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【医師監修】トマトジュースで糖尿病は良くなる?その期待、少し危険です。

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。「先生、You Tubeでトマトジュースが血糖値に良いって見たから、飲むかどうか悩んでるんだけどどうですか」という質問を先日患者様からいただきました。本音を申し上げれば、トマトジュース単独でHbA1cが劇的に下がるという魔法のようなエビデンスは存在しません。厳しい話をするとトマトジュースでHbA1cが下がるなら、私は外来で全員に処方しています。 トマトジュースはあくまで正しい食事と運動の「補助」であり、選び方や量を間違えれば、逆に糖質の過剰摂取を招くリスクがあることを、まずは冷静に理解していただく必要があります。今回はトマトジュースが糖尿病に及ぼす影響を糖尿病内科医の目線から解説しようと思います。


リコピンによる血糖値改善の科学的根拠

トマトに含まれる赤い色素成分であるリコピンには、非常に強力な抗酸化作用があることが知られています。最新の研究(Inoue et al., 2023)によれば、多くの論文を統合して解析したメタアナリシスにおいて、リコピンの摂取が空腹時血糖を有意に低下させることが示されました。特に糖尿病患者を対象としたサブ解析においてその傾向が顕著であり、リコピンが膵臓のβ細胞を酸化ストレスから保護し、インスリンの働きを助ける可能性が示唆されています。ただし、これは特定の成分に注目した結果であり、ジュースを飲めば即座に数値が改善するという意味ではない点に注意が必要です。

食前摂取による血糖スパイクの抑制効果

糖尿病の治療において最も警戒すべきは、食後の急激な血糖値上昇、いわゆる血糖スパイクです。これに関して非常に興味深い日本人を対象とした研究(Saito et al., 2020)があります。食事の30分前にトマトジュースを摂取することで、食後の血糖値上昇が緩やかになることが確認されました。これはトマトに含まれる水溶性食物繊維や有機酸が、糖の吸収スピードを遅らせるためと考えられています。いわゆる「ベジファースト」を飲み物で手軽に実践できるということであり、忙しい日常の中でも取り入れやすいライフハックと言えるでしょう。

製品選びにおける絶対的な注意点

ここで非常に重要なのが、どのようなトマトジュースを選ぶかという点です。市場に出回っている製品の中には、飲みやすくするために砂糖や食塩を添加しているものも少なくありません。糖尿病患者様が選ぶべきは、必ず食塩無添加・砂糖不使用のストレート果汁100パーセントのものです。また、トマト自体にも糖質は含まれているため、健康に良いからといって1日に1リットルも飲むのは逆効果です。目安としては1日あたり200ml程度、コップ1杯分を上限にすることが、カロリー過多を防ぎつつメリットだけを得られる秘訣です。栄養士と管理栄養士の違いを簡単に解説!仕事内容やお給料についても紹介 | 武蔵野栄養専門学校

血管合併症を予防する抗炎症作用

糖尿病の恐ろしさは、高血糖が続くことで全身の血管がダメージを受け、合併症を引き起こすことにあります。トマトジュースに含まれるリコピンやビタミン類には、血管内皮の炎症を抑える働きも報告されています。血糖値を下げるという直接的な効果だけでなく、血管をしなやかに保ち、動脈硬化の進行を食い止めるという守りの効果も期待できるのです。毎日の1杯を「これさえ飲めば大丈夫」という免罪符ではなく、血管を守るための地道な補助手段として捉え直すと、より健全な食生活を維持できるでしょう。


患者様からよくあるQ&A

Q:トマトジュースを飲んでいれば、白米やパンをたくさん食べても大丈夫ですか?

A:残念ながら、それは間違いです。トマトジュースに血糖上昇を抑える補助的な効果はあっても、炭水化物の過剰摂取を帳消しにする力はありません。主食の量はこれまで通り、適切に管理する必要があります。

Q:市販の野菜生活などのミックスジュースでも代用できますか?

A:果物が多く含まれるミックスジュースは、トマトジュースに比べて糖質量が格段に多くなります。糖尿病の管理を目的とするならば、リコピン濃度が高く、余計な糖分が含まれていないトマト100%のものを選んでください。

Q:トマトジュースを飲めば、HbA1cはすぐに下がりますか?

A:トマトジュースだけでHbA1cを劇的に下げることは困難です。あくまで食事全体のバランスを整え、運動を継続する中でのサポート役と考えてください。まずは3ヶ月、無塩・無糖のものをコップ1杯取り入れ、次回の検査結果を主治医と一緒に確認しましょう。


まとめ

トマトジュースは決して万能な特効薬ではありません。HbA1cを劇的に下げる魔法ではなく、あくまで日々の食事療法を支える補助的な存在です。活用する際は、必ず食塩無添加・砂糖不使用の製品を選び、1日200ml程度に留めることが大原則です。食前30分の摂取やリコピンの性質を理解し、賢く生活に取り入れましょう。基本となる食事と運動を疎かにせず、正しく補助として付き合っていくことが、健やかな血糖管理への近道です。


引用論文一覧

Inoue et al., 2023 Lycopene intake and fasting blood glucose: Systematic review & meta-analysis (Nutrients)

Saito et al., 2020 Tomato juice preload lowers postprandial glucose


札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック 院長 小野渉

当院では糖尿病外来生活習慣病外来、糖尿病患者を対象とした肥満外来、管理栄養士による栄養指導を行っております。 札幌市、札幌駅近郊で糖尿病、生活習慣病、肥満にお悩みの方はぜひご来院ください

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