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糖尿病内科が教えるレモン摂取の嘘とホント。レモン水やレモンサワーはNG?

札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニックです。

先日診察室である患者様からこんな相談を受けました。「先生、糖尿病にはレモン水が良いと聞きました。暑い夏にはレモンの輪切りが乗ったかき氷を毎日でも食べたいし、喉が渇いたらビタミンたっぷりのレモン清涼飲料水や、栃木名産のレモン牛乳、夜はレモンサワーを飲むのが習慣です。これなら血糖値対策になりますよね?」という内容です。実は、この「レモンが入っていれば健康的」という思い込みこそが、血糖値を乱高下させる原因になります。市販の甘いレモン飲料やシロップ漬けのレモンには、レモンの効能を打ち消して余りあるほどの大量の砂糖が含まれており、良かれと思って続けていた習慣が、実は糖尿病を悪化させていたという失敗例は後を絶ちません。正直に言うと、レモンを増やすことよりもまず減らすべきは砂糖なのです。


レモン果汁による食後血糖値の抑制効果

最新の臨床研究において、パンなどの炭水化物を摂取する際にレモン果汁を併用すると、健常者の食後の血糖値上昇が約30%も抑えられるという興味深い結果が報告されています。これはレモンに含まれるクエン酸などの成分が、胃の内容物が十二指腸へ送り出されるスピードを遅らせる「胃排出遅延」を引き起こすためと考えられています。つまり、食事の最初にレモン水などを取り入れることで、糖質の吸収プロセスそのものを緩やかにできる可能性があるのです。ただし、これはあくまで無糖のレモン果汁を用いた実験データであり、砂糖が添加された炭酸飲料やレモンスカッシュでは、糖分の害が勝ってしまうため逆効果になることを忘れてはいけません。Strike the Spike: Controlling Blood Sugars After Eating - Taking Control Of Your Diabetes®

柑橘類フラボノイドがもたらす全身への恩恵

レモンをはじめとする柑橘類に含まれるフラボノイドには、包括的な抗酸化作用や抗炎症作用があることが多くの論文で示されています。糖尿病の本質は慢性的な血管の炎症とも言えますが、柑橘類の成分はインスリン感受性を改善し、細胞が血液中の糖を取り込みやすい状態を維持する手助けをしてくれます。これにより、長期的には動脈硬化の予防や、糖尿病合併症のリスク低減に寄与することが期待されています。日常の食生活に「食品」として賢くレモンを取り入れることは、単に数値を下げるだけでなく、血管を守り将来の合併症予防につながります。味わい・香り・ヘルシーさが凝縮したレモンパワー!(季節・暮らしの話題 2019年10月05日) - 日本気象協会 tenki.jp

細胞レベルで解明される血糖コントロールの仕組み

なぜレモンがこれほどまでに注目されるのか、その理由は細胞内での分子レベルの動きからも説明が可能です。研究によると、レモンの成分は筋肉などの細胞表面にあるGLUT4という糖を運ぶ輸送体を増加させることが示唆されています。また、脂肪代謝を調節するPPARγという受容体にも働きかけ、脂肪組織の炎症を抑える効果も報告されています。これらは医療現場で使用される一部の糖尿病治療薬と似たような経路を活性化させる可能性を示しており、自然の恵みであるレモンが、科学的にも一定の裏付けを持った食材であることを証明しています。インスリン応答性のグルコーストランスポーター GLUT4: 構造、機能など

生活習慣に取り入れる際の注意点と推奨事項

では、具体的にどのような飲み方が望ましいのでしょうか。私がお勧めするのは、生のレモンを絞った無糖の炭酸レモン水や、温かい無糖のレモンティーです。一方で、避けていただきたいのは、市販の加糖ホットレモンやレモン牛乳、そして糖質過多になりやすいレモンサワーです。これらには大量の甘味料が含まれており、レモンの恩恵をかき消してしまいます。また、夏場に食べたくなるレモンのかき氷についても、シロップには大量の砂糖が含まれています。どうしても食べたい場合は、ご自宅で無糖のレモン汁とごく少量の天然甘味料を使用して作るなど、工夫が必要です。


患者様からよくあるQ&A

Q1:市販の瓶詰めレモン果汁でも効果はありますか?

A:はい。生のレモンを絞るのがベストですが、保存料や砂糖が無添加の100%果汁であれば、同様の食後血糖抑制効果が期待できます。大さじ1杯から2杯程度を水や食事に混ぜて活用してください。

Q2:レモンサワーなら、ビールより糖質が低いから糖尿病でも大丈夫ですよね?

A:残念ながら、市販の缶入りレモンサワーの多くには糖分が含まれています。また、アルコール自体が肝臓での糖新生を阻害し、低血糖やその後のリバウンド高血糖を招くリスクがあります。飲むのであれば、焼酎を炭酸と生のレモンだけで割った生搾りサワーを少量嗜む程度に留めましょう。

Q3:胃が弱いのですが、レモン水を飲んでも大丈夫でしょうか?

A:レモンの強い酸は胃粘膜を刺激することがあります。空腹時を避け、食事と一緒に摂取するか、しっかり水で希釈して飲むようにしてください。胃痛を感じる場合は、決して無理に摂取してはいけません。


まとめ

レモンは、その優れた食後血糖抑制効果により、糖尿病ケアにおいて有用なサポーターとなります。最新の研究では、炭水化物と一緒に摂取することで健常者の血糖値上昇が約30%抑えられることが示されており、日々の食事療法に彩りを添えてくれます。しかしレモンは薬ではありません。HbA1cを下げる主役は、あくまで食事全体と運動、必要であれば薬物療法です。レモンはその補助にすぎません。甘い清涼飲料水や加工品を避け、無糖の形で賢くレモンを取り入れましょう。この夏、正しい知識で爽やかに血糖コントロールを続けていきましょう。不安な方はいつでもクリニックでご相談ください。


引用論文一覧

  1. Freitas, D., et al. Lemon juice, but not tea, reduces the glycemic response to bread in healthy volunteers: a randomized crossover trial. Eur J Nutr. 2021;60(1):113-122. (PMID: 32201919)

  2. Gandhi, G. R., et al. Citrus flavonoids as promising therapeutic agents for the management of diabetes: A review. Food Chem Toxicol. 2020;146:111777. (PMID: 32977511)

  3. Assini, J. M., et al. Citrus flavonoids and lipid metabolism. Current Opinion in Lipidology. 2021. (PMID: 34361563)


札幌駅近く、大通駅近くの小野百合内科クリニック 院長 小野渉

当院では糖尿病外来生活習慣病外来、糖尿病患者を対象とした肥満外来、管理栄養士による栄養指導を行っております。 札幌市、札幌駅近郊で糖尿病、生活習慣病、肥満にお悩みの方はぜひご来院ください

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