札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。皆さんは低血糖という言葉をご存知でしょうか。この症状は糖尿病で一部の薬を内服されている方やインスリンを使用している患者様に起こりやすいですが、それ以外の方でも起こることがあります。低血糖は急性症状だけではなく慢性的にボディブローのように体に害を与えます。今回はそんな低血糖についてや予防法について糖尿病内科医の目線からまとめてみました。このブログを読んで低血糖について詳しくなっていただければ幸いです。
低血糖とは?
低血糖とは、血糖値が正常範囲を下回る状態を指します。通常、血糖値が70mg/dL以下になると低血糖とされ、さまざまな症状が現れます。軽度の低血糖では、冷や汗、動悸、手足の震え、空腹感などの自律神経反応が見られますが、血糖値がさらに低下すると、意識障害や痙攣といった中枢神経症状が出ることがあります。
低血糖の主な症状
低血糖の症状は、個々の体質や血糖値の低下速度によって異なりますが、一般的な症状として以下のようなものが挙げられます。
- 軽度の症状: 冷や汗、動悸、空腹感、手足の震え、頭痛など
- 中等度の症状: めまい、集中力の低下、視界のぼやけ、ふらつき
- 重度の症状: 意識障害、痙攣、昏睡、異常行動
低血糖が起こりやすい状況
低血糖は糖尿病患者に頻発する症状であり、以下の状況で特にリスクが高まります。
- 食事量が少ない、食事時間が遅れた場合: 食事を摂取する時間が通常よりも遅れたり、量が不足している場合、血糖値が急激に低下することがあります。
- 運動量が多すぎる、空腹時に激しい運動を行った場合: 食事をとらずに激しい運動を行うと、血糖が消費されてしまい、低血糖が引き起こされるリスクが高まります。
- インスリン注射量が不適切であった場合: インスリンを過剰に投与すると、血糖値が急激に低下することがあります。
低血糖が起きた時の対処法
低血糖の症状を感じたら、速やかに対処することが重要です。以下の対処法を参考にしてください。
- 糖分の摂取: 症状を感じたら、すぐにブドウ糖10g、ブドウ糖を含む飲料150~200ml、または砂糖20gを摂取しましょう。これにより血糖値が上昇し、症状が改善されることが期待されます。
- 安静にする: 糖分を摂取した後は、安静にして血糖値の回復を待ちます。
- 車を運転中の場合: もし運転中に低血糖症状を感じたら、すぐに安全な場所に車を停め、上記のように糖分を摂取してください。15分以上たっても症状が改善しない場合は、再度同じものを摂取しましょう。
低血糖の備え
低血糖はいつでもどこでも起こりうるため、日常的に備えておくことが重要です。
- ブドウ糖や砂糖を手元に置く: 必要な摂取量を主治医に確認し、常に携帯するか手の届く場所に置いておきましょう。特に、α-グルコシダーゼ阻害薬を服用している場合は、砂糖ではなく必ずブドウ糖を用いる必要があります。
- 家族や周囲の人にも知らせる: 低血糖の症状や対処法を家族や周囲の人にも理解してもらうようにしましょう。特に無自覚性低血糖が疑われる場合は、周囲の協力が不可欠です。
無自覚性低血糖と自動車運転
低血糖が頻繁に起こると、軽度の低血糖では自覚症状が現れにくくなることがあります。これを無自覚性低血糖と呼びます。無自覚性低血糖の状態で車を運転することは非常に危険です。2014年6月から施行された改正道路交通法では、自動車免許の取得・更新時に無自覚性低血糖の有無が考慮されます。運転前には血糖値を測定し、低血糖のリスクを管理することが求められます。
低血糖の再発予防
低血糖を再発させないためには、血糖コントロールをしっかりと行うことが重要です。
- 血糖値の記録: 血糖値を定期的に測定し、低血糖が発生しやすい時間帯や原因を把握することで、再発を防ぐことができます。
- 治療計画の見直し: 無自覚性低血糖や夜間低血糖が頻発する場合は、主治医と相談し、治療計画を見直すことも検討しましょう。
経鼻グルカゴン製剤バクスミー
バクスミー®(グルカゴン点鼻粉末)は、低血糖時の緊急処置に用いる使い切りの点鼻薬です。グルカゴン3mgを含み、鼻腔粘膜から吸収されることで、血糖値を上昇させます。特に意識がない場合や口から糖分を摂取できない状況で有効です。2020年10月に発売され、従来の注射薬に比べて簡便に使用できます。2024年1月には学校などで教職員が緊急時に児童へ投与することが可能になり、医師法に違反しない条件が整備されました。ただし値段が高価なこと、手技が比較的難しいこと、使用期限があることなど注意が必要です。
まとめ
低血糖は、糖尿病患者にとって避けられないリスクですが、適切な知識と対策を持つことで、その影響を最小限に抑えることができます。日常生活での血糖管理を徹底し、低血糖の予防と早期対処を心掛けましょう。また、家族や周囲の人々にも低血糖の危険性と対処法を理解してもらうことで、いざという時に備えることが大切です。
今回はこの辺で
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