。今回はそんなゼップバウンドやSURMOUNT-J試験について糖尿病内科医の目線からひと足先に解説しようと思います。ゼップバウンドはまだ使用できる施設に限りがある薬剤ですが、今後の肥満治療を変える画期的な薬となりそうです。それではご一読ください。
ゼップバウンド®の概要
2024年12月27日、日本イーライリリー株式会社と田辺三菱製薬株式会社は、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬「ゼップバウンド®」(一般名:チルゼパチド)が肥満症治療薬として厚生労働省より製造販売承認を取得したと発表しました。この薬剤は、肥満症治療における革新的な選択肢として期待されています。
ゼップバウンド®は、GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の二つの受容体に作用する持続性受容体作動薬であり、中身は基本的にマンジャロと同様であり、週1回の皮下注射で長時間の効果を発揮します。天然GIPペプチド配列を基に設計されており、GLP-1受容体にも結合するように改変された構造を持っています。このため、患者の負担を軽減しつつ、効果的な治療を可能にします。加えて、1回使い切りのオートインジェクター型注入器「アテオス®」を採用しており、用量調整も柔軟に対応可能です。
SURMOUNT-J試験が示す有効性
肥満症治療におけるゼップバウンド®の有効性は、国内第3相臨床試験(SURMOUNT-J試験)で実証されています。この試験では、チルゼパチド投与群がプラセボ群に対して有意な体重減少効果を示しました。72週時点での平均体重減少率は、チルゼパチド10mg群で17.8%、15mg群で22.7%と、それぞれプラセボ群の1.7%を大きく上回りました。また、5%以上の体重減少を達成した参加者の割合は、プラセボ群が20.0%に対し、10mg群では94.4%、15mg群では96.1%と非常に高い成功率を示しました。さらに、耐糖能異常や脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝疾患といった肥満関連健康障害の改善も確認されました。
ゼップバウンド®の適応患者と期待される効果
ゼップバウンド®は、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、高血圧、脂質異常症又は 2型糖尿病の以下に該当する場合であり・BMIが27 kg/m2以上であり、いずれか2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する、またはBMIが35kg/m²以上の患者を対象に適応されています。この基準を満たす患者にとって、同薬剤はQOL(生活の質)の向上だけでなく、慢性疾患の予防や改善にも寄与すると期待されています。
肥満症は、日本国内で約2800万人が該当すると推計される「肥満」人口の中でも特に治療が必要な状態を指します。肥満症は、単に生活習慣の問題だけでなく、遺伝や環境、社会的要因などが複雑に絡み合う慢性疾患であり、心血管疾患や2型糖尿病、脂質異常症といった健康問題のリスクを高めます。しかし、これまで肥満症に対する治療選択肢は限られており、患者の健康と生活の質に大きな課題が残されていました。ゼップバウンド®は、これらの課題に対処するための新しい治療法として注目されています。SURMOUNT-J試験の結果は、肥満症の診断基準を満たす患者において、科学的根拠に基づいた効果的な治療が可能であることを示しました。この薬剤の登場により、肥満症治療における包括的なアプローチがさらに進化することが期待されます。
当院ではゼップバウンドは使用できませんが、糖尿病患者様向けの肥満外来や栄養指導を行っております。興味がある方はぜひご来院ください。
今回はこの辺で、また次のブログでお会いしましょう。
札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック
院長 小野渉