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防風通聖散のダイエット効果と副作用。痩せる人・痩せない人の違いとは

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。近年、ダイエットやメタボリックシンドローム対策として漢方薬が注目を集めていますが、その代表格とも言えるのが防風通聖散です。ドラッグストアでも手軽に購入できるため、単なる痩せ薬として安易に利用されるケースも散見されますが、医学的な視点に基づけば、その適応と効果は明確に定義されています。本記事では、防風通聖散が具体的にどのようなメカニズムで脂肪減少に寄与するのか、最新の腸内細菌研究や抗老化に関する臨床試験のデータを交えて、糖尿病内科医の目線から詳しく解説していきます。

18種の生薬が代謝と排泄を促進

防風通聖散は、マオウ(麻黄)、カンゾウ(甘草)、ダイオウ(大黄)など18種類もの生薬から構成される漢方薬であり、これらが相互に作用することで複合的な効果を発揮します。東洋医学的には、体内に溜まった熱や毒素を排出する作用があるとされ、特に腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちで太鼓腹のような体型の方に適しているとされています。薬理学的な観点からは、マオウに含まれるエフェドリンなどが交感神経を刺激して脂肪細胞の燃焼を促進し、カンゾウやダイオウなどが便通を改善して脂質の排出を助けると考えられています。単に食欲を抑えるのではなく、代謝を上げつつ排出を促すという攻めの漢方薬と言えるでしょう。

防風通聖散84錠 ー 日本生薬漢方

加齢による脂肪蓄積と代謝低下を抑制

年齢を重ねると共に痩せにくくなる現象には、基礎代謝の低下や褐色脂肪細胞の機能不全が関与していますが、最新の研究では防風通聖散がこの加齢性肥満に対抗しうることが示されています。高脂肪食を摂取させた老化マウスを用いた実験において、防風通聖散エキスを投与した群では、体重増加および内臓脂肪・皮下脂肪の蓄積が有意に抑制されました。さらに特筆すべきは、脂肪を燃焼させて熱を生み出すタンパク質であるUCP1の発現量が、褐色脂肪組織において増加していた点です。この研究では、配合生薬の中でもレンギョウ、ケイガイ、ダイオウが特に重要な役割を果たしていることが特定されており、加齢に伴って蓄積しやすい異所性脂肪の減少にも寄与することが示唆されています。How Does Metabolism Change Through the Lifespan?

痩せ菌を増やし腸内環境を改善

近年では、防風通聖散の抗肥満メカニズムとして、腸内細菌叢(腸内フローラ)への影響が注目されています。マウスを用いた研究によると、防風通聖散の投与によって腸内細菌のバランスが劇的に変化し、特に痩せ菌として知られるアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphila)が増加することが確認されました。この菌の増加に伴い、腸管のバリア機能が強化され、血液中への炎症物質(エンドトキシン)の流入が抑制されることも明らかになっています。つまり、防風通聖散は代謝を上げるだけでなく、腸内環境を整えることで慢性的な炎症を抑え、結果としてインスリン抵抗性や糖代謝を改善するという、多面的なアプローチで肥満に作用しているのです。

効果が出る体質と副作用のリスク

優れた効果を持つ防風通聖散ですが、誰にでも適しているわけではなく、漢方特有の証(体質)を見極めることが非常に重要です。この薬は実証と呼ばれる、体力があり胃腸が丈夫で、筋肉質な固太りタイプの方に向けた処方です。逆に、胃腸が弱く下痢しやすい、冷え性で体力が低下している虚証の方が服用すると、激しい下痢や腹痛、胃部不快感などの副作用が現れるリスクがあります。また、配合成分のマオウによる動悸や不眠、カンゾウの長期服用による偽アルドステロン症(血圧上昇やむくみ)にも注意が必要であり、自己判断での漫然とした服用は避けるべきです。What Causes Heart Palpitations After Eating? | MyFoodAllergyTeam

食事・運動との併用が必須条件

臨床試験において体重減少効果が認められている防風通聖散ですが、その効果を実感するまでには通常1か月から3か月程度の継続が必要です。また、これらの試験は食事療法や運動療法と併用して行われていることが多く、薬さえ飲めば好きなだけ食べても痩せるという魔法の薬ではないことを理解しなければなりません。防風通聖散はあくまで脂肪燃焼のアクセルを踏む補助的な役割であり、食事や運動というハンドル操作が適切でなければ、期待する効果は得られません。生活習慣の改善という土台があった上で、停滞期を打破したり、代謝の効率を上げたりするための強力なサポーターとして活用するのが、医学的に正しいアプローチなのです。

防風通聖散は、褐色脂肪細胞の活性化による代謝促進、便通改善による排出、そして痩せ菌を増やすことによる腸内環境の改善という3つのメカニズムで肥満症にアプローチする有効な漢方薬です。しかし、その効果を最大限に引き出し安全に使用するためには、自身の体質に合致しているかを確認し、副作用のリスクを理解した上で服用することが不可欠です。飲むだけで痩せるという安易な期待は捨て、食事や運動などの生活習慣改善と組み合わせることで、健康的かつ効果的なダイエットを実現しましょう。

当院では資格をもった管理栄養士による栄養指導や、糖尿病患者様を対象とした肥満外来をおこなっております。ご興味のある方は是非ご来院ください。

参考文献

  1. Ameliorative effect of bofutsushosan (Fangfengtongshengsan) extract on the progression of aging-induced obesity. 2024 Apr 25;78(3):576–589. 
  2. Bofutsushosan improves gut barrier function with a bloom of Akkermansia muciniphila and improves glucose metabolism in mice with diet-induced obesity

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